プロローグ
こんにちは、此花咲耶です。新連載「最強公爵令嬢」に興味を持ってくださり、ありがとうございます。二日に一度投稿していくので、よろしくお願いいたします。
「シエル嬢、俺の家には千の使用人とたくさんの金銀財宝があります!俺となら幸せな結婚生活を送ることができます!どうぞ、婚約してください!」
「お断りですわ」
「なっ」
美しい木漏れ日の差し込むガラス張りの一室。わたくし、シエル・アスターは本日3人目、人生で99人目の婚約お断りをしていた。明日も、明後日も、明明後日も、婚約希望面会の予定がずらっと並んでいる。
「お見送りして」
「かしこまりました。ご令息様、どうぞこちらへ」
執事が令息を送っていく。わたくしも部屋を出て、自室に戻った。運ばれてきたマカロンをつまむ。もともとは応接室に用意されていたものだけれど、誰も手をつけていなかった。
わたくしの名はシエル・マリーナ・アスター、10歳。バロン帝国の筆頭公爵、カーリズル公爵の長女。7歳の異母弟がいて、彼が後継。自分で言うのもなんだけれど、わたくしは超絶美少女。美しく輝き、波打つ長い銀色の髪の毛。陶磁器のような肌。極め付けは、真夏の海のような大きな青緑の瞳。幻想的で、見る者を惹きつける魅力があると思う。お父様とお母様には愛されていて、座学の成績も良い。何より、魔力が超大量にある。属性は不明。今のところどの属性の魔法も同じくらい使える。身分、財力、容姿、頭。人によって好みは違うけれども、結婚して絶対に損は無い令嬢だと思う。
この国では、令嬢は平均12歳くらいで婚約するのが当たり前。子爵位以下は、身分の釣り合う者を、と言うのがモットーで、大体が同じ爵位の者と婚約している。認められる差はせいぜい一つくらいかしら。叙爵や降格があった場合、大体婚約解消の運びとなる。伯爵以上の高位貴族は、家の関係もあるし、家数の少ないこともあって、どんな組み合わせも認められる。
大抵が政略結婚だけれども、わたくしは恵まれていて、お父様が相手を選んで良い、と言ってくださった。貴族の令息なんぞに期待はあまりしていないから、10人くらい集まるであろう候補から適当に選ぶつもりでいた。そうして、お父様はわたくしが9歳の時、早めの年齢から、「身分を問わず」令息を募集し始めた。シエルを大切にしてくれる者でなくては、とおっしゃっていた。この国は男子継承制だが、継承するのは長男である必要は無い。「強い男」であることが求められる。婚約者候補は、10人くらいの予定だった。
ところが、約200人の令息方(その親かな?)から打診が来た。貴族令息の約三分の二。これには流石のお父様も仰天していて、なぜか「シエル・アスターへの求婚ルール」が作られた。ルールとは、まず100文字以内で自己アピールをすること。その時点でわたくしが気に入らなければ「お帰りください」。今まで99人、全員が「お帰りください」に合っている。皇子が1人、公爵令息が2人、侯爵令息が7人、伯爵令息が27人、子爵令息が30人、男爵令息が32人。
今日の三番目は、侯爵令息だった。みんな自分の家の財産に関してや、権力に関してを自己アピールに盛り込んでくる。なんのための「身分を問わず」なのか。考えたことは無いの?皆、わたくしを嫁として迎え入れ、家の爵位を継いであわよくば更に上の爵位に叙爵されようと必死なのでしょう。筆頭公爵家のわたくしが嫁げば、爵位を継ぐのに充分な後ろ盾が得られるものね。
「お嬢様、本日はもうご予定が入っていませんがどう過ごされますか?」
侍女のリシーが聞いてくる。そうね。少し外の風を吸いたいわ。
「今日は城下町に『お出かけ』するわ」
「またですか、お嬢様……」
リシーは呆れながらも少し裕福なくらいの平民の服を出した。
「わたくしもお共いたします」
「ありがとう」
わたくし達は裏口から城下町へと出たのでした。




