三十話 〜護るために〜
また、あの記憶の中にいる。
冷たくて重い水のようであり、遠くには深淵が広がっている。
まるで、私に来るなと言うように。
突然、イメージが頭の中を支配する。
目の前にはいつものあの少女が私に笑いかけている。
「お姉ちゃん!」
そんな声が聞こえてくる。
今日は、いつもとは違うみたい。
声なんて、今までーー
少女は私に絵本を読むことをねだってきた。
私はそれに応じる。
これが私なのかも、そうじゃないかもわからないけど。
絵本は、とある騎士が魔王と条約を結び、魔王に囚われた姫を返してもらう
と言うものだった。
魔族と人間は共存して生きていくと言う童話。
私は読んだことないのに、覚えている気がした。
「ねぇ、お姉ちゃん!」
私は少女の声かけに応じる。
「もし私がお姫様だったら、お姉ちゃんが騎士になって助けてくれる?」
記憶の中の私の声は聞こえない。
でも、多分同じことを言っている気がする。
"もちろん。私が助けてあげる。"
これを言ったのか言ってないのかわからない。
けれど、少女は更に笑顔になった。
その笑みを見て、私は呟く。
ノアーー
気がつくと、私は自分の部屋に居た。
いや、元から居たけど、意識が覚醒したと言った方が正しいと思う。
時計を見ると、昼の3時。
多分、18時間近く寝ていたと思う。
私は立ちあがる。
……言わないと。
もう、私は戦わないと。
そう、リオンさんに……
私は静かな廊下を歩く。
NOAはいつも活気溢れる組織のイメージだったけど、今日は違かった。
むしろ、昨日がうるさかっただけなのかな?
数十分後、私は[司令室]と書かれた部屋の前に立つ。
まだ、覚悟は決まらない。
もう戦わないと決めたのに、心の中ではなんて言おうか、失礼ではないか、そう考えていた。
私は扉の中に入る。
「……やぁ、アイリス。どうやら気持ちは変わらないみたいだね。」
リオンさんが出迎えてきて早々そう言った。
「私にもガルヴィスを失った悲しみはわかる。だから、私は君を止めないことにする。けど、これがラストチャンスだよ? 本当にやめ…」
「緊急事態! イエロートリガー隊及びレッドキャノン隊壊滅! 直ちに救援が必要だと思われます。」
「何!?」
赤い砲台?
「アイリス、すまないが自室で待っておいてくれないか? 各員、状況報告!」
「生体反応確認! パイロットは全員無事です!!」
「現在、ブルーシールド隊が好戦中……一機落とされました!」
私は話の流れについていけてない。
とりあえず、帰ることにした。
だけどーー
「現在出せるパイロットは!!」
「ダメです! 傭兵を雇うなりしないと……」
「今からか!? そんなの出来っこない!」
「くそ……このNOAも万策尽きたか? この位置、本部の場所がわかってるようにしか思えない! 戦いながらこっちに向かってきている!」
私には"何か"が引っかかった。
NOA……noa……ノア?
私は足を止める。
ノアを助けないとーー
なんでかわからない。
そう至った思考回路も、ノアが誰かも。
だけど、気づいたらリオンさんの後ろに立っていた。
「どうしたんだ? アイリス。自室に戻れと言」
「私が戦います。」
「は!?」
彼女はペンを落とした。
それもそうだろう。
だって、さっきまで……
「気は確かか!? 君はさっきまで戦いたくないと……それに少なからず、君を戦わせないことはガルヴィスの……君の父の願いでもあったんだぞ!」
彼女は私の両肩を掴みながら言う。
そうだったのか……
いや、それでも……
「それでも私は護りたいんです、ノアを。」
「ノア!?」
彼女は腕を組んで思考している。
何か、ノアについて心当たりがあるのだろうか?
「わかった。君を出撃させることにするよ。きっとテコでも動かないだろう。君は格納庫に急げ。」
そう言い終わると、彼女はマイクに向かって叫ぶ。
「アテナの整備を早く! カタパルトデッキ準備! ……ほらっ、アイリス早く。」
私は走った。
父さんが残してくれた機体の方へ。
そうだ、弱いんだったら強くなればいいんだ。
1ヶ月前と変わらない結論に辿り着く。
何故だかわからないけど、さっきまでの死への恐怖は消え去っていたーー
急な展開ですみません……
割とアドリブ気味で描いてることが多いので、今日みたいな回が多くなると思いますが、これからも読んでくださると嬉しいです。




