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二十九話 〜壊れた人形〜

※今回、主人公の精神的な負荷が強く描写されていますが、物語はここから先も続いていきます。

もう……戦いたくない……

私は何を守ってだんだっけ?

お父様?


お父様って誰?

父さんとは違うの?


私は戦う理由はもうないよね。

でもそうしたら私は何のために生きたらいいの?


ハハハハハハハハハ?


「アイリス、アイリス!」

私はハッとする。

オキアミくんが呼びかけてくれたらしい。

上半身を起こす。


「アイリス、どこか悪いところは?」

まるで顔色を伺うみたいに聞いてくる。


体調は……すこぶる悪い。

額には汗をかき、視界、呼吸は乱れ、脳が思考を拒む。

なのに、それを把握できている自分が恐ろしくもある。


「アイリス、9時ごろにファイトス様が体調を見にくるそうです。どうしましょうか? もし、誰とも会いたくないというのなら、そう伝えときますが……」

窓から差し込む銅色の光が、今が夕方であることを告げている。


「今、今じゃないとダメ! 早くしないとあの子を守れない! 今から」

「アイリス!!」

私は肩をビクッとさせる。

オキアミくんの怒号なんて、今までに聞いたことがない。


「アイリス、貴方は今、ひどい錯乱状態にあります。今はおやすみください。」

「いやだ! 今もずっと、父さんが!」

殺された瞬間が脳裏にこびりつき、私に現実を突きつけてくる。


「……わかりました。ファイトス様に通信を送っとくので、待っておいてください。」

私は再びベットに横になった。

なのに頭の中では自分の意味について考え続けている。



「アイリス! 大丈夫か!?」

リオンさんが部屋に入ってきて、ドアも閉まり切らないまま尋ねてくる。


「私はなんのためにここにいたらいいんですか?」

彼女の問いかけを無視して、逆に問いかける。

気づけば、私はベットから立ち上がっていた。


「アイリス、君は何を」

「もういやです! 人が死ぬのを見るのも、私だけ生き残るのも! 何もかも!」

私は叫んだ。


「もう戦いたくないです……でも、私はなんのために生きたらいいんですか? 

もう何にもわかんないです! もう、いっそのこと消えてしまいたい……」

「アイリス! 君は自分が何を言ってるのかわかっているのか!」

何を言ってるのか?

わからない。



「アイリス、君は本当に戦いたくないのか? それは軍を離れるのと同義だが?」

「はい……」

私は少しだけ落ち着いたけれど、それでも考えは変わらなかった。


「そうか……、わかったよ。こちらで手続きは進めておく。」

リオンさんはそう言った。

そして、重い口調で続けて言った。


「だけどいいのかい? 民間人になるということは、父親から……ガルヴィスから貰ったものを全て捨てるということだけど? そこの、オキアミくんも含めて。」

私は答えられない。

まだ、そこは迷っていた。

戦いたくない……けど、父さんの遺してくれたものは失いたくなかった……


「……わかった。手続きは進めるだけ進めておくけど、ハンコは押さない。君に本当に辞めたいという決意ができるまではね。」

そう言うと、彼女は立ち上がってドアノブに手をかける。


「できれば、辞めてほしくはないけどね。私的には。」

そう言ってすぐ、ドアは閉められた。


再び、私はベットに横になった。

私にはわからなかった。

何を"守ればいいのか"……

今回は、戦争の中で狂ってしまった一人の女の子を描きました。

しかし、PTSDや実際の戦場で苦しんでいる方々を軽んじているつもりはありません。

戦場で戦っている方々の苦しみは私には想像もしきれないほど深いものだということは理解しているつもりです。


不快感を感じた方がいればお詫びします。

ここまで読んでくださりありがとうございました。

これからも読んでくださると幸いです。

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