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二十五話 〜失ったもの〜

目の前には(うぐいす)の、さっきまで話していた者の亡骸が横たわっている。

私はそれを見ることしかできない。


私は死というものを初めて理解した。

今までも理解しているつもりだった。

守れなくて悔しくて、それでも戦ってきた。

それなのに、目の前にいたものは自ら命を絶った。

それがどうしても理解できなかった。


「アイリス、アイリス! 立て!」

父さんの言葉にハッとする。

「このままだと艦が堕とされる!お前も戦うんだ!」


あぁ、そうだったっけ。

鶯が言ってたことを思い出す。

敵のボスが来るとかだったはず。


私は立ち上がる。

視界が眩む。

目の前が残像のように映る。

父さんに支えられる。


「アイリス、大丈夫か?」

「うん……私は、大丈夫……」

銃撃音はまだこだましている。


そこで気がつく。

「私の機体……もう修理できないんでしょ? どうやって戦うの?」

父さんは私の方を睨みつけている。

いや、私を通り越して、私には見えない何かを睨みつけているみたいだった。


「ついてこい。」

そう短く言われる。

そして父さんは走り出した。


私はなんとかついてこうとする。

足元がフラフラするし、艦も物理的に揺れている。

それにオキアミくんを抱えているせいで早く走れない。

まだ、銃撃音は私を蝕んでいる。


「ついたぞ……」

父さんは息切れしながら言った。

目の前に繰り広げられている景色はいつもと変わらない格納庫。

ただ、機体はどこにもない。


「何もないけど、どう戦うの?」

その問いに、父さんは答える。


「この奥に行くぞ。」

父さんが指差したのは立ち入り禁止と書かれたドア。


「行くって……待ってよ父さん!」

私が何かを聞く前に父さんは行ってしまった。


奥に入っていく。

ドアの周りは埃に塗れていて、多少咳こむ。


「これが、お前の新型だ。」

目の前にあるそれは、緑色の二つの目、白い装甲、黒いフレームの人型。

その傍には


「本来、お前がネームドを名乗れるぐらいになったら渡す予定だった機体だ。名前は……」

父さんは、悩んでいる様子だ。

こんな非常自体なのになんで?

その顔には皺がよっている。


「……“アテナ“。お前を守ってくれる守護者だ。」

父さんは、そういうと何処かへ向かおうとする。


「どこに……!」

「機体のエンジンを起動させる!お前は早くコックピットに乗れ!」

整備士さんにやってもらう方がいいのではないかと思ったけど、口にしなかった。

そんな場合じゃない。


「データベース接続完了。“アテナ“、形式番号なし。開発経緯不明、少なくとも70年は昔の規格で開発されたものを現在の規格に合わせている様子。スペックを表示させます。」

モニターに映るそれを見て驚く。


「こんなのネームド級じゃない!?」

人類側にもネームドはいる。

その人達は基本傭兵が多いのだが、NOAーCODEなどの組織が専用機を提供する場合がある。

むしろ、専用で作らないと機体が追いつかないぐらいらしい。

そんな人が乗る機体がなんでこの艦に!?


ん? よく見たらこの機体ロックがかかっている。

「オキアミくん、このロック解除できる?」

「すみませんがその権限が私にありません。いえ、機体があなたにしか権限を与えていないのです。」

私にだけ?


私はモニターに向き合う。

パスワードを入力してください書かれた四角枠が私を急かす。


ある言葉を思い出す。

ついこの間聞いたあの言葉ーー


「"Aigis -Nymphaea protect me.We protect you."」

そう言い放った瞬間、それが入力されていく。


「アテナ、メインシステム起動しました。アイリス、どうしてそれがーー」

わからない……本当に何でなの? 

さっきの出来事を受け入れられていない自分と、今の状況を受け入れられない自分が滞在して、私の脳はパンクしかけている。

……とりあえず落ち着こう。


5分もせず聞こえてくる声。

「シャッターを開けた!カタパルトに迎え!」


私は機体を動かす。

歩くのも少し不安定。

だけど戦うしかない。


「アイリス、生きて帰ってこいよ。」

父さんがそう言う。


カタパルトに乗り、叫ぶ。

「アイリス・アレシス、アテナ、行きます!」

大声を出した反動で少し咽せる。

機体はカタパルトに沿って走り出したーーー


状況を把握しようとレーダーを見る。

敵影はヘリ型が10機、人型が6機。

人型のうち数機は味方の機体でも対処できていることから、ネームドではないと思う。


とりあえず、援護に向かう。

人型2機が固まっているところにいつもの狐火を撃つ。

いつもと安定性が違う。

弾丸のブレが抑えられて、いつもより早く堕としていく。


次に艦に近づいてくる人型に接近する。

私はその機体の右腕を切り落とし、続けて蹴りを入れる。

敵は、海中に没した。


この機体は私の思った通りに動いてくれている。

今ならどんな敵からでも味方を守れる気がした。

アテナ

ーーその機体は謎に含まれていて、当時の開発者の記録も失われている。

だけど、なぜかアイリスの脳波の波形はこの機体にぴったり。

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