二十二話 〜甲虫〜
説明回
“ライトビートル“、私のために造られたこの機体についての説明を父さんから受ける。
「ライトバグからの変更点は増加装甲と関節の強化だ。」
「増加装甲って……」
「“EST -7爆発装甲“お前もわかるだろ?」
あぁ、思い出した。
確か最初から数えて3番目の試験兵装だったっけ?
他の兵士には好評だったらしいけど、重いのが嫌だった私はそれ以降使わないことにしてたやつ。
「爆発の衝撃で実弾を相殺するんだっけ?」
「ある程度だがな。だけど今回の“鶯“戦においては有効だと判断した。」
なるほど。鶯も武装は実弾が主体。
それなら確かに使える。
「それじゃあ、関節の強化って……」
「簡単に関節自体を装甲で挟み、左右へのねじれに強くした。お前の前回の敗因は関節軸のねじれだからな。」
そう言う。
でも、OSで制御しているのだから、次起きないようにだってできるんじゃ……
「お前は知っているはずだが、操縦方式にはノーマルと脳波操縦があるだろ?」
えっ、そうだっけ?
あっ、軍学校で習ってたような……
私が使っているのは確かノーマル。
「その脳波操縦なんだが、お前の脳波は少し特別らしく、暴走してしまっているようだ。」
「どう言うこと?」
「具体的に言うならノーマルと干渉してしまっている感じらしい。本来は相互補完するはずなのにな。」
父さんの後ろで作業がまだ続けられている。
ん?なんか整備士さんがこっちを見ているような。
「要因として“ライトバグ“自体の性能がお前に追いついていない感じ……」
「はっきり言えよ艦長!」
あっ、整備士さんがキレた。
「あ、すみません。あまりにもわかりづらい説明だったもんでつい……」
整備士さんは頭を下げた。
「いいだろう。ドロス、お前の方から教えてやってくれ。そもそもとして、関節の設計はお前が担当してたしな。」
「半分は艦長だろうに……まぁいいか。」
人差し指が立てられる。
「アイリス、お前が乗っていたライトバグは元々試験用の機体! 二つの操縦には対応してないんだ。」
「だけど、お前の脳の電気信号は異様に強い。だから生命活動を図るシステムと同規格の脳波操縦に誤反応してしまっている。規格自体が古いしな。」
なるほど。父さんより遥かに具体的でわかりやすい。
「二つの電気信号が衝突して、関節に微妙な位置ずれを起こす。結果、高速で動かした時に関節が空回りして分解。」
なるほど? わかるような、わからないような。
そういえば、オイルの匂いがする。
整備士さんが近づいてきたからだろう。
「要するに、私の脳波が強すぎて、関節がショートしてるってこと?」
「うん、そうじゃないんだけど……まぁそう言うことにしよう。うん。」
苦虫を噛んだような顔で言われた……
「だから、そもそも位置ずれを起こさないように関節を押さえ込む。」
うん、わからない。
「まぁ、子供の実験で作るブレブレなモーターに外装をつけて市販レベルにする。今回はそこまで酷いわけじゃないけどそんな感じ。」
「うーん、どう言うことかはわかったけど……」
「まぁ、理屈は覚えなくてもいい。あっ、お前のせいで機体がだめになったわけじゃないぜ?」
なんか慰められてる気がする。
別に機体が落とされたことには落ち込んでないんだけどなぁ……
むしろ少し頭からすり抜けかけてたぐらいだし。
「さて、これがシミュレータに対応させるパッチだ。今度する時に使ってくれ。」
そうしてROMカードを渡される。
「さて、勝ってくれよ?後少しで本部なんだから、連れ帰らないためにもな。」
そう言って持ち場に帰って行った。
悪いけど、父さんよりしっかりしているような……
あれっ、父さんいない!?
あっ、よく見たら作業手伝ってる。
うーん、まぁ置いてくか。
私は無言で訓練室への帰路に着く。
もう昼になっているので、海面下にある廊下の窓からは弱い光が差し込まれている。
窓の外で遊泳している魚たちは、大きな魚影に立ち向かっていく。
「これだけしてもらったんだ。勝たないと。」
窓に向かってつぶやいたけど、誰も返してはくれなかった。
実は本機は次回の戦闘一回きりの登場になります。
補給パーツがもうないことから、次回の戦闘後すぐに本部に帰還するということを前提とした改修。
なので割とNOA -CODE領はもうすぐ。
本部自体はもう少しかかるけど。
ちなみに、ライトバグがまだ採用され得ている理由は、安価、まだ実戦で使えるだけの性能、汎用性という三つの利点があるから。
しかし、流石に他部隊では更新が進んでいるため、この艦の象徴的なものになっている。




