十一話 〜鶯の鳴き声〜
世界観を共有する別作品を投稿します。
SF要素は控えめですが、そちらもぜひ読んでみてみてください。
業炎は確かに爆発した。
もう少しで私、死ぬところだった。
……オキアミくんほんっとうにありがとう……
そこで少し呆然としてしまっていた。
おそらくは試作段階で、機構的に未完全だったところが衝撃で壊れたのだろう。
……だけど、業炎は私の右腕だけじゃなくてヘリ型4機と人型一機もまとめて消してくれた。
盤面としては、人型5機に対して、右腕を失った自機のみ。
「やばいな……」
圧倒的不利だ。こちらは近距離しか攻撃手段がないのに向こうは遠くからチクチク削ればいい。
さらに、こちらには守らなければならないものもある……
「アイリス。右腕がかすかに震えているようが、大丈夫ですか。」
微塵も心配してそうには聞こえない声。
……わざわざ言うってことは、これは挑発だと受け取ってもいいのだろうか?
とりあえず、私は敵機に突っ込む。もちろん敵は迎撃体制を取る。
敵は個体によって、グレネードなどの多様な弾丸を放つ。
……私は、まずこのグレネード持ちに接近し、その右腕を頭部ごとアエルカムラで切り裂いた。
火花を散らすその装甲は、赤く溶けて、垂れていく。
……あの時の独奏と比べて低火力だから、蒸発はしなかった。
動力ブロックを破壊しなかったから、敵機は爆発しない。
それに、仮に護衛対象も巻き込まれては大変だし。
レーダーを見る。左から接近する敵影。
私は、その方向にブレードを切り払う。
後ろからは何かが溶け落ちた音がした。
『四時方向から、砲撃。回避を。』
私はオキアミくんに従い、後ろ方向に機体をステップさせる。
弾丸の雨は虚無に降り注いだ。
敵機に向かい直し、その右肩から左腰にかけて切る。
「しまった、動力を……」
目の前の機体は爆発した。
コックピットには焼けこげた匂いがこもった。
それを気にする暇もなく、護衛対象に銃が向けられる。
「まずっ……」
そんなことを口走った。
私はそいつに、ブレードではなく“蹴り“を喰らわせた。
敵機は、ブレードを持っていなかったのだろう。
直近に迫るこちらに対し、反撃してこない。
そして、防御する暇もなく体制を崩す……
そいつが持つ銃身は自重でぐにゃりと曲がった。
……多分、もう攻撃できない。
残った一機に機体を急加速させた。その時、銃弾が放たれる。
私の機体の左肩のフレームが、それによって露出した。
「もう……奪わせないっ!」
無意識に、そんな声が出ていた。
そうして、最後の一振りを敵機に浴びせた。
どこからか、鶯の鳴き声がした。
♢この戦いを見ていた、“一機のAI“の記録。
私は、驚異的なものを見た。
味方六人が、あの灰色の悪魔に殺されたのです。
私は、見つからないよう遠くから偵察していました。
………(略)
おそらくーー“彼“の遭遇した個体と同一と見てよいでしょう。
私はあいつを尾行、能力を測ることにします。
結果をまとめて、そちらに送ります。
……話が変わって、過去の記録である。
鶯の鳴き声は美しい。
その鳴き声はきっと、機械人形にも響く。
その声がいつまでも残っててくれたら……
--記録No,9より




