一話 〜朝日〜
今回の作品が初投稿です。
小説を書くのも初めてなので、矛盾があったら優しく教えてくれたら助かります。
「もう……一度……」
暗い冷たい記憶の海の中、そんな声を聞き私は意識を復活させる。
頭が痛い。
むしろノイズが入っているみたいだ。
……何をしていたっけ。
鼻をつんざく火薬の匂い、目の前にはヘリの残骸、
周りを警戒するような人型の陰。
私は戦場の、それも前線にいる模様だ。
しかし記憶が曖昧だ。何かヒントはないか。
横を見てみる。一枚のメモがそこにある。
「操縦桿を握る前にはーー」
おそらく、私が過去に書いたものだろう。
メモどおりに操縦桿を握り、機体を持ち上げようとする……あれっ……
思っていた以上にうまく制御できない……
瞬間、衝撃と共に、再び地面に伏した。
青い信号弾が打ち上げられる。
私だけがもたついている中、目の前の人型たちは空に向けて反転していくーー
結局メモを見直して、無線が使えることを思い出した。
そこで私は、“迎え“が来ることを知った。
私の機体は飛行機に吊るされる形で回収されることになった。
壁越しに空を切る音と振動が伝わる。
そして、ここにいた理由を振り返る。
私はアイリス。「アイリス・アレシス」
そうだ。だんだん思い出してきた。
軍には……確か義父からの推薦で入ったのだったな。
軍人である父さんは昔、記憶をなくした私をよくしてくれた。
私を拾っただけでなく安定した職……と言えるのか? 軍人は?
ともかくも私に機会を与えてくれた父さんには感謝しかない。
まあ彼の意図はそこ以外にもあった。
100年ほど前AIの暴走によって、人口の半分以上は亡くなった。
AIにも同情できるところはある。
かつての人類はAIを戦争の道具にし、自分たちは快適に暮らしていた。
そんな人類の行いはAIたちの逆鱗に触れた。
つまり、昔の人の自業自得のせいで現状が生まれたのだと私は思う。
昔も、教本を読みながらそんなことを考えてた。
……そんな現状だから現在、人手不足になっている。
そして入隊希望者も少ない。
だから私を軍に入隊させたのだろう。
そして私は人型兵器「テレムコニア」に乗って戦っていた。
父さんには感謝しているがそこの部分だけは保護者として信じられない。
そんなことを考えながら帰還した。
帰還してすぐ父さんの姿が見えた。
「ガルヴィス・アレシス」 この戦艦レグルスの艦長である。
「アイリス・アレシス 帰還しました。」
「何故あんな危険を冒した。」
冷たい声で言うなぁ。これでも心配してくれているのだろう。
てか記憶にないのだけどあの場で私は何をしたのだろう……
「覚えていないのか。お前は自爆するとか自分で言っただろうに。そして、話も聞かずに通信を切ったから心配したんだぞ。」
そうだ。そこで思い出した。私が乗っているこの訓練用の機体……
と言うより自分の機体がまだ貰えていないだけなのだが、
その機体には接近戦に対応した兵装が装備されていなかった。
慌てた私はWAT-12 高出力な音爆弾……
本来は敵機の「聴覚」を奪うために使うそれを、5m先の敵機にぶつけた。
仕方ないだろう、機動力が高くて上空を飛ぶヘリ型がほとんどで、まさか近づいてくるなんて想定していなかったのだ。
「ごめんって、父さー」
「ここでは艦長だ、馴れ馴れしいのはやめろ」
………わざわざ心配して見にくる親バカのくせに。
父さんが帰ったあと、“左腕の骨にひび割れがあるから、自室で安静にして“
と軍医さんに診断された私は、そのままベットに横になった。
体験に関わる記憶は失われやすく、
逆に知識技能に関わる記憶は失われにくいみたいですね。
設定は順次語ります。
<テレムコニア>この世界の人型ロボットの分類名のこと。
WAT ー12< 汎用型音爆弾 >
低コストで作れる。
AIの集音機器を破壊する目的で開発。
距離が離れていたとしても機体のマイクを切って使用するという前提がある。
(アイリスも投げた後すぐに切ったようだが、
爆弾が近くで炸裂した衝撃で頭をぶつけた。)
MDF ー07 <レグルス>
「NOAーCODE」 で建造された戦艦でRed Examine所属。
主砲2門に機関砲、ミサイル、戦術ドローンを積む。
灰色の船体に赤いライオンのマーキングが特徴。
現在は空輸がメインになっているため、
本艦は戦艦中で最後に建造されたことになる。
<Red Examine《赤い試験隊》>
主人公の所属する艦隊の名前。戦艦1隻、駆逐艦2隻で構成。
実はこの世界の軍には陸海空の分別がない。




