表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
金の獅子と銀の竜  作者: じゃっすん
友との出会い
37/38

初めての友達

 レオノールはシルヴァをひと目見て好きになった。モフモフな姿もさることながら、その魂の輝きが好ましい。

 シルヴァともっと仲良くなるために、レオノールは食事に誘ってみた。シルヴァが生肉食であることを聞いたためだ。


「きょうは くろいふく する」


 血が溢れても気にならない黒い服をチョイスし、ゴスロリ風に決めてもらう。シュッとした上着にボリュームのあるスカート。カボチャパンツも今日は黒色だ。


「ああ!レオノール様、今日も何てお可愛らしい!」


「ぱぱ どこ?」


 ここでようやくレオノールは、いつもへばり付いて離れないアークバルトが居ないことには気付いた。


「アークバルト様も準備があるとかで、隣の部屋でお待ちです」


「じゅんび?」


 一体何の準備だろうと、レオノールはフワフワの絨毯を歩きながら扉の前に立つ。そうすれば心得たかのように扉が開いた。出来る従者、ジルである。

 部屋に入ったレオノールはアークバルトの姿を見た瞬間、走り出していた。


「ぱぱ みみある!」


「尻尾もあるぞ」 


 アークバルトは獣人の姿になっていた。丸い耳はロイと一緒だが、尻尾は毛先だけがフワフワな獅子の尾だ。髪の毛も鬣と合わさり、いつもよりボリュームがある。

 興奮したレオノールは、まず耳を両手でクイクイ引っ張り、次いで尻尾を掴むとフワフワな先っぽを口にパクリと咥える。鬣に顔を埋めれば至福の時間が訪れた。


「わたし いつ しっぽとみみ はえる?」


 満足したレオノールが尻尾を離してそう問えば、アークバルトは声を出して笑った。


「レオノールには無理かもしれねぇな」


 不満顔のレオノールにアークバルトは再び尻尾を握らせる。


「お前には俺の尻尾があるだろ?レオノール専用だ」


「わたしの しっぽ」


 ギュッとアークバルトの尻尾を握り、レオノールはパッと笑う。


「ほかのひと さわるの メッよ」


「当然だろ」


 その答えに、レオノールは満足して頷いた。







「その姿はどうしたのだ」 


 顔を合わせた瞬間、そう問いただしたのはロイだ。まあ、一晩で耳と尻尾が生えれば当然だろう。


「レオノールのために生やしたに決まってんだろ」


 何てことないように言っているが、嫉妬にかられたアークバルトが一晩中努力した結果である。どうにも細かい調整が難しく、最初は尻尾が生えてこなかったり、獅子頭になったりした。獅子頭は最初はありかも、と思っていたが、キスがしにくいと気付いてから却下された。


「す、すごい」


 これでセクハラ被害を免れる、とシルヴァが安堵するのも束の間、レオノールが抱っこをねだる。モフモフは常に別腹なのだ。

 抱っこされたレオノールはまず、シルヴァの匂いをクンクンと嗅ぎ、次いで首元のモフモフへ顔を埋める。蔓が素早くボタンを2つ外していく様子は、最早熟練の技のようだ。

 しばらく幸福に埋もれていたレオノールは、ふとこの前渡し忘れたものを思い出した。


「これ あげる」


「た、種?」


「そういえば、私ももらったな。鉢に植えて執務室に置いてあるが、まだ芽は出てないな」 


「うえたら メッなの。これ おまもり。ちゃんと みにつける」


 レオノールはロイに注意する。これにはレオノールの力が込められているのだ。破滅石のお守りバージョンだと言えば、その凄さが分かるだろうか。

 

「そうだったのか。誰か種を取ってきてくれ」


「はっ!」 


 すぐさま騎士が走って行き、種を持って来る。恭しく差し出された種を手に、ロイは眉間にシワを寄せた。


「大きいな」


 レオノールの拳大の大きさにロイは悩む。ポケットに入れても膨らみが分かるし、巾着に入れて首から下げるのは不格好だ。一国の王として身だしなみは大切なのである。


「ちいさく する?」


「そんな事も出来るのか?」


「できる」


 レオノールが力を込めると、種から細い蔓が出てきてロイの手首に巻き付いた。小さな葉が太陽の光に反射する様子は、まるで繊細な宝石細工のようにも見える。


「これは……凄いな」


 あっという間に腕輪になった種にロイは感嘆の声を上げる。これなら服で隠せるので、いつでも身に着けていられる。そう、国王は公式の場で半袖を着ないのだ。


「しるゔぁも かえる?」


「いいの!?」


 嬉しそうに目を輝かすシルヴァに、レオノールは同じように腕輪を作った。


「レオノール……俺にはないのか?」


 どこか暗い雰囲気のアークバルトに周りが一斉に距離を取る。明らかにヤバい気配が漂っている。


「ぱぱには わたし いる。ひつよう ない」


「そうか!そうだな!」 


 レオノールの手の上で、コロッコロに転がされているアークバルトにロイは微妙な視線を向けるが、平和なのはいい事だと思い直した。


「礼を言うぞ。大切にさせてもらう」


「ぼ、僕も!その、ありがとう」


「ふたり とくべつ。ともだち」


 レオノールはロイに種をあげてから、"特別"の意味を考えていた。家族とは違う温かな存在だ。そうして行き着いた先が"友達"と言う言葉だ。


「とも、だち……」


 ポロポロと涙を流すシルヴァに顔を近付けて、レオノールはペロペロと涙を舐め取る。


「わたしたち ともだち」


 美しい友情を育もうとしている少年たちのその裏で、般若の顔をしたアークバルトがいた。


ロイ「頼むから落ち着いてくれ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ