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金の獅子と銀の竜  作者: じゃっすん
金眼回収の旅
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最後の金眼

 城内の慌ただしさとは裏腹に、アークバルトとレオノールに与えられた離宮は静かだった。客室ではなく離宮なのは、あらかじめアークバルトが要求していたからだ。ルピナス連邦国を出発後、レオノールが体調を崩したためだ。疲れが出たのだろう。

 魔の森で発見した湖で休養したことで、調子は戻ったように見えるが、せめて琥珀宮と似た環境を求めたのだ。


「これ たべていい?」


 アークバルトの心配など知らないレオノールは、手に握った金眼を掲げて見せる。


「ああ、構わねぇ。元々こっちで処理する予定だからな」


 ロイもそのつもりで重要な証拠品でもある金眼をアークバルトに渡したのだ。まあ、いつ爆発するか分からない時限爆弾を抱えているよりはマシだろう。


「しゅみえーる どんなとこ?」 


「レオノールが前に見てぇと言ってた国際飛空艇が見れるぞ」


「ほんと?」


「ああ。それとイーストエンドに渡る飛空艇もある」


「となりの たいりく」


「よく勉強してんな」


 ヨシヨシと頭を撫でられ、レオノールも得意気に胸をそらした。


「明日は早ぇからな。もう寝ろ」


 チュチュチュっとキスをしたアークバルトは、レオノールの髪の毛をせっせっと舐める。グルーミングである。直ぐに眠くなったレオノールはそのまま夢の中へ旅立って行った。






「ここがシュミエールだ」 


 巨大飛空艇の発着場に到着したレオノールは、興奮してキョロキョロと周りを見る。アークバルトが言った通り国際飛空艇はとても大きく、全体像が見えない程だ。次いで大陸間を結ぶ飛空艇を見れば、頑丈そうな分厚い外殻に覆われ、多くの大砲が棘のように生えていた。


「後で見学させてもらうか」


「いいの?」


「もちろん構わない。許可を出しておこう」


 ロイの言葉にレオノールがパッと笑えば、周囲に胸を押さえる人々が続出する。


「可愛い」

「何だあの生き物は」

「天使だ」


 オホンっとロイが咳払いをすれば、彼らは慌てて姿勢を正した。


「大事な客人だ。皆、失礼のないようにな」 


 サッと全員が同じタイミングで敬礼するのは見事で、レオノールも真似して敬礼してみた。また何かザワッと声がしたが、魔導車に乗り込んだレオノールには聞き取れなかった。


「アクアネル公子、破滅石の場所は分かるかな?」


「わたし れおのーる。わたしも ろいのこと ろい よぶ」


「分かった。レオノール」  


 ロイは特別なので名前で呼ぶのは当然だ。返事に満足したレオノールはあっち、と指をさす。先程まで居た発着場へと。

 

「おい、急いで車を戻せ!」


 慌てたロイの声と面白そうに笑うアークバルトの声が車内に響いた。




 再び発着場へと戻り、ウロウロと施設内を周ることしばし、レオノールはむーんと首を傾げる。


「はめつせき うごいてる」


「誰かが持ってんのか?」


「直ぐに発着場を封鎖せよ!ネズミ一匹通すな!」


 ロイの命令で発着場は一気に物々しい雰囲気に変わり、何処から来たのか不思議なほどの大量の兵たちがそこら中に溢れている。


「ほぉ、流石は大国と言われるだけある。兵の層が厚い」


 レオノール以外は滅多に褒めないアークバルトが、珍しく賞賛の言葉を口にしたほど対応は迅速だった。


「封鎖、完了致しました!」


「よろしい!今から犯人を追跡する!相手は破滅石を持っている!全員油断するな!」


 破滅石という言葉に全員の顔が強張る。一夜にして国を滅ぼした石だ。それが自分たちの側にあるのだと知れば、その反応も当然だろう。


「レオノール、場所を教えてくれるか?」


「あっち」


 レオノールが指し示す先を、ロイ率いる騎士たちが奥へ奥へと進んでいく。


「ここ とおる」


「ほ、本当にそこを通るのか?」


「このむこう いる」


 そこは魔法を繋ぐコードが大量に通っており、とても大人が通れる隙間はない。悩むロイを横目に、アークバルトがレオノールに尋ねる。


「相手は人間か?」


「にんげん ちがう。もっと ちいさい」


 レオノールがグルリと周りを見ると丁度そこに小さな生き物がいた。


「あんな かんじ」


 そこに居たのは、警戒しながらこちらを窺うネコだった。


「……何故ネコが?」


「国王陛下に申し上げます!この施設ではネズミ避けにネコを多数飼っております!」


 流石は優秀な騎士。ロイの疑問にスラスラと答える……が、ロイが言いたかったのは、何故ネコが破滅石を持っているのか、である。


「おびえてる」


「ネコは元々敏感な生き物だからな。それに私は大型のネコ科の獣人だ。小さい生き物はそもそも近寄らない」 


 それを聞いたレオノールは分かった、と頷いた。


「ぱぱと ろい あっちいく」


 レオノールは反対方向を指差した。

 そう、アークバルトもネコ科の大型獣、獅子である。ダメ出しを食らった2人は「1人では危険だ」「俺もついて行く」とゴネていたが、レオノールがもう1度同じセリフを言ったら大人しくなった。

 下ろしてもらったレオノールがコードの隙間をスイスイ進んで行けば、奥に輝く目が2つ見えた。フーっと威嚇するネコに、レオノールは蔓を伸ばして花を咲かせる。鎮静効果のある花だ。ネコが落ち着いたのを見計らい、今度は睡眠効果のある花を。

 少しして眠ったネコを、レオノールは優しく蔓で抱き上げた。


「にんげんに ひどいこと される。わたしと いっしょ」


 毛足の長いフワフワの毛を撫でて、埋もれている首輪に手を伸ばす。金眼はネコの首輪に一緒に付けられていたのだ。ネコを傷付けないように外そうと思ったが、小さな手では上手く行かない。


「ぱぱに たのむ」


 レオノールはネコを蔓で抱えたままアークバルトの元へ戻ることにした。



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