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金の獅子と銀の竜  作者: じゃっすん
悪夢からの解放
12/22

暴走の結果

 建国祭の翌日、レオノールとアークバルトは揃って帝城右翼の本宮に来ていた。まあ、来ていたというか……琥珀宮をアークバルトが破壊したために復旧が終わるまで暫くお世話になる予定だ。


「じぃじ!」


 レオノールがそう呼べばギルバートは相好を崩し、チュッチュ、チュッチュとキスをする。いつもより回数が多いのは喜びの現れなのだろう。レオノールもレオノールできゃっきゃっと嬉しそうに声を上げて笑っている。無表情だった頃が嘘のようだ。

 その光景を面白くなさそうに見つめる者が1人。アークバルトである。


「もういいだろ」


 素早くレオノールを取り戻したアークバルトは、ジルから差し出された濡れたハンカチで幼児特有のふっくらとした顔を拭う。


「その扱いは酷くないか」


 まるでバイ菌のような扱いにギルバートが文句を言うが、アークバルトは聞く耳を持たず、その目は「お前はバイ菌だ」と言わんばかりの絶対零度。

 やれやれ、と肩をすくめたギルバートは食事をするために席へと着いた。


 どーん、とテーブルの上に並べられたのは肉、肉、肉。それも血が滴る生肉だ。そう、金獅子の主食は生肉オンリー。ただ絶対に必要かと言われればそうではなく嗜好品に近い。

 魔力が内包されているほど美味しく感じる彼らは高位の魔物を好んで食し、焼けば魔力が抜けるために生肉しか食べない。

 それ故に人前で食事をすることはなく、高位貴族も事情を知っているために晩餐会に招待されることはない。

 

 食べる前に金獅子へと祈りを捧げるのがデュオ・アムーレの常識だが、本神(ほんにん)である彼らがそれをする筈もなく、無言で食事が始まる。

 暫くは肉を咀嚼する音と骨を噛み砕く音がその場に響き、そこへ貴婦人でも通りかかろうものなら、その猟奇的な絵面に気を失うこと間違いなしだ。

 レオノールの前にも肉が盛られた小皿とフォークが置かれており、その一挙手一投足に二対の金眼が爛々と向けられていたのだが……レオノールはそんな2人の様子に気付くことなく根っこで肉を吸収した。


「ダメか……」


「今日こそはいけると思ったんだが」

 

 話す、笑う、とくれば次は食べるだ。

 美味しかったのか別の皿へと根っこを伸ばすレオノールの姿も可愛らしいが、口の周りをベッタリと血で汚したレオノールをペロペロするのが2人の野望なのである。まるでホラーの一幕のようだが、人間の常識を彼らに当てはめてはいけない。

 食事が終わるとギルバートがジルへと目配せし、即座にその意図を察知したジルがレオノールへ声をかける。


「レオノール様、珍しい植物の種が手に入ったのですが、ご覧になられますか?」


「みる」


 空気を読むレオノールも心得たもので素直に抱っこされて別室へと移動していった。


「あの子もやはり金獅子だな。育った環境が劣悪でも酷く聡明だ」


「レオノールがレオノールであるだけで他はどうでもいい」 


 聡明でもそうでなくとも……言葉に出さなかった思いを理解したギルバートはやれやれ、とため息をついた。


「甘やかしてばかりではダメだ。教育もきちんとしなさい。それがレオノールの為になる」


「言われなくても分かってるさ。それで何の用だ」


 昨日の今日でアークバルトとレオノールを引き離したのだ。それ相応の話に違いない。

 ギルバートは顎の下で組んだ両手に顔を乗せ、厳かに告げる。


「メルプーレが消滅した」




 話の概要はこうだ。

 昨晩、レオノールが暴走したのと時を同じくして、メルプーレに潜入していた影から連絡があった。金獅子の力が暴走しているというのだ。

 危険を感じた影は即座に離脱して無事だったものの、メルプーレは消滅。クレーターだけが残り生存者は1人もいないという。


「回収し損ねたレオノールの金眼か」


「本来の持ち主であるレオノールが暴走したのだ。金眼がそれに呼応してもおかしくはあるまい」


「それだけか?」


 別に自分たちには関係ないのではないか、という思いが有り有りとでたアークバルトの表情に、ギルバートは真面目な顔で追加情報を伝える。


「イズミカ王国とミネルバ王国も消滅した」


「はあ!?」 


 余りにも大規模な惨事に流石のアークバルトも驚きを隠せない。

 イズミカ王国とミネルバ王国は超弱小国と言っても過言ではないほど力を持たない国だ。

 片や王女を周辺国に送りつける王女外交で生き残り、片や国王自ら鍬を振るうという国家というにも烏滸がましい規模の国である。そのため影も潜入しておらず、まだ原因が確認できていないという。


「まあ、同時刻に起こっているから間違いなく金眼の暴走であろう。しかも、だ。暴走が起こっているのは西側だけだ」


 ここでウェセント大陸のことを軽く説明すると、東にガザール帝国、西にデュオ・アムーレ帝国のニ大大国が鎮座し、その間に中小国家がひしめき合っている。

 つまり西側というとデュオ・アムーレ寄りの国家の事を指す。


「つまり東側にある金眼はまだ暴走してないってことか」


 アークバルトが金眼を探し回っていた時にガザール帝国でも見つけているので、その可能性は高いと思われる。


「レオノールが成長して力を増せば東側も暴走する可能性は高い」


 その惨事を思い、2人はウンザリとした顔で見つめ合う。


「金眼のことには触れずに、金の宝石の危険性だけ発表するつもりだ。それで回収できれば良いが……無理ならそなたに回収に行ってもらう」


 研究資料によればレオノールから奪われた金眼は32個。その内回収できた金眼は23個で3つが暴走した。行方不明なのは残り6つ。


「今はダメだ」


「分かっている。レオノールが落ち着いてからだ」


「それとレオノールも連れて行くからな」


「それはダメだ!儂の癒やしが……ではなく、レオノールが狙われたらどうする気だ!」


 本音が垣間見えるギルバートを、絶対に譲る気のないアークバルトが睨みつける。


「俺が側にいるんだ。心配いらねぇよ。嫌なら父上が行ったらどうだ?当然レオノールは俺と留守番している」


「政務をサボりまくっている癖によく言えるな」


「はあ?父上も帝位を継ぐまで遊びまくっていたと聞いてるが?」


 バチバチと火花を散らす2人によって、レオノールの今後の予定が埋められていった。



猫科の金獅子はペロリスト

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