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序文
12月24日
恋人が町を行き交い、子供たちは皆サンタのクリスマスプレゼントに胸を躍らせる。街が喧騒に包まれる年に一度の聖なる日。その中でひときわ静かな境内に二人の女が向かい合っていた。金の刺繍が入った紺色の着物を身に纏った少女がもう一方の女性を見上げる。
「小夜、妾はお主を心から愛しておる。どうか妾を其方の妻にしてくれ」
雪の降りしきる夜、そう言った彼女はどこまでも真っ直ぐな目をしていた。このプロポーズに向けた覚悟を決めること、その葛藤は私の想像を絶するものだっただろう。なんせ元閻魔と人間の結婚だ。前例なんてあるわけが無い。だから私も覚悟を決めて口を開く。この2年間をそっと思い返しながら。
はじめまして、大福猫と申します。