お腹の中の夢
子どもの頃妖精さんに絵本を読んでもらった記憶があるだとか、子どもは大人に見えないものが見えるだとか、みなさん一度は聞いたことがあるかと思います。今回の作品は、そんな子どもがお母さんのお腹の中で体験した……かもしれないお話です。
ある日、子どもがこんなことを言ってきた。
「薄暗い場所にいる僕がね、紐みたいなもので首を絞められてるの。僕は紐をほどこうと頑張ったんだけど、なぜか体が動かなかったの。段々力が抜けてきて寝ちゃいそうになった時、前から女の子が来て僕を助けてくれたの」
「怖い夢を見たんだね、もう大丈夫だよ」
そう言い子どもをあやす私だったが、その心は穏やかではなかった。
私はこの子を産む前に一度流産を経験している。
その子は女の子で、本当ならこの子のお姉ちゃんになるはずだった。
そして、この子がお腹の中にいる時、へその緒が首に絡まって危険な状態に陥ったことがある。
こんな偶然があるだろうか。でも、こんな小さな子どもが作り話をするとも思えない。
そもそもこの子はお姉ちゃんの存在を知らない。
ただの偶然かもしれない。
でも、もしかすると本当に、お姉ちゃんがこの子を助けてくれたのかもしれない——。