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極・極短編集  作者: Avoid
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ソシュール

 どれも、うるさい。


 私は耳を塞いだ。


 聞こえてくる騒々しい音が、まるで、頭の中をぐちゃぐちゃにかき回していくようで、非常に気分が悪い。


 ぴこぴこ、どんどん、がやがや、ひとつふたつみっつと聞こえる度に、私の思考を分断。あっちへこっちへと、どこかへ誘拐されるのである。


 当然、抵抗できるときには抵抗をしているのだが、それでも音は、ありとあらゆる隙間から私の思考へ侵入し、これでもか、と染め上げられた色とりどりのキャンパスを真っ白にしてしまう。


 どうしたって、この世は音にまみれているのだ。


 つと聞こえてくる音ひとつ取ってみても、なにか、私の頭の中で漠然としたイメージを形成し、それまでの思考を上書きしてしまう。


 だから、誰かが云った。言葉というのは様々なものと結びついているのだ、と。


 まあ到底はた迷惑なことである。なにが悲しくて、ほんの少ししか聞こえないような音の情報を以てそれ以上の巨大な情報に襲われなければならないのか。私はちっぽけで矮小な存在なのだから、すこしでいい、分けて、見逃してほしい。


 この世は音で満ちている。


 この世はたぶん、そうした記号で満ちている。だからたぶん、そうした記号にまみれてしまった世界というのは、それ以上に巨大で莫大な、夥しいまでの情報イメージで満ちているのだ。


 ――ああ悲しい。


 こうやって、また、私は音に侵されている。

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