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極・極短編集  作者: Avoid
13/15

起承

 都内某日、私が通う大学の食堂で、


「なんか最近、人付き合いが面倒になってきたんだよね」


 と友人が云った。


 本来の彼は底抜けの明るさとでも云うべきか、少なくとも、『私はもうすぐ人里を離れて隠居します』、なんて云いだしかねないような、ある意味で仙人言葉とも云えるそれを使う人ではない筈なのだが、今日は一体全体、どうしてしまったというのだろう。


 気になって、ひとまず「ほ〜ん」とか「へ〜」とか、適当に言葉を噛み締めつつ、


「なんで?」


 なんて、けっこうストレートに聞いてみた。


 すると『待ってました』と云わんばかり、空腹の犬や狼が餌に喰らい付く時ぐらいのスピードで、


「いやなんか面倒い!」


 特に理由とかないけど、


「とにかく面倒い!」


「……はー、なるほど?」


 全く分からなかった。


 そもそも、今日だって普通に午前中の授業は受けていたのだし、いつも隣に座って授業前とか話しているけれど、なにも変わったような様子は見られなかったのだから、もはや、これこそが彼の通常運転であると認識するべきなのだろう。


 ――人間って結構、いや、かなり面倒くさい。


 べつに、明確な理由を以て『人付き合いが面倒なんだ』と云われても、それはそれで彼の状態が気になるのだが、どうにも、こうして如何にもな雰囲気を出してから冗談のような事をされては、私としてもる瀬ない気持ちに駆られるばかりで、不燃のゴミみたいな感覚に陥る。物語小説で云うところの、『起承はあるのに転結が無い』、に似た気持ち悪さだ。


「……まあ、頑張れ」


 結局、なにを相談する訳でもなく、この日は普通に残りの授業を受けて帰ることになり、次の日、また私が彼と会った時には今回の事などまるで忘れてしまったかのように振る舞っていたので、たぶん、なにも真剣に考える必要はなかったのだと思う。


 よくある話で、現実にはありふれたような締まりの悪い話なのだ。

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