6:監禁場所。
ノルベルト殿下が側付きの騎士になにやら耳打ちをしていました。辺りのざわつきが大きくなってしまい、何をお話しされていたのか聞こえませんでした。
「オルダーニ伯爵令嬢、抵抗などされませぬよう。我らについてきて下さい」
抵抗など考えもしておらず、ただただ父の立場が大変なことにならないのか、家にいる母にはどう伝わるのか。あの厳つくも優しい辺境伯様はなぜロラン様のこのような行動を許したのか。それらばかりが気になって仕方ありませんでした。
二人の近衛騎士に付き添われ歩きます。
王城のどこかに監禁されることとなり、辺りは一層騒がしくなっていました。
地下牢じゃないか? 貴族用の隔離棟だろう。いや、一応客間だろう? など色々と聞こえてきます。
会場を出る間際、後ろからロラン様の怒号が飛んできたのですが、意味が理解できませんでした。なぜ、地下牢で反省せねばならないのか。本気で私には分からなかったのです。
きっと明日には我が家と辺境伯家の醜聞が貴族街に広まっていることでしょう。お父様と少しでも話せればと思ったのですが、それは無理なようでした。
「…………こちらの方向に行くのですか? 間違っていませんか?」
「合っていますよ。殿下のご指示です」
近衛騎士に連れられて来たのは、王城でも奥の方。王族の居住区に割り振られている場所。
幼い頃にお父様と通ったので覚えています。
「ここは絶対に違います」
「ここで合っています」
「…………なぜ」
「殿下の指示です」
何度押し問答しようと、間違いないと言われます。
殿下の私室の二部屋隣が私の監禁場所だと言います。殿下の私室の隣は、殿下と未来の王太子妃が使う主寝室。更にその隣は、未来の王太子妃の私室になる予定の部屋。
なぜ、そこに私が入るように言われるのか。
「理由は殿下に尋ねられてください。私どもはこちらに丁重にお連れするよう、命じられているだけですので」
そう言われてしまうと、従うしか出来なくなります。仕方なく部屋の中に入ると、三人の侍女が深々と腰を落としていました。
そのうちの一人は見覚えがあります。幼い頃から殿下付きを務めている侍女――リタです。
「アマンダ様、大変お疲れでしょう。先ずは湯浴みを致しましょう」
「でも…………」
「ノルベルト様は遅くなられるそうです。待たずに寝てていいと伝言がございました」
「…………でも」
「アマンダ様」
リタがにっこりと微笑み「大丈夫ですよ」と言いました。母よりも年上のリタがそう言うのなら、本当に大丈夫な気がしてしまいます。
「さぁさぁ、行きましょう? 王族用のお風呂はとても広いんですよ。楽しんだもの勝ちです」
「うん…………ありがとう、リタ」
「お礼は、殿下へ取っておいて下さいませ!」
「うん。でも、ありがとう」
この短時間に様々なことが起こりすぎて、混迷をきたしていたのですが、リタのおかげで少しだけ平常心を取り戻せました。
なるようになる。
とりあえず今は、泣いて崩れてしまっているであろう化粧を落とすのが先決ですよね?
「ええ、そうですわ。ささっ、湯浴みをいたしましょう!」
「うん」