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5:証拠の提示を。

 



 ノルベルト殿下がゆっくりと力強く話し始めました。


 まず、私を捕まえろと言うが、罪状が不明瞭なこと。

 次に、どう見ても現状の罪人はロラン様であること。

 

「なぜ自身の婚約者を悪魔と呼ぶ」

「その女は、あまりに非道な行いをした! 私の愛する人に!」

「…………は?」


 殿下が恐ろしいほど低い声を出しました。


「その『愛する』とは、お前が腰を抱いている、そのご令嬢のことか?」

「ええ。彼女はずっと耐えていました。悪魔からの執拗な嫌がらせに」


 ロラン様いわく、ストロベリーブロンドの少女がロラン様に恋心を抱いているといった話を耳にした私が、少女にロラン様を奪われると危惧したことが今回の事件の始まりなのだとか。

 彼女の可憐さやひたむきさに嫉妬し、まるで物語に出てくるような虐めを繰り返していたそうです。お茶会で仲間外れにしたり、虫入りのお菓子を食べさせようとしたり、足を引っ掛けて転けさせたり。

 それでもめげない彼女に対し怒り狂った私は、もっと卑劣な手段を思いついたのだとか。

 階段の上から突き落とそうとしたり、暴漢に襲わせたり。そのせいで彼女は心身ともに病んでいき、最近までは起き上がれないほどに弱っていたのだとか。

 

「ふん? 証拠は?」

「その女を悪魔と呼ぶ所以は、驚くほどに証拠を残さないからです。金と権力に物を言わせて、非道な行いばかりしているのです」


 ――――お金と権力?


 そもそも、彼女を見たのは今日が初めてなのですが、どこのどなたなのでしょうか?

 本気で先ずそこから知りたいです。


「だが彼女は聡い。着々と証拠は集めていました」

「だから、その証拠を――――」

「ノルベルトさま、男爵家という低い身分で話しかける御無礼をお許しください」


 ストロベリーブロンドの少女が美しいカーテシーをしながら、殿下の発言を遮りました。

 王族の言葉を遮ること、それはあまりにも失礼な行い。そして親しい者、許可された者にのみ許されている行為でもあります。

 殿下と少女は、たぶん初対面です。そのような行いが許されるはずもなく、その証拠に殿下の眉間には深い皺が刻まれました。


「許可したくないが、仕方ない。まぁ、今だけは許そう」

「まぁ! うふふっ、現実でもちゃんとツンデレですわね」


 ――――現実? ちゃんと? ツンデレ?


 良く分からない言葉を使い、楽しそうに笑う少女の存在があまりにも歪で、気持ち悪ささえ感じます。

 

「証拠は、我がモゼッティ男爵家の金庫にございますわ。これは私の命と未来に関わるものなので、おいそれとは見せることは出来ないのですが、ノルベルトさまにならお見せして差し上げますわ」


 いったいどこから目線なのか、そう言ってしまいたいほどに上からの発言でした。しかも「どうぞ、私のことはエリーザとお呼びください。敬称は不要ですわ」などと、分不相応なことをのたまっていました。


「ハァ。頭が痛いな。ではその証拠を確認するまでは――――」

「彼女を地下牢に入れるのでしょう?」


 またもやストロベリーブロンドのご令嬢が、殿下の言葉を遮りました。その瞬間、殿下が鼻で笑い勝ち気なお顔になられました。


「そうだな…………うん。アマンダは王城に監禁するとしよう」


 良く分からない罪を擦り付けられたうえに、監禁までも決定してしまいました。流石に、重罪人用の地下牢には入れられないとは思うのですが、多少の不安が残ります。

 お父様は大丈夫なのでしょうか?

 きょろきょろと辺りを見回すと、後ろに下がられていた陛下の横でほのほのと微笑んでいました。

 こんな時まで能天気なことに、ちょっとだけモヤッとしたのは秘密です。

 



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