21:そもそもの問題。
断罪劇の開始を宣言しました。
兎にも角にも、先ずはロラン様をシバき倒しましょう。
「本日は、このような場に足を運んでくださり、誠にありがとうございます。元婚約者様」
「……連行してきただろ」
「さて、私がそこにいらっしゃるエリーザ様をお茶会や夜会などで虐めていたというロラン様からの訴えについてですが――――」
そもそも、私が夜会などに参加することがほぼありません。それは様々な方から証言が取れます。
私の家族では証言の信憑性がないでしょうから、大のお得意様であるカッサンドラ様や、よく夜会を開催される方に証言していただこうと思います。
「アマンダが夜会になんて来るわけないじゃない。そもそも招待状も出さないわよ。そんな時間があるのなら私の注文品を作らせるわよ、そもそも――――」
「はい、どうどうどう……」
客席で仁王立ちになったカッサンドラ様を落ち着けようと、両方の手の平を下に向け上下させていましたら、横に座っていたノルベルト様が、ブフォッと吹き出しました。唾をかけないでくださいよ?
「……馬みたいに扱うな」
小声でなんてことを言うんですか。聞こえ……てはいないようなので良かったですが。
「私も一応招待状は出すけど、基本的に断りの手紙が来るわよ?」
「我が家もだな。伯爵は夜会で納品ついでに食事して帰るだけだし」
お父様…………美味しいご飯が出るところには行かれるんですよね。というか、バレバレなんですね。まぁ、それも含めて『お父様』と認識されていそうではありますが。
「アマンダ嬢が夜会に来るときなんて、新年会かロラン殿が同伴しているときくらいだが?」
そうなんですよね。
ロラン様が参加するとご連絡があり、その同伴のために参加するくらいでしたから。
「次に、モゼッティ男爵家のご令嬢、エリーザ様のお茶会や夜会の参加ですが。皆様、何か記憶はございますか?」
「一切の見覚えがないのよねぇ。その頭なら一度見れば忘れない気もするのだけど」
カッサンドラ様が、小首を傾げながらそう仰ると、他の方々からも「全く見覚えがない」との声が上がりました。
調査書の、この一年で彼女が参加した夜会はないというものと、皆様の記憶にズレはないようでした。
「さて、そんな状況で、どう虐めろと?」
「証拠が――――」
「それが、証拠はなかったのですよねぇ」
新年の夜会の直後から影の方々が動いてくださり、男爵家を家宅捜索し、金庫の中まで調べて来たそうです。
影って、怖いですね?
「は?」
「エリーザ嬢は王都の辺境伯邸にずっといらっしゃったので。ちゃんと家令に許可を得ましたよ?」
家令からの情報もたんまりとありますが、今はまだその出番ではありません。
「証拠がない? だが……」
ロラン様が隣で拘束されているエリーザ嬢に視線を向けましたが、彼女は面倒臭そうな表情でふんぞり返って座っているだけでした。
その態度から見ても、そもそも証拠はなかったのだと思います。
「彼女は……聖女なんだ」
「「は?」」
ロラン様のボソリとした爆弾発言に、会場からどよめきが発生しました。
その気持ちはわかります。ですが、見方によってはそうとも取れるのでしょう――――。




