17:ノルベルト様の印象と抱いた想い。
ノルベルト様のことをどう思っていたのか。
幼い頃からのノルベルト様の様子をなんとなしに思い出しつつ、話しました。
「えーっと……せっかち、デリカシーがない、すぐ人を煽って遊ぶ?」
「…………っ他は?」
ちょっとイラッとした空気も漏れ出てきました。他人がいないと、感情を表に出されるので、結構わかりやすい人ではあるんですよね。
「王族としての責務を理解している人、真面目、どこかで息抜き出来ているのか心配な人」
「ふん」
「あー、あと……………………」
「あと?」
言うべきか、言わざるべきか。
迷いはするものの、こういった関係になったのであれば、言ってもいいのかもしれないですね。
まぁ、ついさっきまで忘れていましたし。
「…………初恋」
「っ!?」
「一瞬だったんですけどね?」
「なんで一瞬なんだよ」
ほとんど忘れていたのですが、お父様に連れられて初めて登城した日でした。
これから一緒に手芸を学ぶ相手だよ、とお父様が紹介してきたのは、サラサラの金髪と草原のような緑の瞳の美少年でした。
まるでお人形さんのような整った顔立ちのノルベルト様に見惚れていたのですが、『王太子殿下だよ』とのほほんと笑うお父様に殺意を覚えました。
「殺!?」
「王太子殿下ですよ? なにがどう転ぼうとも、なにも起こるわけがないから、異性なのに学友として選ばれたのでしょう?」
「…………」
「だから、一瞬です。見た目につられてひとめぼれしただけです」
「チッ。見た目かよ」
「はい」
王太子殿下らしからぬ舌打ち。
私と二人きりだからこその、素の態度ではあるのでしょうね。
相変わらずそっぽを向かれていますが、ノルベルト様のお耳がほんのり桃色に染まっていました。
「…………いまも、見た目くらいは気に入ってるのか?」
「ふふふっ」
「笑うなよ」
「申し訳ございません?」
あまりにも可愛らしい反応に笑いが漏れてしまいました。
「なぁ」
「はい?」
「ロランのことは、愛していたんだろう? 夜会で泣いたのはそういうことだよな?」
「…………っ」
まさか、いまそれを聞かれるとは思わず、喉がギュッと苦しくなりました。
「アマンダ?」
「今思うと、長年の友に裏切られた、といった感情からでした。好きかと問われれば『好き』だと答えられる程には愛情はあったかと思います」
「ん……言わせてすまない」
ノルベルト様がこちらに向き直り、柔らかく抱きしめてくださいました。ボソリと「昨日から格好悪いな」と呟きながら。
広い背中に腕を回しながら、いつの間にか体格もがっしりとされたのだなと思いました。
周りに屈強な騎士たちやロラン様がいることが多く、ノルベルト様はほっそりとしたほうだと思っていました。
「チッ…………おい、撫で回すな。誘ってるのか?」
「ほわっ! ちちちちがいます!」
無意識の内に背筋を撫で回していたようです。慌ててノルベルト様から離れました。何故かまたもや舌打ちをされたのですが、どういう意味なのでしょうか?




