13:先ずは――――。
いじけ顔のノルベルト様が更に爆弾発言をしました。
「ロランは、それを知っていたがな」
「は?」
「昨晩、『私のお古ですが、どうぞ』と言われた。殺したい」
「殺――――」
というか、お古。お古ってなんですか。いつどこで使い古されましたか。そもそもエスコートくらいでしか手を繋いだこと、ありませんでしたよね? なんですかそれ。ええ、確かに殺したいですね。
「なるほど、殺しましょう。世間体的に」
「んふっ。アマンダはやはり面白い」
よく分かりませんが、ノルベルト様が変な笑い声とともに上機嫌になりました。
私は腸が煮えくり返っているのですが?
「ん。キーキー言っている方がアマンダらしい。さ、朝食を取りに行こう」
「…………私は監禁されているのでは?」
「王城奥にな」
恐ろしく広い監禁場所ですねと言うと、ノルベルト様がくすくすと笑いながら右手を差し伸べて来られました。
「どう殺るにしても、先ずは腹拵えからだろう?」
「ええ。そうですわね」
エスコートの手に左手を重ね、ともに歩き始めました。
兎にも角にも、先ずは食事。
ノルベルト様の提案に賛成です。
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アマンダにはああ言ったが、本当はもっと酷い言葉だった――――。
アマンダを避難させたあとロランを睨みつけると、ニタリと嘲笑いながら近付いてきた。
「殿下、アマンダは私のお古ですが、どうぞお好きにお使いください。色気もなく、反応も鈍い女ですが、胸だけはありますよ。地位も低く、役に立つのは性的にだけでしょうがね。多少罪がありますが、妾妃として囲うには都合がいいのでは? 幼い頃から好きだったのでしょう?」
声を落とし、私だけに聞こえるように言ったその言葉は、まだ奥底に残っていた友に対する情を消し去った。
コイツは私の敵だ。明確に敵意を持っている者だ。
今までそれに気付けなかった自分に呆れる。何が『歴代一優秀な王太子』だ。好きな女も守れやしない、意気地も根性もない男だ。
だがここは、公衆の面前。
後悔も反省も後からいくらでもできる。いまは、まだその時ではない。
「確かに、好意を抱いている。が、それとこれとは別だろう? 彼女に罪があるのなら、それを白日の下に晒し、償わせねばなるまい? それが王族に求められる公明正大さだ。彼女は王城に監禁し、事実確認と調査を行う」
「…………」
「皆、それでいいな?」
周囲で聞き耳を立てていた者たちに聞こえるよう、声を張る。
アマンダを貶めたことを後悔させてやる。私にケンカを仕掛けたことを後悔させてやる。ピンク頭の可怪しな女共々、太陽の下を歩けなくしてやろう。
何事にも直向きに取り組み、いつでも夏の太陽のように輝く笑顔のアマンダを泣かせたことは、絶対に許さない。
アマンダが自らの手でなんとかしたいと言うのなら、隣で支え、どこまでも手助けをしよう。
アマンダが何も見たくない、静かに暮らしたいと言うのなら、陰で全てを終わらせよう。
十五年、想い続けた男の執着心を舐めるなよ?




