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collect ~大切に思うこと~  作者: タイラ・ヒラ・タイラ
相談
2/2

相談 さやか

1話完結型の短編集となります。


悲恋系の話。



キーワード


悲恋 絶望 恋愛 幼馴染み

「さやか。そろそろ行こうぜ!」


1人の男子生徒が私に声をかけた。

私は影崎さやか。高校三年の受験生よ。


「はーい」


返信を返して私はロッカーからカバンを手にして教室の入口で私を待つ彼の元へと小走りで向かう。

彼こと鷹音空。幼稚園からの付き合いで、私達は所謂幼馴染みと言うやつね。


「お待たせ」


私は空の隣に立つと見馴れた彼の顔を見つめる。先日の休日に髪を切ったばかりの彼。少しタレ目気味の優し気な雰囲気の空が私に視線を向けると首を傾げる。


「どうした?」

「ううん。何でもないよ。

じゃあ、行こっか……空」


私は慌てて首をふると空の言葉を待たずに歩き出した。


空に見とれていたなんて恥ずかし過ぎて言えないわ。彼は私の初恋の人。友達以上恋人未満のもどかしい状態の私達。

最近、一歩先に進みたいとは思うけれど……


告白して今の関係が変わってしまう事が怖いと思っている私がいた。

だが、そうのんびりと考えている状況では無くなりつつあった。下級生に空は……モテるのだ。



図書館にやって来た私達。

お互いに塾の無い日は図書館で一緒に勉強しているのよね。本当はお互いの家でふたりっきりで勉強したいけど……恥ずかしくってムリだった。

私が自分の気持ちに気付いてからは……中学後半以降は一度も無い。




翌日。放課後。

今日は空に塾があるから私1人家で勉強する予定。帰宅前に私は、


「ねえ。仁」


もう1人の幼馴染みの道黒仁に声をかけた。


「相談したい事があるのだけど……ちょっといい?」

「相談?

……いいけど……なんだ?」


首を傾げながら歩み寄る仁。


「実は……」


私は内心の焦りから空との恋愛相談を行った。

仁は私の話を真剣に聞くと、


「じゃあ、今日。クラスは違うけど塾で会えるから……それとなく聞いてみるよ」

「お願い」


仁は片手を上げ、ロッカーからカバンを持ち出して歩き出した。



その日の夜。仁から連絡があった。


「さりげなく空に聞いておいたよ」

「ありがとう仁」


仁は一端言葉を区切ると、


「詳しくは明日。

学校だと……良くないよな。うーん……かと言って……ファミレスだと周囲に誤解を生みそうだし……」


そう言って、仁は数秒程考えてから言葉を続ける。


「うちで説明するな」

「えっ……」


仁の言葉に私は戸惑う。


「家……って」


空の部屋にすら数年以上行っていないのに……男子の家に行く事に抵抗を覚える私に仁は、


「さっきも言ったけど、変なところでふたりっきりで会ってたら周りに誤解……下手したら空に誤解されるとめんどくさい事になるだろ?

実際に結構デリケートな話にもなるしさ」

「……そうだけど」


仁の話に私は抵抗感を感じつつも、空との関係を進めたいという焦りにも似た感情と彼の巧みな言葉に説得された私は、仁の家で話を聞く事にした。



心理的な抵抗感によるところからか仁と約束した時間から十五分程遅れて私は彼の家を訪れた。

私は玄関で靴を脱ぐと、スマホの着信履歴を見つめて、仁にジト目を向け文句を言う。


「遅れるって言ったでしょう!」


仁に少し遅れると伝えていたのに、スマホには五分おきに電話がかかってきていた。


「いろいろと心配だったんだよ。だからしょうがないだろ」

「むう……」


そんな事を言われてしまうと文句も言い難くなってしまうわ!


「しょうがないわね」


私は仁の部屋に案内された。

目の前にはお菓子とミルクティー。お菓子を摘まみながら話を聞く私。



ピーン。ポーン!



それは突然おこった。玄関の呼び鈴が鳴ったのだ。

誰かが仁の家を訪ねて来たようだ。


「誰だよ。今、ここには俺等しか居ないから……ちょっと行ってくる!」


そう言うと、仁は立ち上がると玄関へと足を向けるのだった。



数分後。

仁は小物入れを手にして部屋に戻って来た。


「どうしたの?」


私は小物入れと仁の顔を交互に見つめて戸惑う私。

仁はどこか呆然と……なんともいえぬ表情を浮かべていたのだ。


「ん……ああ。実はさっき来ていたのは空で俺の忘れ物を届けてくれたんだ」


小物入れを掲げて言う。


「えっ!」

「だ、大丈夫だ。ここにさやかぎ来ていたのはバレて居ないから……」


仁はそう言うが、私は血の気が引いていくのを感じていた。何故なら今日履いてきていた靴は空がプレゼントしてくれた特注品で2人で魔改造迄ほどこしてある靴なのだ。玄関に鎮座している私の靴に気付かないとは考え難いだろう。



この読みは見事に的中してしまった。

翌朝。いつも空と待ち合わせをしていた場所に彼は現れなかった。空は1人で登校していたのだ。


「く、空……」


一限目の休み時間に、隣のクラスへ足を運び、空に震える声で私は尋ねた。


「なんで今日、待っていてくれなかったの?」


私の言葉に、本当に辛い時に見せる表情を一瞬だけ見せると空は慌てて表情を殺し平坦な声で答えた。


「流石に、彼氏が居るのに……毎日、俺とふたりっきりで登校は不味いだろ」

「ち、ちがっ」

「男の部屋にふたりっきりで……何が違うんだよ!」


空が強い口調で言葉を吐き出した瞬間、ニ限目の開始を告げるチャイムが鳴る。

空のクラスは時間に厳しい数学教師の山田先生の授業であった。チャイムが鳴り止むと同時に姿を現した山田先生に、空に弁明する間も無くクラスから追い出されてしまったのだった。


空の誤解を解く前に追い出されてしまった私。

この騒動は、私達のやり取りを聞いていた空のクラスメイト達にも誤解をあたえてしまった。

私達の断片的なやり取りから空のクラスメイト達が想像したストーリーは最悪なものであった。


それは、私が二股していたというものであった。

この噂は驚く程のスピードで広まっていった。噂は私がこれまでにきずいてきたものを一瞬で崩していってしまった。



私が気付いた時には、仁が本命で空とは遊び……ヒモにしていたと……

噂の内容から私は孤立した。


孤立した私の話を聞いてくれたのは、騒動の当事者である空と仁だけだった。といっても空はこれまでの様に積極的に会話する様な関係ではなく、私が話しかければ答えてくれる……他人以上知り合い未満の様な関係になってしまった事に胸が痛む。

この状況に陥った私が仁に依存してしまうのは仕方の無いことだろう。




五年後。

仁の浮気癖には少し辟易するけれど……私達の付き合いはまだ続いていた。

彼の浮気を毎回許している私は想像以上に仁に依存してしまっているのだろう。そんな私は仁のプロポーズを嬉しさに泣きながら受け入れた。


結婚式の三日前。

仁のプロポーズと同時に私達は同棲を始めた。

書斎で仕事をしている仁に私はここ最近の日課である夜食を手に書斎に足を向ける。


「ハハハ。羨ましいだろう」


足を止める私。書斎で仁が誰かと電話しているようだ。


「あいつもバカだよな。両思いだったのに……手さえ出してなかったんだぜ……だからこんな事になるんだよ」


仁の言葉に私は嫌な予感を感じた。

本能的にこれは聞いては駄目だと思うも私の足はその場に凍り付き……

私は仁の言葉を泣きながら聞いたのだった。

〖相談 さやか〗をお読みいただきありがとうございます。


1話完結タイプの話となりますが、この話は視点を変えて後、2話程予定しております。



次の作品は1月21日頃に更新予定です。


タイトル:相談 仁


を。予定しております。


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[一言] 頭悪い女
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