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バットエンドを迎えた童話主人公たちのサバイバルゲーム  作者: 百野桃之助
1章 暗殺メイド
2/5

名もない私

少し残酷な描写がございます


 私の名前は今はない。前世で赤ずきんちゃんと言われていたものだ。

 突然だが私はあの天使のような見た目をした少女。天使少女に無理やり他人の記憶と知識を刻み込まれた。


 刻み込まれた記憶、それは天使少女の創った世界で生きていた人のものだと理解できた。それは何故だかわからないが、そうだと確信できた。どちらも自分でどちらも他人。そんな感じの感覚だった。

 


 

 名前は、エヴァ·カーマイン

 もう1人の私はアルガルド王国の直轄暗殺部隊、幽霊レイスの隊長であり、22歳という若さで部隊長の名を勝ち取った天才だった。容姿はそこそこ良い、金髪碧眼の人物

 口数は少なく余り喋ろうとしない。

 

 趣味は読書、嫌いなものは感情に身を委ねるバカ。


 

 と他の人物の記憶が入ってきた。そして今の状況も、どうやって"コレ"の汚れを落とそうかぐらいにしか思っていない。

 (さて"コレ"はさっさと道に捨てるか···)

 

 そして転生して名もない私は"コレ"を殺してしまった。"コレ"は私を殺そうとしてきた、だから殺した。そこには善も悪もなかった。転生前の赤ずきんちゃんとしての倫理観が崩壊したようなそんな瞬間だった。


 "コレ"即ち、私の父親は、私が暮らしていた家から離れたごみ捨て場に捨てた。ごみ捨て場といっても本当に捨てるだけの場所で誰かが綺麗にすることもなく、ただただゴミの山がそこにあった。

 (近くに捨てると虫がいっぱいよってくるからなぁ···)



 ******


 

 私が門に入り、次に私の前世が赤ずきんちゃんだと認識したのはついさっき。スラムにある自分の家から出てすぐのところに野犬を見つけた。野犬をボーっと見つめていると次第に自分じゃないような記憶と知識が流れてきて、気を失った。

 そして10分もすれば、流れてくる記憶と知識の吐き気が収まった。そして自分がこの世界に転生してきたことも思い出した。


 この流れてきた記憶と知識で、いつも酒に溺れて暴力を振るってくる父親は一般的ではないと認識できた。そして私の赤髪はこの世界では【悪魔憑き】としての処遇を受けることも知った。

 

 このままではいけないと考えた私はある計画を建てた、成功する確率は低い。だが、もう1人の私の建てた計画としては1番まともだった。それに成功すればかなりの情報網を手に入れられるはずだ

そしてその計画には父親はどんな形であれ、要らないのだ。

 そこからの私の行動は速かった。

 もう1人の私、エヴァの記憶による、非力な子供でも高い確率で殺せる技を実行した。


 1、

 まずは眠ったのを確認した後、暴れないよう自分の服の布切れで四肢を寝具に止める。


 2、

 大きな声を出され無いように、ゴミ山で拾った鉄屑で喉を裂く。

 

 3、

 2個目の鉄屑で心臓を貫く。


 これだけだった···案外簡単なもんだなぁ


 

 ******



 そして私は孤児院に引き取られた、

 この孤児院は少し特殊だった、身寄りの無い子供達を集め施しを与えていた。そこまでは普通の孤児院だったのだが、集められた孤児には教育が施された、座学はもちろんだが1つ普通ではあり得ないものがあった。


 それは孤児たちに暗殺術を教えるものだった。

 孤児達が教えられたのは、「殺すことはただの作業にすぎない」と言うことだった。

 洗脳のようなもので、少しずつ少しずつそれが当たり前の事だと皆が認識するようになってきた

 殺すことの特別製を与えないような洗脳を受けた孤児たちは、次第に自分の行動の選択肢に1つの行動を増やした。

 

 それは殺すこと。


 殺すことの特別製を感じなくなった孤児たちは次第に数を減らしていった。孤児院の管理者が減らしたのではない、孤児同士が殺し合いを始めたのだ。

 ─パンをとられたから殺した。

 

 ─面白いから殺した。


 そんな子供みたいな可愛い理由で人が死んでいく。

 そしてどんどん孤児たちは、自分を不快にさせた者、自分を楽しませた者。その全てを当然かのように殺していった。

 

 そして孤児たちの数はどんどん減っていき、最後には私だけが残った。

 

 

 最後の孤児を殺し終わった数日後、孤児院に豪華な馬車が来た。言われるがままに馬車まで行くと、中に乗れと言われたので乗った。

 正面の座席にはには片眼鏡を掛け、スーツを着た、白髪の老人がいた。私の赤髪に少し驚いていたようだったが、いつ攻撃を仕掛けても絶対に跳ね返される。そんな予感がした。

 

 「ほぉ、殺さないか。なかなか面白いの」


 「はい。貴方を攻撃しても意味もないし、それに貴方は今の私では殺せません」


 白髪の老人は目を細めた。おそらく私は使える人間かそうでないかを見定めているのだろう。


 「面白い、合格じゃ。儂と君の力量を鑑定眼無しにわかった。それだけでお前はまずまず使える人間じゃ。それになかなか礼儀も良いみたいじゃしの」

 

 「合格というのは今のは何かの試験だったのですか?」

 

 「そうじゃ、君にはその礼儀と観察眼から暗殺メイドになってもらおうかの」

 

 暗殺メイドそれは、表ではメイドとして貴族に尽くし。裏では、国の暗部からの依頼を受け邪魔なものを秘密裏に排除する存在。

 これは理想系だ。スラム育ちの私が、姿を偽り他の童話主人公の情報を集められる役職だ。私には記憶が

 だからこそ私は邪魔な父親を殺し、孤児院に入った。暗殺メイドのことは3人目の私の頃に、職業柄知っていた。

 この地域は、孤児院で殺気を出させない暗殺者を育てる実験を毎年行っていた。そこに私は賭けたのだ。

 

 

 

 

 これで現在のアルガルド王国近辺の情報がわかる。派手な動きをしている他の主人公ならすぐに見つかるだろう。そこで休暇をとり、直接乗り込んで秘密裏に殺せば、私は少しトゥルーエンドに近付くだろう。

 少しずつ、確実に。


 そのような思考を巡らせていると馬車が止まった。


 「さぁ、ここが君がこれから雇われる場所。レスター公爵家だ。失礼の無いよう、挨拶をするのじゃぞ」

 

 ─そして私は馬車を降りる。

 

 




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