脱獄した錬金術 前編
もう、8年も前になるだろうか...
両親が死に、俺たち兄妹が深く悲しんだのは。
家族でアメリカに行った時に死んだ...いや、殺された。
それも、人を守るべき機関である連盟に。
その日は妹の6歳の誕生日だった。
アメリカのショッピングモールで食事を終え、買い物をしている最中だった。
突然、両親が倒れた。
両親は出血をしている。
突然のことで気が動転していたのでその後のことはあまり覚えていないが、これだけは覚えている。
手にべっとりついた血の色と後ろにいた能力者連盟の男の顔が。
◇◆◇◆◇◆
拓実さんがギルドに加わってはや二日、今日もギルドの活動の一環で怪物を倒す。
今日はAランクを3対倒した。
拓実さんと俺が組んで戦い、美咲と春が組んで戦っている。
カンナは怪物の捜索を担当していて効率よく行動している。
ここ最近の行動のおかげで謎の俺たちの集団は結構名の知れた集団となった。
テレビやネットも俺たちのことで持ちっきりで正直やりすぎだ。
でも、そのおかげで逆に動きやすくもなってる。
そして、連盟より活躍することで連盟の信頼を落とすという策略も...
「五月さん、いい調子ですね。」
「そうだな。あっカンナから連絡だ。西側地区で怪物出現だって。行こう。」
こんな調子で放課後は動いている。
学業はしっかりとやっている。
学校でも俺たちの話題がかなり広まっている。
もちろん正体はバレてない。
影響力がしっかりと出始めている。
計画通りだ。
◇◆◇◆◇◆
「そろそろ俺たちのことを連盟は認識してくれたかな?」
「そうね、そろそろ認知はしてくれてるんじゃないかしら。」
今、我が家で五芒星のみんなでお茶をしながら作戦会議をしている。
まあ、まだまだ現状維持だろうが。
「そういえば、能力者刑務所から脱獄班が出たらしいよ。」
最近は五芒星の情報屋を担当してくれているカンナがそんなことを言ってきた。
能力者刑務所よは凶悪な能力犯罪者をした人を収容するための施設だ。
「どんな超能力者なの?」
確かに気になるところだ。
強さによっては五芒星の活動に影響がでる。
「実は...Sランクの...」
「「「Sランク!?」」」
俺と美咲と拓実さんが同時で驚いた。
Sランク超能力者とはそもそも通常のランクではない。
Sランク超能力者はAランク能力者の一握りのことを表している。
だから拓実さんの能力の協力があっても俺はSランクに達することはできないのだ。
Sランクはまさに規格外なんだ。
「対抗手段は...無さそうだな。」
「そうね。」
俺と美咲は考え込んだ。
でも手段は見当たらない。
もし遭遇してしまったら負けてしまう可能性が大だ。
「でも、相手がこの町で潜んでいる以上は何かしらの対処法がなきゃ。」
「活動できないですよね。」
カンナも拓実さんも考え込んでしまった。
だが驚くことに解決の糸口を見出したのはただお茶を楽しんでいただけの春だった。
「ありますよ、対策法。」
「「「「えっ」」」」
みんな春の発言に驚き隠せなかった。
なぜなら全くないと思っていた活路があると。
だが、その内容はさらに驚くべきことだった。
◇◆◇◆◇◆
活路は見つかった。
でも、ある理由からその活路は出来るだけ使いたくない。
なので魔法少女能力により慣れておく必要がある。
もしもの時に対抗できるように。
なのでいつもの朝のモーニングアップをより強化して戦う必要がある。
俺は、前まで無力だった。
周りの超能力者どもと比べて何も出来なかった。
そんな自分が嫌で、そんな自分が虚しくて、俺は武道を始めた。
決して構うことは無い。
決して追いつくことなんてできない。
それでも俺は強くなろうとした。
それが今生きている。
Aランクのこの力、この力では到底Sランクに敵うことなんてできっこない。
それでも俺の武道スキルを、技量をくわえればあれを使わずとも敵う可能性がある。
少しでも可能性があるなら練習する。
トレーニングするんだ。
時計を見るともう時間で学校に行かなければならない。
リュックサックを背負って向かうことにした。
◇◆◇◆◇◆
昼休み学校のクラス、ここでは今日も奴と俺たちの話題で持ちきりだ。
バレてないが報道はやりすぎだ。
正体不明、連盟無所属の謎の5人組が町で人々は救っていると。
普段なら報道規制を連盟がかけるような話題だ。
でも、今回はネットでも話題になりすぎて知られすぎている。
報道規制をかけた方が問題になってしまうんだろう。
「ねえ、五月。みんな私たちのこと話しているね。」
耳元で美咲が話しかけてきた。
まあ、ぶっちゃけ計画通りだ。
今、この町で連盟はある意味機能していない。
連盟の動きは基本遅い。
だから俺は連盟より5人で早く動き、早く解決する。
そうすれば連盟の信用が落ちていき、五芒星の信頼が上がる。
それが今の狙いだ。
だからす前は目立たない方がいいと思っていたが、今は目立ってくれた方がありがたい。
「美咲、俺は連盟を超える。頑張ろうぜ。」
「うん。」
だがそう誓って、学校の食堂へと向かおうとする時だった、絶対に起きて欲しくないことが起きたのは。
◇◆◇◆◇◆
席から立ち上がり食堂へと向かおうとした瞬間、廊下で爆発音が響く。
そして悲鳴が鳴り響く。
絶対当たって欲しくない嫌な予感がした。
まさか無いよな、そんなことがあるはずがない。
でも、嫌な予感が当たった。
「まさか、あいつ。」
美咲と急いで廊下に出るとそこにはある男が立っていた。
Sランク超能力者、脱獄をおこなった男。
世界一位の錬金術師、銀座創。
銀座創、能力の一種である錬金術の使い手。
錬金術は自分が生み出した金属を自由に操り形を変えて使用可能な能力。
奴はその力を利用して大量無差別殺人を起こした。
最後は能力者連盟最強の一人、剣のハルバートによって捕まった。
だが奴は脱獄をした、それは奴の能力が故だ。
普通、錬金術というのは一人一種しか通常力を使えない。
でも、奴は全種操れる。
だから世界最強の錬金術師なのだ奴は。
(奴に...勝てるのかあれを使わずに。それにここでは力を使えない。)
ここで変身するには人が多すぎる。
それも俺が無能力者であることを知っている奴らばっかりだ。
でも...やらなきゃ。
「あいつもしかして、あの脱獄犯じゃん。」
「やべー、逃げろー」
事態に気がついた生徒が走って逃げ始めた。
さすがにSランク、カンナの調べの方が早かったが今朝には報道されていた奴の情報。
話題にもなっていたしそりゃビビる。
さっきの悲鳴も気がついた女子による物だったらしい。
周りにはまだ、腰を抜かして動けない奴や無謀なのに残っている奴もいる。
変身はできないか。
「優秀なやろうがいると聞いていたんだが...まあいい。残っていら奴は優秀ってこととだとしよう、床に尻つけてびびっている奴ら以外は。」
なんなんだよこいつ。
優秀なやつを探しているのか?
そして俺は美咲に耳打ちをした。
「美咲、避難誘導をしてあげてくれ。学級委員のお前なら誘導できるはず。」
「五月は?」
「対処する、流石にな。」
「分かった。くれぐれも気をつけて。」
さらにもう一つのことを伝えた後美咲は走り出した。
もしもの時に俺は魔法少女の隠密があるから正体がバレにくいが美咲は違う。
それに美咲を危ないことには出来るだけ巻き込みたく無い。
だから逃した。
「ふん、びびってまた一人逃げたか。お前ら本当に超能力者ばかりなのか?」
どうやら逃げる奴には興味を示さないらしい。
今、逃げていないのは俺と後数人だけ。
俺をいじめていた奴も残っている。
どうしたものか。
この状態では能力なんて使えない。
とはいえこの中で一番強くてもCランク、到底Sなんかに敵うはずはない。
でもいじめてきていた奴の顔を見たが、ニヤニヤして戦う気満々だ。
あいつに、行かせるか?いや、だめだ。
万が一人質に取られでもしたら能力使用時、魔法少女としての世間の信頼を失いかねない。
やつを動かす前に俺がなんとかしないと。
束の間俺の後ろにいた奴が動き出した。
あいつの顔、どう考えても面白そうだなとしか思ってない。
銀座の方もカモンな顔をしている。
だめだ、絶対いかせちゃ。
そして動き出した奴をとめた。
「何すんだ、五月。」
「何が?下がれ。冷静になって考えろ。」
俺は少し強張った口調で言った。
あいつは俺の発言に少し動揺したのか後ろへ下がる。
はっきり言って勝てる自信はない。
さらに今は能力の使用もできない。
はっきり言って無謀だ、能力が使えなきゃ能域も破れない。
俺は、足を踏み出した。
「お前、面白くないと思ったがお前自身が動くのとはな。お前の力を見せてみろ。」
後ろに下がったあいつが逆に止めてる声が聞こえた。
あいつにも同情の心があったんだな。
でも俺は止められない、俺がやらなきゃ誰がやる。
そして俺はあいつの腕を掴んで投げた。
-銀座創
こいつ、軽々しく俺を持ち上げた!?
今の一瞬、目には止まったがそれでもすごい勢いで。
だが、投げられたことによるダメージがないだと、どういうことだ?
「お前、もしかして無能力か?」
俺にはこの可能性しか思いつかなかった。
だって今の勢いでなんもダメージも食らわなかった。
それはこいつが...
「ああ、そうだ。俺は無能力者だ。」
無能力者なのにこんなに力があるっているっていうのか?
それともブラフか?
でも確かに能域は割れなかった。
能域は無能力者に何されても破られない。
例えば無能力者に高台から落とされてもダメージ一つない。
包丁を刺されたって。
でも奴はなんで挑んできた?
勝てる可能性なんであるはずがないのに...
少し気になるなーこいつ。
強い能力者を無力化して人質にでもしようかと思っていたが変更だ。
こいつは面白そうだ。
-白瀬五月
やっぱりダメージはないか。
少し期待はしていたが無理らしい。
でも、これでわかった。
投げることは可能だ。
いじめられている時は無駄だと考えやんなかったが、こういうことはダメージを与えられないだけでできるにはできる。
なら、外に出せるはず。
そうして起き上がったあいつにまた、詰めようとした。
その途端奴は錬金術で鉄を伸ばしこちらに攻撃を仕掛けてきた。
結構な速度だったが反射で避け近づく。
そしてもう一度奴の手を取り投げる。
でも、どうやって外に出すか。
ここは5階なら...
「嬢ちゃん、強いな。格闘技でもやってるのか?」
「いちよう護身用にいくつか武道を。」
これは本当のことを言ってもいいだろう。
それにしても、大量虐殺したようには思えない人だ。
少し強さを求めてる感じ戦闘は好きなんだろうけど一般人を巻き込む人間にも思えない、普通のおじさんのようにも思える。
本当にそんな人なのか?
まあ、迷ってる時間なんてない。
窓から、投げる。
そして俺は走り出す。
今度はさっきより強く鉄を使ってきた。
それも複数ある。
それを思いっきり避けてまた手を取る。
まだやっぱり本気は出してない。
そして窓の方向に投げて落とす。
思いっきり投げたから学校の外の方向へ投げられた。
左を見ると驚いているいじめた奴や俺が無能力者だと知っている奴がいた。
どういうよりかびびってるな。
そして俺も窓の外へ飛び出した、奴を追って。
◇◆◇◆◇◆
窓から飛び出したと言っても飛び降りたら死ぬ。
だから一階ごとに設置されている窓枠を足場に降りた。
落下によるダメージはない、それが能域の効果だ。
俺は自ら能域の検証を最近していた。
無能力者が影響する落下にダメージはないが、衝撃は受ける。
俺が見つけた能域の穴、ジャミングと名付けた。
能域に振動を与えることで無能力者でも相手がひるむ。
確かにダメージはないが時間稼ぎにはなる上ジャミング中は動けない。
さらに能域に与えられた衝撃が大きいほどひるむ時間は長時間になる。
さらに受身を取ろうが関係無い。
だから5階からの衝撃でしばらく動けないはずだ。
出来るだけ速く向おう。
-銀座創
「なんだ、この振動は!?」
さっきから投げられた時に感じていたこの振動。
そのせいでさっきから動けなくなることが何度かあった。
そして現在俺は5階から投げられてから1度も動けれない。
嬢ちゃんは無能力、ていうことはダメージ与えることはできない。
トリガー式の能力者の可能性もあるがそうであっても嘘では無い。
そもそも、トリガー式の能力という物は発動していない場合無能力者と変わらない。
能域も割ることができない。
だから発動していない人は無能力者ともいえる。
だがこの振動は能力では無いだろう能力を発動していれば能域が割れている。
だが割れて…揺れてる!?
まさか能域が揺れているのか?
能域は本人には視認できるがこれは間違いなく揺れてる。
落下の衝撃が伝わって来ている。
まさしく割れない無能力者にしかできない戦法だ。
「はっおもしろい。」
彼がますます面白く感じた。
-白瀬五月
地面に着くと向こうの方に倒れ込んでいる奴がいた。
まだ振動で起きていないようだ。
そう思い向かい始めた時だった。
奴は起きて来た。
だが、少し早いかもしれないが十分だ。
「すごいな嬢ちゃん、こんなことをやるとは。意図的に。」
どうやらジャミングの事がバレたらしい。
まあでももういい、俺はもう能力が使える。
絶対勝ってやる、負けない。
読んでくださりありがとうございます