表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
社畜辞めました! 忍者始めました! 努力が報われるダンジョンを攻略して充実スローライフを目指します!~ダンジョンのある新しい生活!~  作者: 3104
五章 本業は公儀隠密で!

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

998/1500

食堂で焼き魚定食を!

 翌日の昼。

 公儀隠密の食堂で食事をとる。


 せっかくだから試しに食べてみようということになったのだ。


 今日のメニューは焼き魚定食。

 味は悪くない。というか美味い。


 この食堂では、公儀隠密のスタッフは誰でも自由に食べられる。

 もちろん無料だ。

 おかわりもできる。



 トウコが口いっぱいに頬張りながら言う。


「おいしーっスね! でもリン姉のごはんのほうがいいっス!」

「まあ、そうだが……あんまり大声で言うな。作ってくれた人に失礼だろ」


 俺は周囲を見回しながら言う。

 俺たち以外にも食事中の人がいる。


 公儀隠密といっても、皆が皆、戦闘を得意とするわけではない。

 異能者は少ないし、ダンジョン保持者はほとんどいない。

 ほとんどが裏方。普通の人々だ。


 つまり、社員食堂に近い雰囲気だ。

 忍者装束を着ているたり刀を持ち歩いているやつなどいない。

 俺だって普通の格好である。



 リンが言う。


「そうだよトウコちゃん。これ、塩加減がちょうどよくて、とってもおいしいよ」

「草原ダンジョンには魚はいないからな。家で魚を焼くと臭くなるし……」


 などと所帯(しょたい)じみた会話をしていると、ハルコさんとエドガワ君が食堂に入ってきた。

 俺たちに気付くとハルコさんが手を振り振り近づいてくる。


「こんにちはぁ。レンさん、トーコさん、ゼンジさん」


 そういうとハルコさんはリンの向かいに座る。

 エドガワ君はおずおずと、ハルコさんの横、一つ間を開けた席のイスを引きながらぺこりと頭を下げる。


「どうも……」

「もぉー。トオル君! どうして遠くに座るんですかぁ? こっちこっち!」


 ハルコさんが隣のイスをバンバンと叩いている。

 そしてエドガワ君を引っ張る。

 エドガワ君は困った顔で言われるがまま座る。


 うーん。

 すっかりロックオンされているな。



 俺は苦笑しつつ、二人に会釈する。

 そして訊ねる。


「二人は今日、任務があるのか?」

「いいえぇ。今日は訓練だけですぅ。朝から走らされてますぅー」


 はぁ、とため息をつくハルコさん。

 嫌そうだね。


「サタケさんの姿が見えないけど、どうしたんだ?」

「なにか用事があるそうですぅ。そのおかげで少し休めるんですけどぉ」


 エドガワ君が言う。


「そのあいだ、ボクはスナバさんに射撃を見てもらおうかと……」

「へえ? じゃあ、トウコも一緒に見てもらったらどうだ?」


 トウコがドヤ顔で言う。


「あたしはもう、教わることは何もないっス!」


 お前に教えることは何もない、とスナバさんに言われたんだったな。

 これは言葉のあや。

 実力を認めつつ、不真面目なトウコには教える気がないという意味。


 でも、しっかり頼めば教えてくれると思う。

 それがトウコのためになるはずだ。


「まあ、そう言わず教えてもらおうぜ。俺も一緒に行くよ」


 失礼のないように、見張りに行くって意味だ。

 お目付け役である。


「そーっスか? じゃあ行くっス!」


 へへっと笑うトウコ。

 無邪気なものだ。


「じゃあ私も……」


 と言いかけたリンにハルコさんが言う。


「そうだレンさん! ツイスタは始めましたかぁ?」

「ええと、個人用のはまだですー。よくわからなくて……」


 ツイスタとは、動画やコメントを投稿できるSNSのことだ。

 ハルコさんはヘビーユーザーである。

 結構人気があるらしい。


 リンはそういうことには疎い。

 仕事用のアカウントはモデル事務所が作ってくれたそうだ。

 もう何本か動画も上げている。



 ハルコさんがぐいぐいいく。


「じゃあ、今やっちゃいましょう! 友達登録しましょうねぇー!」

「は、はあ……」


 リンが困った顔で俺を見る。


「せっかくだから教えてもらうといい」

「うーん」


 あまり気のりしないらしい。


「俺もそういうのは詳しくないから、あとで教えてくれ」

「はいっ! わかりましたー」


 俺はSNSをほとんどやらない。

 やる意味がないし、暇もなかった。


 昔は仕事()けだったからな。

 もっとも、今だってダンジョン漬けの生活だ。

 暇なんてない。


 リンはネットに疎い。

 SNSなど無理にやる必要はないのだが、あえて俺はハルコさんの話に乗るよう勧めた。


 リンには友達がいない。

 俺は友達というより恋人だ。

 だからリンの友達はトウコだけ。


 それでは世界が狭くなってしまう。

 俺とトウコ、三人だけの狭い世界。


 それも悪いことではない。

 俺だって悪い気はしない。


 だけどリンは過度に俺に依存しているように思う。

 危ういほどに。


 そういう意味で、俺たち以外の友達がいたほうがいい。

 ハルコさんならちょうどいいだろう。



 トウコにも友達はいない。

 だが状況が少し違う。性格が違う。


 トウコなら相手次第ですぐに打ち解けられる。

 物怖じせず、深く考えないからだ。

 ハルコさんやオカダなどとはうまくいきそうだ。


 でも、この性格は場所を選ぶ。

 学校や職場では受け入れられなかった。


 相手も選ぶ。

 サタケさんやスナバさんのような、厳しく真面目な相手には好かれない。

 失礼な奴だと思われてしまう。


 (ほう)っておいたら嫌われてしまうだろう。

 というわけで、俺はトウコのフォローに回るつもりだ。


 リンのフォローもしてやりたい。

 だが、今回は難しいだろう。


 だって、俺が女子会に混じっても、ねえ?

 ジャマだよね?

 SNSにも詳しくないし、俺にできることはない。


 リンは不安そうにしているが、頑張ってもらいたい!



 というわけで、俺たちは射撃場へ向かった。

ご意見ご感想お気軽に! 「いいね」も励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 社員食堂…懐かしい響きだ(遠い目 つか隠密の食堂て
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ