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言うべきか、言わざるべきか! それが問題だ!

自分の家にダンジョンが現れたら……どうすればいいんだろう。

 アパートの部屋に戻ってきた。

 今日はダンジョン探索は終わりにして、調べ物をしよう。



 調べるのはダンジョンについて。


 といっても「俺のダンジョン」について調べるわけじゃない。

 調べるのは他の……。現実世界にダンジョンが現れたかどうかだ。


 「ダンジョン」とか「モンスター」のワードでウェブを検索する。

 ウェブ小説、ゲームなどの創作物の話しかヒットしない。


「やっぱり……今日もダンジョンの情報はない、か。ふむ……」


 これは、日課のように調べているが……。

 今のところ情報は何も見つかっていない。



 俺の家にダンジョンが現れてからもう十日近く経っている。


 だけど、テレビでもネットニュースでも、ダンジョン関連のニュースは報じられていない。


 テレビはパンデミック関連のニュースばかりだ。

 感染者数が増えているとか。外出を自粛(ステイホーム)しろとか、マスクをしろとか。

 今のところはワクチンもなく、対応策もない。


 マスクや手洗いなどで自衛するしかない。

 俺も気を付けているつもりだ。


 職場の飲食店でも色々と対応を迫られていた。

 ……でも、クビになった今はもう、考える必要もなくなってしまったな。


 ニュースでは政府の対応が悪いとか、芸能人が軽はずみな行動をとったとか……批判ばかりが報じられている。


 若者の自殺者が増えたとか、行方不明者が多いとか暗いニュースも多い。

 ここ数年でも最多の行方不明者数を記録しているとか。


 ほとんど同じ話題をループしていて飽き飽きしてくる。

 こんな時だからこそ、明るい話題や安心できるニュースを流せばいいのにな。



 ともかく、俺はダンジョンが現れてから、調べ続けている。


 しかし、ダンジョンがこの現代日本に現れたという情報が全然出てこないのだ。

 そういう情報があれば、大手掲示板や動画サイトはお祭り騒ぎになるはずなんだ。


「うーん。ダンジョンが現れたのは俺のところにだけか? ……そんな偶然、あるか?」


 ――そう考えて、毎日くびをかしげていた。


 日本で俺だけ、世界で俺のところにだけ。

 どんな確率なんだ、これは。


 俺が世界一ラッキーな男ということはないだろう。

 すごい偶然に巡り合うような物語の主人公みたいな力を持っているとは思えない。


 俺はどこにでもいる平凡な男の子……男性社畜でしかない。

 人と違うところがあるとするなら、ハードな労働環境に耐えられる力があるというくらいだ。


 少女漫画の主人公は「どこにでもいる普通の女の子」という設定だったりする。

 どこが普通なんだよって場合がほとんどだ。


 でも俺は「どこにでもいる普通の一般男性」だ。

 家が古武道道場だったり、大金持ちだったりもない。

 変わった血筋の末裔だとか、特殊な過去もない。


 飲食業で雇われ店長をしていただけの平凡な男だ。

 ダンジョンの中でも外でも、チート能力はない。

 主人公補正みたいな都合のいいものもない。――ないはずだ。


 だから俺は、俺だけが特別だなんて思っていない。

 俺だけがダンジョンを持っているなんて強運は信じない。


 俺のようにダンジョンに潜っている人が他にも居るのかもしれない。


 ――これまで、そう考えてきた。



 そして、ついに見つけた!


 オトナシさんだ。

 彼女はおそらく、魔法使いだ。

 初めて見つけた、俺以外のダンジョン関係者。スキル保持者。


 彼女は、ダンジョンのことを隠している。

 俺も、誰にも言わずに過ごしている。


 誰かに言えば、たちまち悪目立ちしてしまうだろう。

 世界初のダンジョンとして、ニュースに乗りたくはない。

 ここでの生活、平穏な生活が続けられるとは思えない。


 俺は、世を忍んで生きていたい。

 世界初のダンジョン保持者としての栄誉は、誰かに譲る。

 目立ちたくない。静かに暮らしたいだけだ。



「でも……俺やオトナシさんのような人が他に居るとして……黙っていられるものか?」


 俺は目立ちたくない。彼女はコミュ障だった。

 自分から発信していくタイプじゃない。


 だが、皆がそうとは限らない。


 自分の家にダンジョンができたとき――黙っていられるか?


 それをネットに載せずいられるだろうか。

 現代では、情報はすぐに拡散する。


 すぐに掲示板やSNSに「俺の家にダンジョンが現れた」みたいな話題が出るはずだ。

 掲示板は大盛り上がりしてお祭り騒ぎになるだろう。


 ブログや動画サイトにアップすれば、バズること間違いなしのネタだ。

 それを我慢することができるか?


 ネットじゃなくても、友人に、家族に、秘密にしていられるだろうか。

 無理だと思う。

 俺みたいに友達の居ないやつでもない限り。


 誰かに伝えれば、それはすぐに漏れ出す。

 いずれ誰かがネットにも情報を上げるはずだ。


 でも、調べてもダンジョンやモンスターが現れたという情報はない。

 いくら探しても見つからなかった。



 俺自身がネット上に情報を流す、ということも考えた。

 たとえば、匿名でもいい。


 だが、そうすべきではないという気がする。

 理屈だけではない。感覚というか……。

 言ってはいけない。知られてはいけない。なぜか、そんな感じがする。


 改めて考えてみても、やっぱり無理だ。


 まず信じてもらうことが難しい。

 もし信じてもらったとしてそれでどうなるのか。


 どこからか俺の家、俺のダンジョンが特定されてしまうかもしれない。

 世界初のダンジョンとして、注目の的となってしまうだろう。


 そして、何かの理由で住みつづけることはできなくなる。

 危険だからとか、研究のためだとか。


 ……やはり、公表するのは危険だ。

 ダンジョンのことは誰にも話さない。話せない。


 ――それがたとえ、親しい人間だとしても。

ご意見ご感想、お待ちしてます!

私は……ダンジョンのことは人に言わない派!

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[気になる点] ………? 20話から何度か登場している「リアル・ダンジョン攻略記」は主人公も本物のダンジョン攻略者が創作だと偽って掲載してるものと認識しているのだと思っていましたが、アレが無かったこと…
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