不遇! 見つかった隠密火力特化、なにもできずにやられてしまう!?
ドアの横で待ち構えているカマキリ。
おそらく【隠密】して気配を消している。
しかし魔力までは消せていない。
索敵にかかっている時点で丸裸だ。
隠れる能力はバレると脆い。
俺が【隠密】【暗殺】を補助的にしか使わないのはこれが理由だ。
カマキリの位置は、こちらから見て死角になっている。
部屋に入れば、その瞬間、先制攻撃を受けてしまうだろう。
いるとわかっていても、部屋に踏み込むとこちらが後手になる。
うまい位置取りだ。攻めづらい。
まあ、カマキリが考えて行動しているわけじゃないだろうけど。
待ち伏せするのは本能みたいなものなのかな?
「さて。どうしようか? 分身でやるか?」と俺。
「オトリか?」と自律分身。
分身で敵を通路前に釣り出し、みんなで攻撃。
あるいは――
「分身を部屋に出して、入れ替えるのもありだが……」
これなら先制攻撃を受けず、こちらから仕掛けられる。
リンがおずおずと言う。
「あの、私が燃やしちゃってもいいですかー?」
うん。それが手っ取り早いね。
リンの魔力はまだ余裕がありそうだし、頼んでしまおう。
「そうだな。リン、任せる!」
リンが嬉しそうにうなずく。
そして手を振って魔法を放つ。
「はいっ! では……ファイアウォールっ!」
部屋の中――ドアの右側が炎で明るく照らされる。
上から降り注ぐ炎の壁。
「……!」
燃え上がったカマキリが戸口へとよろめき出る。
すかさずトウコが銃を向ける。
「いただきーっ! うらっ!」
弾丸が叩きこまれる。
これで終わり。
カマキリが魔石に変わる。
「二人ともナイス! じゃ、部屋を調べるか!」
俺たちは罠に注意して部屋を調べる。
床に罠はなかった。
部屋から別の通路は伸びていない。
薄暗い部屋の奥には――
「お、宝箱があるぞ!」
「やたーっ!」
分身を使って、注意して開ける。
これにも罠はなし!
中身を手に取る。
ずしりと重い赤茶けた石だ。
「鉄鉱石か。これも上質だといいが……」
「システムさーん?」
【サポートシステム】が答える。
<名称:上質な鉄鉱石。カテゴリ:素材>
俺は笑顔で言う。
「お。やはり上質か! いいぞ!」
トウコはつまらなそうにしている。
「なんか最近、石ばっかっスねー」
「いいんだよ。俺にとってはお宝だ! これで装備強化がはかどるぞ!」
リンが小さく拍手する。
「よかったですねー! もっとたくさん見つけましょう!」
武器や防具で重宝する鉄素材。
いくらあっても困ることはない。
忍者刀にはすでに三個の『上質な鉄鉱石』を使っている。
これには、まだまだ強化する余地はある。
素材を足すことで、古い素材を置き換えていく。
吸収合併と言ったほうがいいか。
どんどん『上質』の比重が高まることで強化されていくわけだな。
クナイや鉢金なども強化したい。
防具の一部にも鉄を使っている。余ることなどない。
自律分身に使わせている支給刀も育てたいし!
この部屋には他にめぼしいものはない。
残るはクモがいた通路だ。
俺たちはクモを遠距離攻撃で片付けて先へ進む。
ゴブリン、コウモリはこれまで同様に処理。
鍛えた忍者刀でサクサクと処理する。
蛾はこの階層にはいない。
鱗粉対策をしなくていいので、呼吸がしやすい。
強敵ではないけど、いないとラクである。
曲がり角や部屋の入口には要注意だ。
カマキリが待ち構えている。
リンの索敵と火魔法で処理すれば簡単だ。
正面から斬り合えば強敵だが、距離を置いて倒す場合がほとんど。
せっかくこの階層から現れた難敵なのにね。
活躍できない不遇モンスターである。
ま、ラクに倒させてもらうとしよう!
探索を続けた俺たちは下り階段を発見した。
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