十字路と扉とモンスターと!
カマキリのいた部屋を後にして先へ進む。
通路の幅は先ほどと変わらない。
松明が揺らめいている。
俺やトウコは【暗視】でクリアな視界を確保している。
リンは【魔力知覚】があるから行動に支障はない。
自律分身が十字路で左右を確認している。
「正面にドア。左右のどちらにも敵は見えない。通路が続いているな」
「どちらに進むんスか?」
俺は言う。
「ドアは開けず、左右のどちらかに行こう。どっちでもいいけど、右にするか」
「はーい」
「じゃあ、分身で罠チェックしよう。
罠探しローラーを押しながら分身が通路を進む。
かちり、と罠の動作音が聞こえる。
俺は分身を壁に寄せる。
矢が通路を飛んでいく。
発見した罠のスイッチへ蓄光塗料で印をつけていく。
これで次に通るときは楽になる。
リンが言う。
「この先、クモさんがいますよっ!」
「クモか……」
通路は一本道。
松明の明かりを反射して、きらりと糸が光っている。
クモの巣が通路を塞いでいる。
天井のあたりの暗がりにクモが潜んでいる。
トウコが銃を向ける。
「んじゃ、やっちゃうっスよー」
「まてまて。コイツは放っておいて、逆の道を行こう」
トウコが驚いた顔で振り返る。
「うえぇ? なんでっスか?」
自律分身がうなずく。
「前後から敵に挟まれないようにだな?」
「そうだ。この通路はクモに守ってもらおうぜ」
「わあ! 名案ですねー!」
他に進めるルートがあるうちはクモは放置でいい。
反対側へ進もう!
十字路の逆側へと進む。
突き当りは行き止まりだった。
十字路へ戻る。
閉まっていたドアの前に立ち、分身に指示を出す。
「じゃ、ドアを開けてくれ!」
両開きの扉を分身が押し開ける。
俺たちは少し離れて見守る。
かちり。
「あ、罠の音がしたっスよ!」
「矢が来る! 警戒しろ!」
風を切る音。複数だ。
天井のあたりから矢が戸口へと降り注ぐ。
ドアの幅いっぱいだ。
分身に回避行動を取らせるが、避けきれずに被弾する。
分身が塵になる。
「おお……なかなかヤバめの罠だな」
「殺しに来てるっスね!」
十字路の天井あたりから、斜めに矢が射出されていた。
ドアを開けた場合、背中から撃たれることになる。
通路の罠より、射出口からの位置が近い。
とうぜん、命中までのタイムラグが短くなる。
避けるのは難しそうだ。
来るとわかっていれば、なんとか避けられるかな?
「もう一度開け閉めしたら矢が出るかな?」
リンが心配そうに言う。
「た、試そうとしてます? あぶないですよっ!」
「ああ。ドアは開けたままにしておこう。内部の様子はどうだ?」
トウコが耳をそばだてる。
「音はしないっスねー」
「魔力の反応は……ありますっ! ドアのすぐ横です!」
む?
俺の耳にも音は聞こえない。
「なんだ? カマキリか? クモか?」
「うーん。姿はぼやけていてよくわかりません」
「ぼやけている? ……隠密か!」
「そうかもしれません。どうしましょう?」
こちらから相手の姿は見えない。
動かずにじっとしているということは、不意打ち狙いか。
入り口はこのドアだけ。
さて。どうしようか?




