攻撃力特化、紙装甲!
「部屋の入口に敵はいませんー」
リンの索敵で、部屋の入口の安全を確保。
先頭の自律分身が部屋の中を確認する。
「……いるな! カマキリだ!」
自律分身が部屋の中へと踏み込む。
俺も後に続く。
少し広めの部屋だ。
その奥、別の通路への入口に大きなカマキリがいる。
人間よりやや大きい茶色のカマキリ。
聞いていたより大きいんじゃないか?
自律分身が言う。
「リン、トウコ。撃て!」
「はいっ! ファイアランスーッ!」
「チャージショット!」
二人が準備していた技を放つ。
俺と自律の間を閃光と熱が通り過ぎていく。
カマキリがこちらの気配に気づく。
素早い動きで振り向こうとする。
そこへ弾丸が着弾。
と言っても俺に見えたのは弾丸の軌道と、その破壊的な結果だけだ。
閃光はカマキリの腹部を撃ち抜き、そのまま背後へ抜けていく。
さらに炎の槍が命中してカマキリを燃え上がらせる。
カマキリが崩れ落ち、そのまま塵となる。
トウコが物足りなそうに言う。
「あれっ!? 終わりっスか?」
「そうみたいだな。俺の出番はなしか」
一応、俺も【水噴射】の準備はしていたんだけどね。
リンが胸をなでおろす。
「ふう。でもすぐに倒せてよかったですねー!」
「そうだな。楽に勝てるにこしたことはない!」と自律分身。
スキルのない自律分身が一対一で戦えば、苦戦する。
四人なら楽勝。あっけない。
遠距離から一方的に攻撃すれば勝てるのは当たり前だな。
今の様子だと、チャージショットだけでも倒せそうだ。
やや過剰な火力だった。
とはいえ、初見の敵だ。
全力で当たるのは正しい。
「様子はわかった! 次からは交代で攻撃して魔力を節約しながらいこう!」
俺はカマキリの魔石を引き寄せてキャッチする。
そして言う。
「自律の話通り、耐久力は高くないな。次にカマキリがいたら、もう少し力を抜いて攻撃してみよう」
「わかりましたー」
「あたしはスキルなしで撃ちまくるっス!」
自律分身がうなずく。
「倒しきれなければ、俺たちも攻撃に参加する」
自律分身には分銅と投擲がある。
スキルがなくても中距離戦ができる。
俺にも投擲と【水忍法】がある。
全員が遠距離攻撃できるから、距離があれば有利になる。
トウコが耳をそばだてながら言う。
「んー。コウモリが来てるっス!」
トウコは部屋の逆側、カマキリがいた方向を指差している。
俺の耳にもコウモリの羽音が聞こえてくる。
「コウモリか。なら、俺がもらう!」
部屋を突っ切り、通路の入口へ走る。
通路には松明に照らされたコウモリの群れが見える。
部屋に入ってくる前に、ここで一網打尽にする!
俺は腰のあたりで両手を重ね、術に集中。
「キィィ!」
「キィキィ!」
こちらに気づいたコウモリが耳障りな声を発する。
充分に引きつけて――
「水忍法――水噴射っ!」
溜めた力を解き放つように、術を発動!
両手から水流を放つ。
すさまじい勢いで、通路に水がなだれ込む。
水はコウモリたちを押し流し、もみくちゃにしていく。
少しの間放水を続け、術を解く。
「よーし。あとは生き残りにトドメだ!」
「俺も手伝うぜ」と自律分身。
俺と自律が通路へ進む。
水の引いた通路には魔石が転がっている。
ほとんどのコウモリは水に揉まれるか壁に叩きつけられるかして、塵になったようだ。
「キィィ……」
床で力なくもがいているコウモリを発見。
棒手裏剣を放ち、トドメを刺す。
自律分身も同様にトドメを刺して回っている。
「終わりっスか?」
「ああ。もう敵はいない。ひとまず戦闘終了だ!」
「背後からも来ていません。部屋にはほかの通路もありませんでしたー」
「よし! じゃあこのまま先に進もう!」と自律分身。
順調でいいね!




