六階層攻略! その4 帰還と報酬! 今後の方針検討!
「そろそろ、俺は時間切れだぞ。ほれ、装備を返しておく――」
自律分身の効果時間が切れる。
差し出された装備を受け取ると同時、塵となって消えた。
そして、自律分身の意識と経験が俺に流れ込んでくる。
<経験が一定値に達しました。レベルが上がりました!>
「おおっ!? ――自律分身の分の経験値か! これでレベルは10だな!」
ついに二桁の大台にのった。
これで俺もいっぱしの冒険者……ダンジョン探検者になってきたぞ!
「スキルを振りたいが……それは帰ってからだ」
この階層はまだ危険だ。何が出るか分からないからな。
探索の続きは自律分身が出せるときがいい。
「今日のダンジョン探索はここまで!」
しかし、帰るまでが探索だ!
六階層から撤退する間に一度接敵した。
帰り道の松明は消してあるから、暗闇での戦闘になる。
これは俺に有利だ。
敵構成は斥候、ナイフ、ナイフ、盾。
前回と同じ組み合わせだ。
魔法使いがいないから、脅威度は小さい。
初手で斥候を暗殺。そのあとは消化試合だ。
不意を打って、始末していく。
混乱から立ち直る前に、いっきに片付ける。
条件がそろっていれば【隠密】で無双できる。
今回は魔法使いゴブリンは現れなかった。
もしかすると魔法使いゴブリンはレアなのかもしれない。
ナイフゴブリンは逆に、出現率が高い。
斥候と盾は普通って感じだな。
そして、問題なく階段へたどり着き、五階層へ上がる。
「よし、ここでいいだろう」
ここに、余剰の装備品を置いていく。
ちょっとしたキャンプ地、アイテム補給場所を各所に作っておくのだ。
水や食料、帰りに使わない分の釘など。
それから六階層でしか使わない火消し壺だ。
ダンジョンの奥へ行くほど、外から持ち込んだ品物を持ってくるのは大変になる。
大荷物で探索はできない。
こうして、補給できる場所を準備しておくことは大切だ。
兵站ってやつだな。
「あー、早く収納系のスキル身につかないかなぁ……」
何度でも言っておく。
願いよ届け!
二階層のモノリスへ到着した。
モノリスへ戦利品の魔石を投入する。
魔石を入れれば、落としたモンスターに対応した商品が現れる。
これによって、敵の正式名称が分かるんだ。
「さて、お名前はっ……と。お、斥候は正解だったな」
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ゴブリンの斥候の魔石:3
1:ゴブリンの牙、ゴブリンの肉
2:汎用ポイント1
4:ゴブリンの投げナイフ2、薬草
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斥候と呼んでいたゴブリンは斥候で正解。
ナイフは剣士。
盾持ちは戦士。
魔法使いは呪術師。
「そうそう! ゴブリンといえば呪術師だよな。魔法使いとかしっくりこないもんな」
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ゴブリンの剣士の魔石:5
4:ゴブリンのナイフ、薬草
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ゴブリンの戦士の魔石:3
4:ゴブリンの木の大盾
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ゴブリンの呪術師の魔石:1
4:ゴブリンの杖、ゴブリンのローブ
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引き換えリストの1ポイントと2ポイントは同じだ。
肉とか牙なんて、引き換えるワケないわ!
汎用ポイントが2ポイントで引き換えられるのか。
普通のゴブリンは5ポイントで引き換えだから……。
職業ゴブリンの魔石は、2.5倍の価値があるのか。
モンスターごとに、ある程度の重みがこれでわかる!
貴重な情報源だ。
名前が分かるだけでも、けっこう違う。
いまのところ、引き換えたいアイテムはない。
ゴブリンは引き続き、薬草が主な引き換え先になるな。
あと、気になるのは大盾くらいか。
あの盾は木材として使えそうだ。
ホームセンターで木材買うと、案外高いんだよね。
机欲しい、机。
拠点の整備もやっていきたい。
いつまでも地べたでクラフトもないわ。
机くらい【忍具作成】いけるはずだ。
迅速な陣地の設置や撤去も忍者のお仕事。
机くらいまではギリ、忍具と言えるだろう。言える言える!
あ、松明も木だし、一応集めてくれば良かったな。
火消し壺ごと五階層のアイテム補給場所に置いてきた。
次に行ったら持ち帰ろう。
集める意味も出てくる。
コツコツ木材集めも日課だな。
「さて、考えることが増えてきた……。整理しなきゃな」
六階層の攻略は順調に進みそうだ。
対策の甲斐あって、このままでも大きな問題はない。
やるとしたら、火魔法の対策をするくらいか。
レベルアップもした。スキルも取っていきたいが……。
でも、これは焦らずじっくり考えてからにしよう。
ご利用は計画的に。
自律分身については、順調に解明できている。
戦闘でも十分に力を発揮してくれた。
使い方は、今の感じでよさそうだ。
いま、一番気がかりなのは――
オトナシさんのことだ。
彼女は、スキルを持っている。ダンジョンを知っている。
つまり、俺と同類ってことになる。
前に彼女が相談したいと言っていたのは――ダンジョンのことだったのだろうか。
今はまだ、相談を受けているワケじゃない。
ファイアボールの件は、彼女がうっかり口を滑らせただけだった。
たぶん、俺が気付いていることには気づいていない。
俺のことにも気づいていないだろう。
基本的には、ダンジョンのことを隠して暮らしているに違いない。
俺と同じ。
ダンジョンのことは人に話さないことにしているんだ。
自分が普通じゃないと打ち明ける……。
これは、なかなか難しいからな……。
変な目で見られるんじゃないか。
気味悪がられるんじゃないか。
お互いがダンジョンを知っているとしても……知られたいとは限らない。
隠しているものを暴き立てるのは……違う。
俺は今の彼女との距離感を心地よく感じている。
もうすこし、今のままでいたい。
余計なことを言って、うるおいの時間を失いたくない。
普通の隣人として、普通の――男女として。
もう少し、この関係を温めていきたい。
ダンジョン攻略仲間という新しい関係に進むのは、今はまだ早い。
うーん。
色んな意味で彼女を誘いたいけど……難しい!
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