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社畜辞めました! 忍者始めました! 努力が報われるダンジョンを攻略して充実スローライフを目指します!~ダンジョンのある新しい生活!~  作者: 3104
五章 本業は公儀隠密で!

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クローゼットダンジョン・第十六階層!

 自律分身が偵察結果を語る。


 まず地形。

 俺のダンジョンでは、五階層ごとに交互に地形が変わる。

 十五階層までの地形は洞窟だった。


 十六階層の地形は迷宮風になっている。

 人工的な通路と部屋だ。


 そして罠がある。

 床のスイッチを踏むと矢が飛んでくるタイプ。


 前にあったトゲの罠は見かけなかったそうだ。

 まだ入り口しか探索していないからな。

 今後、出てくるかもしれん。



 自律分身が言う。


「通路の角を曲がったところで、頭上から攻撃を受けたんだ。とっさに防いだけど、刀が手から離れてな」

「だ、大丈夫だったんですよね!?」


 リンの言葉に自律分身がうなずく。


「ああ。すぐに距離を取ったから大丈夫。で、襲ってきたのは大きなカマキリだった。人間くらいのデカさだ。ちょっと気持ち悪いから覚悟しておけよ」

「うう……また虫さんなんですねー」


 リンが青ざめる。

 コウモリには慣れたけど、クモはまだちょっとキモい。


 デカいカマキリなぁ……。


「で、近づきたくなかったから、距離を取って鎖分銅で戦った。首にワイヤーを絡めて、引っ張ったらプチっと首が取れた」

「必殺っスね!」


 カマキリは首が取れやすい。

 わかりやすい弱点があってよかった。


「カマキリといえば、やっぱりカマで攻撃してくるのか?」

「ああ。かなり素早い。それに前腕はかなり硬い。分銅をぶつけても効いた様子はなかった。見た目は思ったよりトゲトゲしていたな」


 リンとトウコが首をかしげる。


「とげとげ?」

「シャキーンってなってないんスか?」


「刃物みたいに鋭いかというとちょっと違うな。挟んで捕まえる感じに見えたぞ」と自律分身。

「ふーむ。リアル寄りの姿って感じか……」


 マンガやゲームだと前腕は鋭い刃物のように描かれることがある。

 ここにいるカマキリの前腕は切断するより掴むものなんだろう。



 自律分身が言う。


「つかまれたら無事じゃすまないだろう。初手をかわせなかったらヤバかったと思う」

「二号の首がもげてたかもっス!」


 リンが涙目でトウコの肩を掴んでゆさぶる。


「やめてよトウコちゃん! 怖いよー」

「あー。ごめんっス!」



 俺は自律分身に聞く。


「上から攻撃されたって言ってたよな? どういうことだ?」

「通路の壁にへばりついてたんだよ。つまり、壁や天井を移動してくるってことだ!」


「おお……俺と同じような壁使いか!」

「クモもそうだが、虫だからな……」と自律分身。


「ちなみに、飛びそうか?」と俺。

「飛ぶ姿は見なかったが、(ハネ)はあったな」と自律分身。


 ううーむ。

 壁を這い、空も飛ぶ。

 動きが素早くて、攻撃の威力もありそう。


「それは厄介な……。このフロアは今まで以上に気をつけて進まなくちゃな!」と俺。

「ああ。ちなみに、この先は四人で進むか? それともいったん俺を解除しておくか?」と自律分身。


 自律の言葉に、俺は少し考える。

 解除してフィードバックを受ければ、俺自身が戦いやすくなる。


 しかし、まだ【自律分身の術】の効果時間は残っている。

 疲労も負傷もない。


「続行でいこう! 先頭を任せたい!」と俺。

「承知したぜ!」と自律分身。



 トウコが伸びをする。


「うー! やっと出発っスね! 待ちくたびれたっス!」

「き、気をつけて進みましょうねー」


 リンは少し不安げだ。


「先頭は自律。次は俺。その後ろにリンとトウコの順に進もう」

「はいっ」

「りょ!」



 作戦としては……。


「カマキリがいた場合、遠距離攻撃で倒すようにしたい。俺と自律がカマキリを近づかせないようにする」

「ああ。なるべく近づかないほうがいいだろうな。俺は分銅で戦う」


 実際に戦った自律分身の言うことを信じよう。

 斬り合いの距離に踏み込むことは避ける。


 はじめての階層だ。

 慎重に慎重を重ねていく!



「というわけで、今回も罠チェックしながらいくぞ!」と俺。

「地味ローラー作戦っスね!」


 自律分身の前に判断分身を出す。

 用意してきた罠探しローラーを持たせ、床を探りながら先行する。



 自律分身が言う。


「俺が踏んだ時は通路の先から矢が飛んできた。毎回そうとは限らないから気をつけてくれ」


 通路の先から矢が飛んでくる……?

 あ、いかんな。


「……ちょっと待て。手順を変えよう!」と俺。


 俺が足を止めると、トウコが口をとがらせる。


「うえぇ? まだほとんど進んでないっスよ!?」

「前とは状況が違う。トゲの罠なら、ローラーでかたっぱしから起動していけばいい。トゲは下から出くるからな――」


 俺の言葉を自律分身が引き取る。


「――今回の罠は矢だ。どこから飛んで来るかわからない。だから罠を起動させるのは危険なんだ。俺が気付くべきだったな。カマキリのことばかり考えてたわ。すまん」


 自律分身が軽く頭を下げる。

 リンが言う。


「いえっ! ゼンジさん()()が気づいてくれて助かりましたー!」

なる(なるほど)! そういうことっスね!」


 矢が飛んできたとして、避けられる保証がない。

 起動することで、かえって危険になる。


 今は一本道の通路だ。

 前後左右、あるいは上下。どこから矢が飛んでくるかわからない。


 見てから避ける……のを皆に求めるのは難しい。


「じゃあ分岐までは罠ローラーを使わずに進む。角まで行ったら、分身を先行させて罠チェックしよう」

「敵がいた場合は、元居た通路に引き込んで戦うのがいいだろう」と自律分身。


 戦うとき、罠に気を取られたくない。

 安全な場所、確認が済んだ場所で戦うということだ。


「リョーカイっス!」

「はい! いいと思います!」


 こうして、探索が始まった。

 一歩一歩、新しい場所へと突き進むこの感じ。


 こういう緊張感も悪くないね!

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[一言] また虫か…そういやGも空飛ぶよね(ボソ
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