【意識共有】の新たな効果とは!?
今日は俺のダンジョンを攻略する。
先日突破したボスゴブリンの先へ進む。
いざ、十六階層へ!
まずは偵察!
いつも通り自律分身が単独で先行する。
今日は【士気高揚】を付与した支給刀を持たせている。
その間、俺たちは階段で待機だ。
――しばし待つ。
「お? そろそろ自律が戻ってくるぞ!」
トウコが不思議そうに言う。
「うぇ? なんでわかったんスか?」
「あっ! 分身さんが来ましたー」
リンが言うように、自律分身が角を曲がって小走りにやってくる。
俺は自律分身に声をかける。
「おかえり俺。ヒヤッとした感じがしたんだが、なにかあったか?」と俺。
「あったけど……そっちになにか伝わったのか?」と自律分身。
俺と自律分身はそれぞれ独立して行動している。
遠く離れているとき、相手がどうなっているかはわからない。
これまではそうだった。
「ああ。ぼんやりとした感覚なんだけど、離れている自律の気持ちがなんとなくわかるんだ」と俺。
「気持ちって、思考が読めるのか?」と自律分身。
「いや、もっと弱い感覚だ」
「わかったっス! 店長と二号は心が通じあってるんスよ!」
はっきりと心が伝わってくるわけでもない。
「心というより、感情みたいなものがわかる感じかな?」と俺。
「なら、いま俺が感じていることがわかるか?」と自律分身。
意識を集中してみる。
感じられるのは……もやもやとした感じ?
「うーむ。疑問とか不安みたいな気持ちか?」と俺。
「まあ、そういう感じだ。【意識共有】の効果なのか……とか考えていた」と自律分身。
感情なり思考がなんとなく伝わるって感じか。
リンが頬を染めて胸の前で祈るように手を組む。
「すごいですねー! 離れていても通じ合えるなんて、素敵ですっ!」
「いや、そんな素敵なものじゃないと思うけどな」と俺。
「一方的に読み取られるだけだしな。俺は何も感じない」と自律分身。
トウコが元気よく手をあげる。
「はいはーい! じゃあ、あたしがなにを考えてるかわかるっスか!?」
そう言うとトウコは口元をゆるませている。
俺と自律が同時に言う。
「エロいことだろ」と俺。
「エロいことだな」と自律分身。
「おぉー! 正解っス! 二号にエロいことをしたら店長も反応するのかを想像してたっス!」
予想よりもっとくだらないこと考えてた!
「一応言っておくが、他人の意識が読めるわけじゃないからな」と俺。
「トウコの考えはスキルがなくてもわかるだけだ」と自律分身。
トウコが両手を握って興奮した面持ちで言う。
「おぉー!? あたしたち、通じ合っているんスね! 心と体が!」
「まあ……そうなるか」と俺。
体は違うが。
リンはさっきから静かにしている。
目をつぶって、胸の前で手を合わせて祈るようなポーズ。
なにか必死に念じていそう。
「ちなみにリンは今、私の心が読めますか……? と考えているな!」と自律分身。
「そ、そうですっ! なんでわかったんですか!?」
流れから予想はつく。
わかりやすいポーズで助かる!
「まあ……通じ合っているから、かな」と自律分身。
「素敵ですねー!」
この流れで外すわけにはいかない!
しかしリンの考えは読めないこともある。
リンはまた目を閉じて、少し考えるような表情。
今考えているのは……。
次は何を考えて当ててもらうか、だ!
そんな危険なゲームには乗れない!
外した場合のリスクしかない!
予防線を張っておく!
「とにかく、読めるのは自律分身の意識だけだ! リンやトウコの心が読めるわけじゃないぞ!」と俺。
自律分身も追従する。
話題を変えろ!
「さて、偵察結果を話すぞ! まずは罠についてだ。床のスイッチを踏むと、壁から矢が飛んでくる」と自律分身。
「やはり罠があったか!」と俺。
六階層からの迷宮階層も罠が多かった。
リンが心配したように自律分身に触れる。
「だ、大丈夫でしたか!?」
「もちろん避けたから大丈夫だ。罠を踏むと音がする。それから矢が飛んでくるまでには少し余裕がある」と自律分身。
「敵はどうっスか?」
「おなじみのゴブリン、コウモリ、クモ。それから新モンスターがいたぞ!」と自律分身。
「おおーっ! それ詳しくっス!」
自律分身が帰ってくる直前、危機感を感じた。
おそらく、新モンスターが強敵だったのだろう。
自律分身を消して意識のフィードバックを受ければ詳しくわかる。
だけど、このまま自律分身に語ってもらおう!




