付与のイレギュラーケースと武器成長!?
棒手裏剣を前に俺は頭をひねっている。
そこへリンがやってきた。
「ゼンジさーん。ごはんができましたー」
「……おう」
「なにか悩んでいるんですか?」
「いや、それがな――」
俺は事情を説明する。
「うぅーん。こっちの手裏剣だけ二つ付与できたんですね?」
「そうなんだ。どちらも現実素材だし、忍具作成で作ったものじゃない」
現実素材なら付与は一度しかできないはず。
その前提が違う……?
「忍具作成さんで修理したんじゃありませんか?」
「さすがに覚えていないが……そうだとしても違うはずだ。現実素材をもとにクラフトした品も、一回しか付与できない」
リンが棒手裏剣を手に取って、まじまじと見ている。
二度付与できた品だ。
「この手裏剣……少し傷がありますねー?」
「ふむ? ああ。俺は手裏剣を拾ってまた使うからな。傷があるのはそのせいだ」
投げた後、なるべく拾って再利用している。
リンは自信なさそうな顔で言う。
「古いから二つ付与できたんでしょうか?」
「使い込んだから、とか?」
リンがパンと手を打つ。
「そうです! えーと、思い出があるとか!」
思い出て!
いや、ありえなくもないのか?
「付喪神みたいな感じ……かな?」
リンが首をかしげる。
「つくもがみ? ……ええと、妖怪さんでしたか?」
お、さすがに知ってたか。
有名な怪異、妖怪の類だ。
九十九神とする場合もある。
「百年使われた道具には魂が宿ると言うよな。しかしせいぜい数か月で、そうなるかな?」
「どうなんでしょう……」
「なら、ゲームでよくある武器のレベルアップ要素か?」
「武器にレベルがあるんですか?」
「まあ、ゲームや漫画の話だから参考程度の話だ。魔物を倒して血を吸わせることで存在の格が上がるとか……そんな設定も見かけるな」
「そうなんですねー!」
ドラゴン殺しの剣とか。
いわくつきの魔剣や妖刀とか。
ファンタジーより現代奇譚ものっぽい気もするが。
「あるいはダンジョンの中だから、成長が早いのか?」
「私のダンジョンでも、お野菜がすぐに育ちます!」
「魔石や肉を肥料としてまいた場合か……」
「はい! それとおんなじじゃないでしょうか?」
リンは最初、ポーションの瓶を畑に差して、植物の栄養剤にしていた。
最近は余ったモンスターの肉などを撒いている。
「武器にも栄養……経験値が吸収されるのかもしれないな」
「かもしれませんねー」
まだ結論を出すには早いが、その可能性が高い。
特殊効果の付与には素材と武器の使いこみが影響する。
【中級忍具作成】のスキルレベルを上げれば三つ目、四つ目の付与ができるはずだ。
その時までに武器側の条件も揃えておかないとな!
クラフトは奥が深い!
まあ、まだ三つ目の付与は先の話だ。
せっかく作ってくれた飯が冷めるといけない。
「とりあえず置いておいて、飯にしよう!」
「はい! トウコちゃんも待ってます!」
腹ごしらえをしたら、ダンジョン攻略に出るつもりだ。
鍛えた武器で試し斬りだ!




