刀を目利きしてもらおう!
御庭にコガさんの件を報告する。
もちろん問題なし、という内容だ。
なお、リンには席を外してもらった。
「――というわけで、スキルの暴発によるもので、彼女に悪意はなかった。スキルを制御できるように練習してもらう必要はありそうだけど」
御庭は俺の報告に神妙にうなずく。
「うん。よくわかったよ。気の重い話を任せてしまってすまない。でもクロウ君なら何とかしてくれると信じていたよ!」
「あんな連絡されたら、関わらないわけにもいかないだろ」
「はは。悪いと思っているんだよ。だけど、実際になんとかしてくれた。さすがだね!」
御庭はさわやかな笑みを浮かべる。
いいように踊らされているような気もするが、悪い気はしない。
人使いがうまいんだよなぁ……。
さて、報告終わり。
細かい話はあとで報告書に書けばいい。
俺は悪性ダンジョンで強化した刀を机に置く。
御庭の反応を見たい。
「ま、いいさ。それよりこれを見てくれ!」
「なんだい? 支給品の刀のようだけど……おや?」
御庭はサングラスをずらして、刀をまじまじと見る。
「気づいたか? 【忍具作成】で強化したものなんだが……」
「普通の物品ではないね。詳しくはわからないけど、なにかの力を感じるよ」
御庭は弱い超能力――感知能力を持っている。
その感知能力を生かした異能もあるが、それでは詳細がわからない。
知っていることにしか効果は発揮されないからだ。
俺はクナイを置く。
「じゃあこっちはどうだ?」
「これも【忍具作成】で作った品なんだね? それはクロウ君の反応からわかる。だけど、特別なものは感じられないな。うーん。なにかあるとわかったうえで、よくよく気をつければわかる程度だね」
御庭は俺の表情や、話の流れから情報を推察している。
このクナイは投げナイフをもとに作成したものだ。
強度強化などの付与もしていない、普通のクラフト品だ。
「これは【忍具作成】で作った普通のクナイだ。刀には特殊効果が付与してある」
「その特殊効果が、クナイに比べて強く感じられるのかもしれないね」
「なら、ここでも効果を発揮するのか?」
「どうだろう。危険な効果ではないようだし、僕が試してもいいかな?」
御庭が笑顔で俺に尋ねる。
横でナギさんが眉をあげる。
だが、なにも言わない。
「ああ。危険な効果はつけていないから、安心して試してくれ」
御庭が刀を手に取る。
「抜いてみてもいいかな?」
「ああ」
御庭が抜刀して、刀身を眺める。
その仕草はかなり様になっている。
「とくに何も感じないね。僕の体にも、精神にも影響は出ていないと断言できる」
「つまり効果なしってことだな」
御庭の異能は自分自身に作用する。
バフ効果が現れたなら、それを感じ取れるはずだ。
つまり付与したスキル効果は無効化されている。
御庭が刀の一部を指差す。
「ここ、折れたのを補修したのかな? 実戦で使ったにしては傷んでいないね。まるで研ぎたてのようだ」
お? そんなことわかるのか?
俺には継ぎ目なんて見えない。
うむ……御庭の能力はわかりにくいな。
「ダンジョンを出る直前に修理したからな。その時にボスの魔石で強化して【士気高揚】というスキル効果をつけたんだ」
「へえ? クロウ君のスキルはそんなこともできるんだね!」
「いや、初めて試したんだ。これまでボスの魔石を材料にしたことがなくてな」
これは単純に機会がなかっただけである。
俺のダンジョンで手に入れたボスの魔石はモノリスに入れて、素材に引き換えてしまう。
だから、クラフトに使っていたのは余った魔石だった。
リンのダンジョンでは、ボスを倒すと肉や素材になる。
普通のモンスターと同じなら、魔石が落ちる可能性もあるはずだ。
もしボスの魔石が手に入ったら特殊効果の付与を試してみたいと思う。
忍具作成君の新たな活躍の場が開かれたな!
期待しているぜ!
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