血は飲んでも呑まれるな!?
コボルドの群れを倒し、俺たちは一息ついている。
「ふう。ちょっと数が多かったな。次の敵が来る前に少し休憩しようか」
俺の言葉にオカダたちがうなずく。
自律分身が俺に刀を差し出しながら言う。
「じゃあ、刀を修理してくれ。ちょっと刃こぼれしたんだ」
「おう」
刀を受け取る。
ふむ。少し傷んでいる。
いつもなら、武器で攻撃を受けたりしない。
受けるとしたら、どうしても避けられないときだけだ。
しかし今回は何度も敵の武器とかち合う状況があった。
乱戦だったからだ。
ま、壊れた装備は直せばいい。
ケガをしなきゃいいのだ。
今のところ自律分身はほとんど無傷である。
俺はもちろんケガひとつない。
「オカダ。ここまでの戦いはどうだ?」
「楽しんでるぜー! やっぱ外の空気は違うよな!」
「ちょっと硫黄臭いけどな。余力はあるか?」
「ああ。来たときよりいいぞ! 血も飲んだしハッピーだぜ!」
「そういえばオカダはあんまり血を飲んでないよな?」
「まあな。ケガを直したり、変身を使ったりすりゃ血が欲しくなる。まだ使ってねーしな」
「へえ。そういうもんか」
オカダはここまで、格闘技だけで敵を倒している。
省エネ体質だ。
コガさんが言う。
「私はずっと喉が渇いて……ちょっと辛いです。これ、力のせいなんですか?」
コガさんが、血をまとわせた腕を見せながらオカダに聞く。
「そりゃそうだろ? 血を使ったらその分、補充しなきゃなー」
「そんな先入れ先出しみたいなシステムなのかよ!?」
トコロテンか!?
自律分身が言う。
「魔力は使わないのか?」
「それも使ってんじゃねーの? 知らんけど」
「知らんのかい!」
「魔力……はわかりませんが、力を使うと血が欲しくなりますね」
コガさんも魔力について、よくわからないようだ。
「ゼンゾウは魔力を使ってるんだろ? どんな感じよ?」
「うーん。俺も正直、よくわからないんだよ。使いすぎると具合が悪くなってくるから、魔力というリソースがあることは確かだ」
俺も魔力は体感しにくい。
【魔力知覚】がないから、なんとなくで使っている。
「そーいうもんか」
「けっこう雑なもんだぞ。一応、魔力を使うイメージで力を振り絞ると術が強くなったりもする」
魔力を集めるイメージや、激しく燃やすイメージ。
スキルは常に同じ効果ではなく、多少のブレがある。
無理して使うと消費コストが増えたり、制御しきれずにダメージを受けたりする。
危険だし、あまり多用するものではないと思っている。
二人に細かく伝えることではないだろう。
「魔力だとかイメージだとか、俺はあんまり考えたことねーなー」
俺はそんなことばっかり考えてる気がする。
気にならない人のほうが多いのか……。
コガさんがオカダに聞く。
「オカダさん。血はたくさん飲んでもいいんですよね?」
「飲みすぎてハイになっちゃダメだぜー? ほどほどに楽しむんだ。酒と同じだな!」
血は飲んでも呑まれるな、ということだな。
俺は修理の終わった刀を自律分身に返しながら言う。
「コガさんは血に酔っているように見るから、心配だ」
「あ、あはは……自覚はあります。でも、飲んでも飲んでも飲み足りなくて……」
オカダが言う。
「そりゃ、飲んだ先から使ってるからだろ?」
「だって、そうしなきゃ敵を倒せません!」
コガさんは素手でなぐりつけたり、武器を使ったりできない。
攻撃全てが血の力になっている。
魔法使いみたいなものか。
魔力が切れたらできることが減ってしまう。
そういうことなら、リンのように立ち回ればいいのだ。
俺はコガさんに言う。
「力の使いどころを考えてみたらどうだ? 残っている力を計算しながら使うんだ」
「計算……うーん」
コガさんは眉を寄せて考え込んでしまう。
あまりしっくりいかない模様。
「まあ慣れよ、慣れ! やってりゃわかるって!」
「そうですよね? やってみます!」
オカダは細かいことは気にしない派のようである。
そしてコガさんもそっち派らしい!
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