戦うべき日はやってくる!? 逃げちゃダメだ!
コガさんは【庇護】というスキルを持っている。
だが使い方はわからないらしい。
「そういえば【庇護】のスキルレベルはいくつなんだ?」
「えーと。四段階です。あとは【吸血】が三段階で……」
ダンジョン外でも使える強さである。
事前情報通りだ。
「コガちゃん。レベルはいくつだ?」
「十ですね」
レベル十!?
今日が初のダンジョン戦のはずなんだが。
「そんなにあるのか!? 戦ったことないんだよな?」
「え? おかしいですか?」
オカダが言う。
「あ、それな。俺も最初からそのくらいあったぞ」
「吸血鬼になると、レベルも上がるのか?」
オカダは肩をすくめる。
「知らんけど、そうじゃねーの?」
「ふーむ。そうなのか」
なんかズルくね?
「なりそこないの連中はレベルが足りなかったのかもな」
「ああ。そういうことか」
選ばれた者だけが吸血鬼に変われる。
そんなことをオカダは店で言っていたっけ。
赤いクスリを摂取することで、吸血鬼になるための下地を作る。
いわばレベル上げ。体づくり。
準備が整っていれば、吸血鬼になれる。
足りなければ知性のない吸血鬼になってしまう。
「てことはステータスもあるんだな。戦えそうか?」
「いえ……。戦う力なんてありません……」
彼女は武器を持っていない。
訓練したが、まともに扱えなかったそうだ。
公儀隠密で戦闘の訓練は受けたと聞いている。
だから完全な素人ではない。
しかし、心構えが足りないようだ。
自信がなさすぎる。積極性とでもいうか……。
これはある程度、しかたがないことだ。
当初の予定ではもっと訓練してから実戦へ出す予定だった。
血液パック事件のためにデビュー戦を早めたのだ。
今回のダンジョンは難易度が低い。
ダンジョン領域に湧くモンスターの強さや数から、予想できていた。
つまり練習にはうってつけの場所である。
じっくり時間をかけて慣らしていけばいい。
オカダが言う。
「戦い方なんて、考えなくたっていいだろ。テキトーにぶん殴ればいい!」
「そういうのは……」
コガさんの声は小さくなり、最後はほとんど聞こえない。
うーむ。
性格的に戦いは向いていなそうだ。
戦いは勢いみたいな部分もあるから、やってみるしかない。
そうしている間に煙の向こうからコボルドがやってきた。
俺たちを見つけ、吠え声を上げて走ってくる。
「ワゥーッ!」
オカダがコガさんの背中を叩く。
「じゃあコガちゃん! ちゃちゃっとやっちゃってー」
「ええっ……私ですか? むりむりむりむり!」
コガさんは頭をいやいやと振っている。
俺はオカダを見る。
「大丈夫なのか?」
「まあ見とけって! ゼンゾウは心配しすぎじゃねーか?」
いや……。普通心配するだろ。
吸血鬼とはいえ、初戦だからな。
初めからうまく戦えるとは思えない。
フォローできるように準備しておこう。
「ガウォッ!」
コボルトが棍棒を振り下ろす。
コガさんはからくもそれをかわす。
お、いいぞ!
しかし――
「ひ、ひええっ!」
コガさんは背を向けて逃げだしてしまった。
コボルドが彼女を追う。
オカダが叫ぶ。
「おーい! 逃げてどうすんだ!」
むう……。
ただ見ているのはじれったい!
彼女はなんとか逃げ続けている。
このままで、戦いになるのか?
やはり助けに入ったほうがいいんじゃないか?
目的あってのことだけど、どうにも……。
放っておくのは悪趣味に思えるんだよなぁ。
過保護すぎるだろうか。
俺はいつでも助けられるように術の準備をする。
本当にピンチになったら、なんとかしてみせよう!
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