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社畜辞めました! 忍者始めました! 努力が報われるダンジョンを攻略して充実スローライフを目指します!~ダンジョンのある新しい生活!~  作者: 3104
五章 本業は公儀隠密で!

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吸血鬼は特別で! 職業と種族と特性と!

 周辺は火山地帯のような地形だ。

 といっても溶岩が流れているわけじゃない。

 岩がごろごろしていて、煙が吹き上がっているくらいだ。


 残念ながら水場は見当たらない。

 水は持ってきているが、限りがあるので大切に使おう。


 日は暮れかけている。

 暑くも寒くもない。


 もくもくと立ち上る煙のせいで視界が悪い。

 だがそのおかげか、今のところモンスターとは出会っていない。



 オカダは肩をぐるぐる回してウォーミングアップ中。

 コガさんは残念そうにうなだれている。


「ああっ……太陽が出てますね……」

「まー。うす暗いしアタリの部類だろー? オーケーだぜ!」


 そういうオカダもフードを目深にかぶっている。

 これくらいの日差しでも吸血鬼にとっては(こた)えるのかな?



 今のうちにオカダたちと話しておきたい。

 俺は二人に歩み寄る。


「二人とも。日が出ていると戦いにくいか?」

「そりゃーな。力が出にくいし、治癒力も落ちる」


 日光が当たって力がでなーい……って感じになるのか?


「スキルが弱まるってことだよな?」

「そうそう! ダンジョンの外で弱くなるのと似てる。日の光を浴びてるとスキルがさらに弱まるんだよ」


「俺の場合はダンジョンの外だとスキルが二段階落ちる。それは同じか?」

「ああ。んで、昼だとさらに一段階落ちる。つまり三段階落ちるっつーこと!」


「お、ちゃんと陽光が弱点なんだな?」

「昼っていっても地下みたいな日のささない場所ならオーケーだぜ。服で遮ったり、日焼け止めを塗っても意味ねーよ」


「意味はあります……。お、お肌は守れるんですっ!」


「日光で受けるダメージは人それぞれなんだっけ? どういうことなんだ?」

「さあ? 俺は【日光耐性】ってスキルがあるから、他の奴よりマシだぞ」


 コガさんが驚いた声を出す。


「えっ……? そんなのあるんですか!?」

「まず【耐性】ってスキルを取って……そしたら出てくるぞ」


 【耐性】は基礎スキルのようだ。

 それを取ると、関連スキルが取れるらしい。


 トウコの【苦痛耐性】や【火耐性】は基礎スキルの下にないけど……。

 スキルの系統にも違いがあるのか?



 コガさんが空中に指を走らせる。


「うーん……【耐性】、ないですね……」

「向き不向きがあるらしーぜ? 俺は魔法とか使えないしなー」


 オカダは回復や耐性に適性があるらしい。


「コガさん。魔法は使えそうかな?」

「いえ……ありません。【身体強化】は持っています」


「そいつは俺も持ってる。力が強くなって、動きが速くなるヤツ!」


 ふうむ。俺が持っているスキルとは違うようだ。

 俺のはステータスごとに分かれている。

 【身体強化・敏捷力】【身体強化・筋力】【身体強化・体力】である。


 オカダたちのは【身体強化】全般のステータスが上がるのかな?



 コガさんがつぶやく。


「体がヘンになっちゃったらいやだなあ……」


 オカダが軽く笑う。


「はは。ヘンって、変身のことか? 【身体一時強化】ってのが、それだ」

「あ、ごめんなさい。ヘンって、そういうことじゃなくて……」


 一時強化か。

 オカダの場合、ヘビー級ボクサーみたいな体形になる。


 爪とか牙が伸びる奴もいたな。

 車で轢いた路上の吸血鬼も、このスキルかな?


「なるほど変身か。体がデカくなるのがそうなんだな?」

「ああ。あれをやると喉が渇くから、あんまり使いたくねーけど」


「うぅ……ぜったい、取らないようにします」

「スキルはたまに勝手につく。でも欲しいスキルが選ばれるみたいだから、要らないもんはつかないだろ。たぶんなー」


 多分かい!


 コガさんは首を振っている。


「やだやだやだ……ヘンな体にはなりたくない……」


 (へん)て!

 ちょっと失礼である。


 でもマッチョになったコガさんは見たくないかもしれん。



「俺たちダンジョン持ちの場合は職業がスキルに関係してそうなんだけど、オカダたちの職業はどうなってるんだ?」


「俺は吸血鬼と中級吸血鬼だな」

「あ、あたしは吸血鬼みたいです……ほんとに吸血鬼になっちゃってるんですね……うう。ショックです」


「コガさんはステータスを見るの初めてなんだったな」

「さっきはじめて見ました……。なんだか人間じゃなくなっちゃったみたいで、イヤですね……」


 俺がサタケさんを治療している間にチェックしたようだ。

 そりゃあ人間じゃないと明確に記されていたらいい気分はしないだろうな。


「でも、職業が吸血鬼なだけだろ?」

「いや、それがな。俺たちは体そのものが吸血鬼になってるらしーんだわ」


 体が吸血鬼になっている?

 どういうことだ?


「ステータスに種族の欄があるとか?」

「いやー。そんな欄はねーな。カミヤが言うには、長い時間をかけて体を作り変えてるとかなんとか。知らんけど!」


 知らんのかい!


 噛みつき魔の事件で、被害者は吸血鬼と何度か接触していた。

 少しずつ赤いクスリを飲まされ、渡されていたのだ。


「体を変えるのは例のウェルカムドリンクとか、赤いカプセルでか?」

「そうらしいけど、詳しいところは知らねーんだ」


 忍者や魔法使いになっても、それは職業上のこと。

 人間はやめていない。

 そしてステータスに種族欄などない。

 逆に言えば人間とも吸血鬼とも明記されていない。


 トウコも種族がゾンビになったわけじゃない。

 体が腐ったりしないし、心臓だって動いている。

 せいぜい、食生活が変わったくらいだ。

 腐ってるのは趣味嗜好だけである!



 しかし吸血鬼は肉体が人間とは違っているらしい。

 そうじゃなきゃ、血液を飲んで栄養になったりしないか。


 ということは、ファンタジーな存在に近いのか?

 しかし、その割には世界に存在を許されているのが不思議だ。

 なぜ世界から追放(パージ)されないんだろうか?


 ふうむ……。

 やはり吸血鬼は特殊な存在なのかな?


 追放されないとはいえ、日の光や吸血衝動のせいで普通の暮らしはできない。

 かわいそうに思えてきた。



 コガさんが悲し気につぶやく。


「そっか私……もう人間じゃないのかあ……なんだか、居場所がなくなっちゃったみたいで落ち着きませんね」


 コガさんはしょんぼりと小さな肩を落とす。


 居場所か。

 俺も仕事を辞めたとき、居場所がなくなったと感じた。

 ダンジョンが現れて、リンとトウコと仲を深めた。

 そして公儀隠密。

 今の俺には居場所がある。


 人は、ひとりでは生きられない。

 生きにくい。

 吸血鬼だって、そうだろう。



 俺は言う。


「居場所ならある! 俺たち公儀隠密がそうだ。ここがコガさんの新しい家になる。そうなればいいと、俺は思っている!」

「そうだぜコガちゃん! 吸血鬼オーケーの場所なんて他にないんだ。仲良くやってこうぜ!」


「は、はい! お、おねがいします!」


 そういうとコガさんは深々と頭を下げた。


 いいね。これならうまくいきそうだ。

 きっとうまくいく! 俺はそう信じている!

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[一言] そして妖怪屋敷と化す公儀隠密
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