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社畜辞めました! 忍者始めました! 努力が報われるダンジョンを攻略して充実スローライフを目指します!~ダンジョンのある新しい生活!~  作者: 3104
二章 ストーカーは隣人で!

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六階層攻略! 火消男現る!?

 さて、六階層へ到着した。


 迷宮階層だ。

 軽く偵察してあるとはいえ、新階層だ。

 慎重に行く。


 出発前に時間調整してから来ている。

 今回のダンジョン攻略中にもう一度、自律分身の発動を試したいからだ。


 前回出してから6時間以上経っている。

 クールダウン時間を試す意味では今、使ってしまいたい。


 ――でも使わない。


 まずは、じっくり隠れながら進むつもりだからだ。


 自律分身はスキルが使えない。

 つまり【隠密】がない。


 だから、分身と一緒に行動するとかえって目立ってしまう。

 頭数が増えることが有利に働くとは限らないのだ。


 今回は【隠密】が優先だ。【自律分身の術】は、戦闘が始まる直前に試すことにする。


「よし、到着。階段付近に敵影なし――」


 石造りの通路は、松明で照らされていて明るい。


 この階層の問題点、その1。

 ――明るさだ。


「この明るいのが問題だ。そして光源は松明……」


 壁に松明を差し込む台がある。

 そこに、燃え上がった木の棒――松明(たいまつ)が差し込んである。


 見る限りは新品の松明で、燃え尽きる様子はない。


 俺は、松明を手でつかんで、台から取り外す。

 特に抵抗なく取り外すことができた。


 外しただけでは、火は消えない。

 塵になって消えることはなく、持ち運べるようだ。


「この松明……三階層で欲しかったぜ!」


 三階層は暗さで苦労したんだ。

 そこにこそ欲しかったこの仕掛け!


 今の俺には【暗視】があるから、明かりは要らない。

 むしろ隠れ潜む邪魔をする、今となってはいらないモノだ。


 暗がりで暗躍したいのだ。

 明るさが【隠密】の効果を下げてしまう。



「ということで、ていっ」


 で、対策はシンプル。

 火を消してしまえばいいのだ!


 松明を手に取って振る。

 ――だが、火は消えない。


 足元に投げ捨てる。

 ――だが、火は消えない。


 水を振りかける。

 ――火が消え、周囲が暗くなる。


「――これでよし。火を消すのも一苦労だな。ゲームならどういうわけかすぐ消せるんだけど、どうやってんだろうね」


 この松明には松脂(まつやに)が塗ってある。

 ちょっと振ったくらいでは消えない。


 振ったら消えるんじゃ、風の日には照明として使えない。


 当然だが、水をかければ消える。

 でも……水は有限だ。



「というわけで! 困ったときの忍具作成!」


 火を消すための道具を作る!


 前回の偵察したとき、既に方策は考えてある。


 【忍具作成】で作るのは――火消し(つぼ)だ。

 キャンプやバーベキューのとき炭を消す壺だ。


 ふたを閉めると空気が遮断されて、火が消えるしくみ。

 空気がなければ燃焼は止まる。


 水をかけなくても、松明の火を消せるってワケだ。


 材料は釘と、ここに来るまでに手に入れた魔石だ。

 ちなみにホームセンターなどでも売っている。


 俺の場合は作ってしまえばいい。


 ――【忍具作成】で火消し壺を作成!


 出来上がった火消し壺を片手に下げる。

 シンプルな金属製の壺だ。フタがぱかっと開く。


 片手に下げて持ち歩くつもりだ。

 腰袋のように身に着けることも考えたが……熱いからね。


 戦闘になれば床に置けばいい。



「……前に来た時、松明補充係を見つけてやろうと思ったが……松明回収係なら見つかったな。――俺だ!」


 歩きながら、壁の松明をひとつずつ消して歩く。

 なんという地味な作業。


 だがこの作業のおかげで、通り過ぎた後には暗闇が広がっている。

 有利に戦える状況を作っておくのも大切だ。



「お、ゴブリンがいる。数は4匹。こちらには気づいていない……」


 俺は暗闇の中で足を止める。

 当然、前方の通路では松明が赤々と燃えている。


 こちらは暗く、ゴブリン側は明るい。


 ゴブリンも夜目が利くが、向こうからこちらは見えないだろう。

 明るい場所から暗い場所は見えにくくなる。


 俺は暗がりの中、壁沿いに身を寄せて姿勢を低くする。

 そのまま、ゴブリンを観察する。


 先頭のゴブリンは武器を持たず、軽装だ。

 粗末な革のベストを身にまとっている。

 きょろきょろと落ち着きなく、視線をさまよわせている。


 その後ろにいるゴブリンはナイフを腰に下げている。

 ぼんやりと、前のゴブリンについて歩いている。


 三匹目のゴブリンは盾を持っている。

 木製の四角形の盾だ。

 といっても作りはお粗末。

 まるで板切れを何枚かクギで打ち付けただけのようだ。


 その後ろにいるのはローブで顔を隠したゴブリンだ。

 節くれだった杖を持っている。

 盾持ちのゴブリンに守られるような位置にいる。



 このゴブリン達……この見た目、装備。

 ――まるで役割があるみたいだ。


 俺が想像したのはそれぞれ、斥候(せっこう)、ナイフ使い、盾持ち、魔法使いといった役割だ。

 職業とも言える。


 俺が忍者であるように、このゴブリンも職業を持っているのかもしれない。



 先頭のゴブリン――斥候ゴブリンがこちらに注目している。

 暗がりにいる俺が見えるのか、何か音でも聞こえたのか。


 他のゴブリンはこちらに気づいていないようだ。

 足を止めた斥候に不満げな声をあげている。


 ……この斥候ゴブリンだけが俺に気づいている。


 もしかすると感覚が鋭いか、何かの探知スキルを持っているのか?


 目をすぼめたり、耳をそばだてたり、鼻をひくつかせたりしている。

 そして、俺の潜むあたりに顔を向ける。


 ――む、これはマズイか。


「ギギィっ! ギギャァ!」


 斥候ゴブリンが、俺を指さして叫ぶ。

 他のゴブリン達も身構えた。


 もう、戦闘は避けられない!


 だが、これでわかった。

 やはり職業か、役割を持っている。

 斥候タイプのゴブリンが探知能力を持っている。


「見つかったんならしょうがないな! ――分身の術! 自律分身の術!」


 俺は分身を生み出し、ナタを投げ渡す。

 こちらは普通の分身だ。


 【自律分身の術】も――現れた!


「――よう、俺。やっぱり再使用可能(クールダウン)時間は6時間前後だったな!」


 俺は用意しておいた装備を自律分身に渡す。


「んじゃ、いくぜ! 戦闘開始だ!」


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[一言] やった、パーティープレイだ(//∇//)
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