竪穴をくだろう!
横穴の次は竪穴だ。
道とは呼べない、ただの垂直の岩の切れ目である。
「うえぇ? こんなトコ進むんスか?」
「空気の流れがある。どこかに続いてそうではあるな」
「だ、大丈夫でしょうか?」
両手と両足を突っ張れば、なんとか上り下りできそうな幅だ。
所々に足場にできそうなでっぱりが見える。
穴の下部は暗くなっていて見えない。
引っかからないように、刀を収納にしまっておく。
ヘルメットは邪魔だが、脱ぐわけにもいかない。
「とりあえず俺が先に行く。進めそうなら戻ってくるから、ちょっと待っていてくれ」
俺一人ならすぐに行き来できる。
落ちたりする心配もない。
リンが心配そうに言う。
「はい。気をつけてくださいね!」
「いてらー」
「おう」
俺はひらひらと手を振っているトウコに手をあげて応え、穴を降り始めた。
壁を伝ってするすると降りていく。
足場の強度も問題なさそうだ。
幅はほぼ同じ。
急に狭くなったり広くなったりはしない。
少し降りたところで、足元に何もなくなる。
壁に張り付いているので落下する心配はない。
「ふーむ。ここはどこかの通路の天井だな? 飛び降りるには少し高いな……」
首に巻いたヘッドライトの明かりで床が見える。
俺なら飛び降りても着地できるだろう。
リンやトウコはどうだろうな。
このあたりからロープをたらして、伝って進むほうが安全だろう。
さいわい、壁はごつごつしているので、ロープを結び付けられそうだ。
いや……この高さなら【入れ替えの術】で届く。
こっちのほうが早いし、安全だな!
「その前に……下を確認しよう!」
戻る場所がわからなくならないように、岩の裂け目に蓄光塗料で目印をつける。
これでよし!
天井から壁を伝って床へと降りる。
降りた先で左右を見回す。
ふむ。
どことなく見覚えのある通路だ。
岩でできた洞窟なんて、どこも同じようなものだが、見なれればわかるものだ。
少し周辺を歩いてみる。
やはりそうだ。間違いない。
ここは前に通ったことがある。
十五階層へ続く階段の手前の、少し通路が広くなっている場所だ。
へえ。ここへ出るのか。
前に来たときは全く気付かなかった。
天井の穴からルートが広がっているなんて、気づくわけないよなぁ……。
さて、帰り道はわかった。
二人を迎えに行く。
リンとトウコも問題なく降りることができた。
これで今日の探索は終了!
俺たちは無事にダンジョンを脱出した。
「久しぶりに俺のダンジョンを攻略したけど、どうだった?」
「足をひっぱっちゃったかもしれません……でも、楽しかったです!」
手なら引いてエスコートしたけど、足をひっぱったなんて思っていない。
「怖くていやだったんじゃないかと思ったけど、楽しめたならよかった!」
「はいっ!」
「トウコはどうだ?」
「激流下りはいいっスねー! もう一周行きたいっス!」
「あー。そのうち、置いてきたボートを回収しなきゃな……」
クモが湧く前なら、水路の壁を伝っていける。
あるいは天井の穴から逆走してもいい。
トウコが続ける。
「暗いし狭いけど、挟まれるのは悪くないっス!」
「狭いところに挟まるのは怖いなー」
トウコが言ってるのは洞窟に挟まる話じゃないと思うけどな。
「腰がいかれそうだから、飛び乗るのは勘弁な!」
「美女二人を乗せたら腰がどうにかなるのはしゃーないっス!」
そういう意味じゃないし、しょうがなくないわ!
探索を終え、ダンジョンを出る。
明るく清潔なアパートの部屋に戻るとほっとするね。
水路を攻略して、岩を登ったり、下ったり。
普通だったら危険で辛い道のりだ。
それでも楽しかった。
ダンジョン攻略は趣味なのだ。
楽しくなきゃ、続けられない。
こうしていつまでも楽しい探索を続けていきたいと思う!
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