横穴を進もう!
岩を登り終え、横穴を進んでいる俺たち。
曲がりくねっているが、幅は広く、高さも充分。
平坦で歩きやすい岩の通路だ。
うーん。普通の通路っていいね!
リンが前方を指差す。
通路が曲がっているので、先は見えない。
「あっ! 前方に敵さんがいますー」
トウコが耳に手を当てて、顔をしかめて舌を出す。
「うげーっ! たくさんいるっス!」
「さすがにこれだけ騒がしいと、俺にも聞こえる。蛾の羽音だな」
一匹一匹の羽音は小さい。
だが、大量に集まると話は違う。
ワサワサした羽音が聞こえてくる。
うーん。この角は曲がりたくないなぁ……。
蛾はたいした脅威ではないけど、見た目がね。
リンが一歩前に出る。
「私にまかせてくださーい!」
「おう。たのむ」
リンが突き出した手の中に炎がふくれあがる。
「では……ファイアボールっ!」
手のひらから炎が噴き出す。
ファイアボールとは言うが、火球ではなく火炎放射だ。
曲がる通路の先へと炎が伸びていく。
リンが調整しているおかげか、後方の俺たちに熱は及ばない。
「おーっ! 一網打尽っスね!」
「ふーっ! だいたい倒せましたー」
「じゃ、残りは俺が。忍法――水噴射!」
リンの火魔法でほとんどの敵は燃え尽きているだろうが……。
温度が上がりすぎたから、ちょっと涼しくしたかったり。
突き出した両手から水流が噴き出す。
水圧で後退しないよう、足に力をこめる。
水が通路を洗い流していく。
曲がりくねっていようと、流れを変えて見えない位置へも届く。
ついでに落ちた魔石をある程度集めておこう。
水流を止める。
羽音はもうほとんどない。
トウコが銃を構えて突っ込んでいく。
「んじゃ残りはあたしが! うらうらっ!」
多少残った蛾もこれで倒した。
落ちた魔石を分身に拾い集めさせる。
「おー。魔石が大量だな!」
「たくさんいましたからー」
見なくてよかった!
大量の蛾とか、ちょっとイヤである。
空気中に漂っていた鱗粉も炎と水で吹き流されただろう。
耐久力が低くて数が多いだけの蛾は、俺たちにとってカモみたいなもんだ。
リンが嬉しそうに笑う。
「あっ! 今のでレベルが上がりましたー!」
「おお。おめでとう!」
トウコは分身が集めた魔石をじゃらじゃらと袋に入れていく。
「経験値も魔石もザクザクっス!」
「まとまっているから倒しやすいな!」
刀で一匹ずつ斬っていたらかなり面倒な相手だが、忍法なら相性がいい。
やはり遠距離攻撃はいいね!
「お。足元に気をつけろ。ここで通路は終わりみたいだ」
「今度は床がないっス!」
「た、高いですねー」
横方向に伸びていた通路はここで終わりのようだ。
竪穴だ。
今度は下方向に続いている。
両手を突っ張れば届くくらいの狭さなので、足場を選べば普通に降りられそうだな!




