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社畜辞めました! 忍者始めました! 努力が報われるダンジョンを攻略して充実スローライフを目指します!~ダンジョンのある新しい生活!~  作者: 3104
五章 本業は公儀隠密で!

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していない約束に対するご褒美!?

 トウコはすでに俺たちよりもかなり先行している。

 飛ばしてるね!


 その上で、邪魔な蛾を次々と撃ち落としている。

 元気だね!


 そのおかげで俺たちは登ることに専念できる。


「早く来ないとあたしが優勝っスよー!」

「いや、競争なんてしてないから!」


 トウコは俺とリンよりも二段上にいる。

 普通ならもう追いつけないほどの差だ。


 トウコは高い位置から俺たちを見下ろし、びしっと指を突きつける。

 ドヤ顔である。


「へへー! 競争から逃げても勝ち負けはつくんスよ!」

「急に人生の真理みたいなことを言うな!」


 戦わず、争わず、競争に参加しないことは自由だ。

 だが、走ったもの、戦ったものとの差は広がっていく。

 なにもしなければ結果は出ない。

 そして、努力は報われる。


 それは当然のことである。


 普通なら追いつけない差だと言ったが、本気を出せば巻き返せる。


 たとえば、調子に乗っているトウコに【入れ替えの術】をかけるとか。

 そのまま【壁走りの術】や【空中歩行の術】を駆使すればぶっちぎりで勝てる。


 でもそんなことはしない。

 大人げないからね!

 それにトウコが泣いて悔しがる姿を見たいとは思わない。



 トウコが大きな岩を乗り越えて、姿を消す。

 すぐに岩から顔だけをひょこっと出し、元気に手を振る。


「出口発見っ! ここから横に進めそうっス!」


 俺は数段下から答える。


「いいぞ! ちゃんと進めるルートがあってよかった!」


 登ってみたけど行き止まりでしたってパターンもあり得たし。

 見落としたかもしれない横道を探しながら降ることにならなくてよかった。



 リンは息があがってしまっている。


「はぁはぁ……。もう頂上ですかー?」

「あと一段だ。がんばれ!」


 俺もかなり疲れた。


 振り返ってみても、下は暗くて見えない。

 体感ではかなりの距離を登ってきた。

 船で水路をくだった分より登ってる気がする。



 最後の一段を登る。


「ふう……到着!」

「はぁ……ありがとうございますー」


 リンをひっぱりあげ、そのまま後ろに寝そべる。

 すぐ横にリンが座り込む。


 さすがに疲れた!

 このまま寝てしまいたいね!



 だがそうもいくまい。


「トウコ……状況はどうだ?」

「蛾がいたけど倒しといたっス! 安全確保っー!」


「よし。ナイスだ!」

「へへー! もっと褒めてもいいっスよ!」


「はいはい。えらいえらい!」


 俺は体を起こす。

 ここは少し広い空間になっている。

 壁面に横穴がある。どうやら通路があるようだ。



「少し休憩したら進もうか」

「はーい……」


 小休止だ。

 食事でも取りたいところだが、蛾が来ると面倒だ。


 兵糧丸と体力回復丸を水で流し込む。


 トウコが丸薬で頬をふくらませながら言う。


「んー。リン姉の料理に慣れると味気ないっスねー」

「一度に口に入れすぎだ。リスかよ! ゆっくり噛めばそれなりにうまいぞ!」


 たくさん口に入れたらボソボソするのは当たり前だ。

 ま、これは手ごろな栄養補給であって、食事とは言えない。


「もっとお菓子っぽい味がいいっス!」

「味より効果重視だからな、これは」


 原料の割合である。

 はちみつや砂糖を増やせば味は良くなる。


 これは薬草多め。その分、わずかに効果が高い。

 味はそれなりである。


「でも、おかげで元気になってきましたー!」

「即効性だからな! 体力回復丸もたまには役に立つ!」


 栄養ドリンクやサプリとは違って、不思議効果で体力が回復する。

 便利なものだ。


 本格的な食事なら階段やボス部屋の安全地帯でとる。

 今日は長く潜らないし、拠点に戻ればいいだろう。



「さて、疲れも取れた。出発しようか」

「はーい」


 立ち上がった俺にトウコがニヤニヤ笑いを向けてくる。


「なんだ?」

「さっきの崖のぼり競争はあたしの勝ちだったっスよね!」


「勝負は断ると言っただろ――」


 トウコは俺の言葉にかぶせるように話を進める。


「というわけで! 約束どーり! おねがいを聞いてもらうっス!」

「だから約束してないっつーの!」


「店長にしてもらうのは……おんぶっス! 店長があたしをおんぶする!」

「お? 思ったよりまともな案だな。それくらいならいいぞ」


 疲れも取れたし!

 小柄なトウコを背負うくらい余裕である。


 トウコがにやっと口元をゆるめる。


「そしてさらにっ! あたしがリン姉をおんぶっ! 二段おんぶっス!」

「いやいや……それはさすがに無理だろ」


 俺はパワー派じゃない。

 力はステータス補正がないので、一般人と大して変わらない。



 トウコが飛びついてくる。


「とうっ! 問答無用(もんどーむよー)っス!」

「うおっ!? 雑なジャンプはよせっ!」


 重いっていうか、バランス考えて!?

 腰がやられるわ!


 トウコが腕を振ってリンを誘う。


「さあさあ! リン姉カモンっス!」

「え……うん」


 リンがおずおずとトウコにおぶさる。

 いや、断って!?


 いくら鍛えているからと言って、人間二人をおぶるのは無理だぞ!?


「うぐぐ……重い」


 女性をおぶるときに言ってはいけないワードが出てしまう。

 しかし二人まとめておぶる場合はやむをえない!



 トウコが耳元でゆるんだ声を出す。


「うへへ……やわらかーっ」


 本音が出ている!

 いや、最初から隠していない!


 俺の背中にもトウコの体温と弾力を感じるのだが……。

 倒れずに保つのが精いっぱいで、それどころではない。



 リンが心配そうな声をあげる。


「あの……大丈夫ですか? 重いですよね?」

「うぐぐ……」


 そう聞かれても答えにくい!


 限界っ!

 俺はゆっくりと前に倒れ込む。


 冷たい岩の上に倒れ込むとひんやりと気持ちがいい。


「まー。こんなもんっスかね!」

「はやくどいてくれ……」

「あっ! どきまーす!」


 トウコはご満悦のようだ。

 しかし、なにをやっているんだ俺たちは!

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― 新着の感想 ―
忍者飯だから効率性重視なのはしょうがない。 現代人は、美味しい食べ物になれているから、薬草を不味く感じるのは当然かと。 信州人みたいに蝗の佃煮とか蕗の薹のお浸しを常食している地域ではないのだし。
[一言] 無茶な負荷かけると若くても腰いわすよ?(経験談
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