表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
社畜辞めました! 忍者始めました! 努力が報われるダンジョンを攻略して充実スローライフを目指します!~ダンジョンのある新しい生活!~  作者: 3104
五章 本業は公儀隠密で!

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

939/1498

動画配信者リンネ誕生!? 動画視聴してみた!

 俺の部屋――

 パソコンの前に座って動画の再生ボタンを押す。


 今見ているのはリンがモデル業として始めた動画の配信だ。

 ファッション系の動画を取ってアップするらしい。


 今回はその初回動画ということだ。


 画面の中にすました顔のリンが現れる。


「おーっ! リン姉が出てきたっス!」

「そりゃ出てくるだろ」


 隣にいるリンが頬を押さえながら言う。


「な、なんだか恥ずかしいですー!」


 モニターの中で、少しぎこちない笑みを浮かべたリンが口を開く。


「はじめましてー。モデルのリンネですー。今日から動画配信? を始めることになりました。よろしくおねがいしまーす!」


 自己紹介をして、趣味や今後の展望を語る。

 趣味は料理。今後はモデルとして、動画配信者として活躍していきたい、といった内容。


 動画の尺は短め。すぐに終わった。

 はじめての動画としては悪くない出来だと思う。

 思うのだが……。



 リンが声を震わせながら聞く。

 映り具合に自信がないのかもしれない。


「ど、どうでした? ヘンじゃなかったですか?」

「ヘンじゃない。よかったよ。思ったよりちゃんとした動画だった」


 トウコはこめかみのあたりを指でグリグリしている。


「んー。でもなんか物足りないっス! キラキラがたりないっ!」


 まあ、俺も似た評価だ。


「でも自己紹介だし、最初の動画から飛ばしすぎてもな」

「なーんか足りないんスよねー。露出? 肌色? 色気? んー。なんか違うんスよねー」


 トウコは頭をグリグリしながら体を左右にくねらせる。


「お? トウコにしては珍しくエロ方面に行かなかったな。でも言いたいことはわかるぞ」

「えっ!? ゼンジさんはどこがおかしいかわかるんですかっ?」


 リンがバッと俺を見る。


「おかしいっていうか……緊張してたんだろ? 堅いんだ。それだけだよ」

「あー! そうっス! それそれ! それなんスよっ!」


 どれだよ!


「かたいでしょうか? ちゃんとしなきゃと思って……」

「いや……まじめな顔で写ってるし、ときおり笑顔も見せてる。だけど……」


 リンがずいっと顔を寄せてくる。

 近い近いっ!


「だ、だけどっ? だけどなんです!?」

「いつものリンはもっと自然に笑えているだろ? それと比べちゃうから、どうしてもな……」


「いつものほうが、いいですか? ああ、よかったー」


 そう言うとリンはほっとしたように笑う。


「それそれ。そういう表情! それを動画で出せばいいんだ」

「それは無理ですー……」


 リンは残念そうに言う。


「え? なんでだ? いつも通りやればいいんだよ」

「だって……そこにゼンジさんはいないからー」


 リンは頬を染めながら、上目遣いに俺を見ている。

 ああ。そういう……。


「おっと店長ーっ! ここでとぼけたーっ!」

「とぼけてねーわ! 普通に盲点だったんだよ!」


 最近まともなので忘れかけていた。

 もともとリンは重度のコミュ障なのだ。

 まともな動画が撮れていたから気づかなかった。


 俺やトウコといるときと、そうでないときはぜんぜん違う。

 出会った頃は無言で睨んでくるだけの、不思議な人だった。

 リンは、ただ声をかけられずにフリーズしていただけだったんだけど。



 リンが俺の服のすそを掴む。


「その……。こんな風にできるのはゼンジさんの前だけで……人にはみせたくないので……」

「キターっ! リン姉の追撃っス! 店長、さらにとぼけるのかーっ!?」


「実況やめい! あー。そうだよなあ。いつも通りの表情なんて仕事で出せるわけないんだよな」

「そりゃそうっス! あたしも学校じゃ死んだよーに寝てるっス!」


「寝てるだけじゃねーか! マジメに授業受けろ!」


 一瞬心配したじゃねーか!

 返せ! 俺の純粋な心を!


「学校であたしがなんか言うと変な空気になるんスよ! シラーッとしてつまんないっス!」

「まあ、トウコは学校でも普段通りなのがマズイのかもな」


 トウコは自重できないタイプのコミュ障だ。

 全力でぶつかって玉砕するタイプ。


 草食系や無気力系の学生なんかにはハマらない。

 クラスや学校……いや、一人でも波長の合う友達ができれば解決しそうなんだけどな。


「だからあたしも店長とリン姉にしかこの真の姿は見せていないっス!」

「ま、そういうことにしとくか」


「ちな、店長は店でも同じ感じっスね!」

「ゼンジさんは裏表がないから……誰にでも優しくて……たまに不安になっちゃいます」


 後半は良く聞こえなかったけど……。

 リンがさみしげに笑う。


「俺だって相手によって態度は変えてるぞ。ちゃんと年上には敬語で話すし」


 駄目オーナーにだって敬語で話してたし。


「社長にはタメ口っスよね!」

「御庭は別枠と言うか……気安い感じでいいだろ」

「あの人はお上手ですよねー」


 御庭は誰とでもすぐに打ち解ける。陽キャの者である。

 おそらくは異能でこちらの反応を探って、会話を進めているのだ。


 まあ騙されているわけではないから、悪い気はしない。


 おっと。脱線したな。


「本物と比べたら物足りないけど、動画としては良かったと思う。次の動画も楽しみにしてるよ」

「えへへ。そう言ってもらえると……うれしいです。少し不安だったんですけど、頑張れそうです!」


 リンがはにかむように笑う。

 この笑顔を動画に撮れないのが残念だ。

 でも、俺たちだけの特権だと思えば悪くないね!

ご意見ご感想お気軽に! 「いいね」も励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 例のポージングって画面越しでも通用するのかな…?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ