【嫉妬】の効果とは……?
火鳥の卵を使った料理を食べた俺とリンはスキルを手に入れた。
【火耐性(一時)】である。
この際、トウコの【火耐性】のスキルレベルは上がらなかった。
時間を測ったところ【火耐性(一時)】の効果は一時間ほど続いた。
効果が切れるとステータスウィンドウからも表示が消える。
名前の通り一時的にスキルが付与されるだけだ。
「あっ! てんちょー。消える前に試せば良かったっスね!」
「いや、自分の体を火で炙るわけにはいかないだろ? ここは素直に表示を信じておこうぜ!」
「そうですねー」
トウコは口をとがらせる。
「うぇー? 安全第一のために知っておくべき! とか言わないんスか?」
「じゃあトウコの【火耐性】で試そう……と言おうか?」
トウコが【捕食】で得たスキルは永続する。
「うえぇ!? 安全第一でオッケーっス!」
「もちろん冗談だ。わざわざ痛い目をみることはない。前からの方針だぞ」
ごはんに夢中になって検証しなかったわけではないのだ。
耐性や回復など、危険を伴う検証は避ける。
「にしても、一時的とはいえスキルが手に入るとは……便利だな!」
「これは間違いないっ! バフっスね! リン姉はタンカーでバッファーっス!」
一時的なスキル付与――つまり有利な効果の付与と言える。
しかしリンは首をかしげている。
用語の意味が通じていないな。
「ばふ? たんかー?」
「タンクする人をタンカーと呼ぶ。バッファーは……能力を向上させるスキルを使う人だな」
バッファーは、有利な特殊効果を付与する役割である。
前に説明した気もするが、ゲーム用語はなじみのない人にはわかりにくいからね。
トウコが緩んだ顔で言う。
「リン姉のタンクでバフバフしたいっス! ばふばふばふーっ!」
「なに言ってんだトウコ……慎めっ!」
どうせ期待外れになる往年のゲームネタ!
リンには通じん!
期待通りにリンはスルーした。
「このスキル、私だけじゃなくて、みんなに効果があるのがいいですねー」
「たぶん【嫉妬】により【一時的な火耐性を付与する料理を作る】みたいな感じのスキルが使えたんだろうな」
「あたしの【捕食】と【火耐性】をマネっこしたんスね!」
「両方をマネしたのかなー?」
「少し複雑だな。ちょっと整理してみるか」
【嫉妬】。
――心から渇望する能力を一時的に使用できる。
――使用者が認識しているスキル効果を疑似的に再現する。
天の声と【サポートシステム】の説明なので、不親切ではあるが正解に近いはずだ。
条件は心から望むこと。
強く羨んだり、嫉妬するということだろう。
でもリンの場合はネガティブな感情だけではなさそうだ。
【捕食】で【火耐性】を得たトウコをうらやましく思った。
そして、自分も役に立ちたいと思った。
リンは前から強くなりたいと悩んでいた。
守られるばかりではなく、守りたいと言っていた。
そういう思いが、作った料理を食べた相手にスキルを付与する能力として現れたのだろう。
もう一つの説明にある認識しているスキル効果とは、今回の場合は【捕食】と【火耐性】だ。
【捕食】はモンスター食材を食べてスキルを得る効果。
【火耐性】は火への耐性。
この二つのスキルを混ぜ合わせて再現した。
あくまでも、似たものとして再現しているのだ。
「――というわけで、わざわざ料理を介しているのはリンがもともと持っていたスキルを使うためじゃないか?」
「そうかもー! 【食材】で【捕食】【火耐性】を再現したんですねー!」
「なんかそれっぽいっス!」
「さすがゼンジさん!」
「さす店長! さすさすっ!」
ホメられても予想に過ぎない。
ていうかトウコは便乗して雑に褒めてきやがるな。
「まあ、予想だからあってるかはまだわからん。システムさんに聞いてみてくれ」
リンがシステムさんへと問いかける。
「どうかな? あってるかな?」
【サポートシステム】が実体化する――
<【嫉妬】の動作を確認。解析しました。リン自身が保持する能力で、望む効果を疑似的に再現します>
「おおっ!? システムさんが働いたぞ!」
「さすタコ! ニート卒業っスね!」
「私が持っている能力って? 【火魔法】とか【食材】のことかなー?」
<その通りです。リン>
「同じ効果は何度でも再現できるのか? 卵から【火魔法】を付与するとか」
「お料理すれば、またスキルがつけられるのかなー?」
<リン自身が強く望み、それが保持する能力で実現できれば可能です>
「つまりできるんスね!」
「おお、いいじゃないか!」
「えへへ。ありがとうございまーす!」
朗報!
【嫉妬】は何度も使える!
おそらくまた卵料理を作れば【火耐性】バフが得られる!
しかも再現できる効果は【火耐性】に限らない!
これは活躍が期待できるぞ!
おめでとう。リン!
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