やっと帰還! 管理コンソールを確認しよう!
火鳥の巣があるアカシアの木の裏――
俺たちはモノリスの前で手をつなぐ。
「たぶん拠点へ戻る転移モノリスだと思う。でも慎重にな。リン、頼む!」
モノリスに触れるのはダンジョンの持ち主であるリンにする。
俺が触って管理者権限や報酬系のバグが起きると面倒だ。
念のためである。
「はーい! じゃ、いきますねー」
「いつでもオッケーっス!」
リンがモノリスに触れる。
視界が暗転し――
ふわっとした感覚がして、景色が変わる。
「おっ。無事についたな!」
草原ダンジョンの第一エリア。
いつも食事している拠点に戻ってきた。
「転送門のすぐ近くにモノリスができてます。ゼンジさんのダンジョンとおんなじですねー!」
「らくちんっス!」
転送門の近くにモノリスが現れている。
周辺には俺が作った水パイプなどの建造物もあるが、避けて現れてくれた。
ぶち抜いて生えてこなかったようで、安心した。
これは管理コンソールのはずだ。
「リン。さっそくアクセスしてみてくれ」
「はい!」
リンが触れると、モノリスの表面に変化が起きる。
『管理コンソールへようこそ』
頭の中に音声が響く。
それと同時にモノリスの表面に文字が浮かび上がる。
これも俺のダンジョンと同じだ。
リンがコンソールを操作してメニュー画面を表示させる。
表示は以下の通りだ。
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・ショップ機能
・階層移動
・ダンジョン情報閲覧
・ダンジョンの命名
・メッセージ機能
・転送門の移動
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リンが嬉しそうに言う。
「ゼンジさんのものと一緒ですね!」
「どのダンジョンでも同じっポイっスね!」
俺は画面を指さす。
「所有者情報の変更がないぞ。あれは隠しメニューだからな。意識してみてくれ」
「あ、そうでしたね! でてきてくださーい!」
「おーっ! 出てきたっス!」
メニューに『ダンジョン所有者情報の変更』が現れた。
「本名が表示されているのはマズいから、変更してくれ」
偽名のレンを使えばいいのかな?
普段はトウコがすぐに「リン姉ー」とか言って成立しない偽名作戦である。
やらないよりはマシ程度の備えだけど……。
俺は名称の案を考えてみるが、しっくりくるものがない。
しかしリンはすらすらとコンソールへ指を走らせている。
アイデアがあるらしい。
「じゃあ変更しますねー」
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現在の名称:オトナシリン
新しい名称:リンネ
変更してよろしいですか?
はい いいえ
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「リンネ? あだ名なのか?」
リンはネットやSNSはやらない。
ハンドルネームの類は持っていないと思っていた。
「いえ。トウコちゃんがリンねえって呼んでくれるので、リンネ、としました」
「おーっ!? あたしの呼び方から取ったんスか! つまりあたしラブってことっスね!」
「う、うん。そうなるのかな?」
「間違いないっス! これはラブ!」
リンのリアクションを見る限り、違う気がするが。
トウコは喜んでいるのでツッコまないでやろう。
「もしリンの本名を知っているダンジョン保持者がいても、バレないだろう」
「あ、この名前はお仕事の動画配信でも使ってるんですけど……大丈夫かなあ?」
「問題ないだろ」
動画配信者とダンジョン保持者を結びつける奴はいない。
「じゃあ変更しちゃいますねー」
リンが変更を確定させる。
これでよし!
トウコが言う。
「ちな、ブイスタ名みたいなもんっスか?」
動画やコメントを投稿できるツイスタというSNSがある。
ハルコさんがのめり込んでいるやつだ。
アバターをかぶって配信することをバーチャルブイスターと呼ぶ。
これは結構人気があるらしい。
「私の場合はアバター配信じゃなくて、顔を出して活動するの。ちょっと恥ずかしいんだけどー」
「モデル業としてやるんだから、顔を隠してちゃ意味ないもんな」
「そうそう! 体を隠してちゃ意味ないっス!」
リンはスルーした。
「そうなんですー。あっ! 撮影した動画ができたそうなので、後で一緒にみてください!」
「おお、できたんだな。ぜひ見たい!」
「やたーっ! お宝映像っス!」
「動画はあとで見せてもらうとして、管理コンソールのメニューを確認しようか」
俺のコンソールと内容が同じか試しておきたい。
「うぇー!? おなか減ったっス!」
「ゼンジさん。先にごはんにしてもいいですか?」
トウコが俺の服をつかんでゆする。
リンが上目遣いに聞いてくる。
「そうしようか!」
「たぁまぁごっ! ヤキトリぃっ!」
「タマゴもあるから、親子丼もいいですねー!」
コンソールの検証より食事ということになった。
異議なし!
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