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社畜辞めました! 忍者始めました! 努力が報われるダンジョンを攻略して充実スローライフを目指します!~ダンジョンのある新しい生活!~  作者: 3104
五章 本業は公儀隠密で!

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卵の扱いは慎重に!?

「あー、捕食もアリっスね!」

「それなら、今回はトウコちゃんが食べてみる?」


 トウコは卵に手を伸ばす。


「いいんスか!? いただき――」

「まあ待て!」


 俺はトウコを手で制す。


「うえぇ!? なんスか?」

「この卵が手に入るのは初回だけの可能性がある!」


 トウコはげんなりした顔だ。


「店長、可能性(かのうせー)、可能性って細かいっス!」

「トウコがざっくりしてるだけだ! 謎の卵を前にいきなり食おうとするな!」


 リンがとりなすように言う。


「では、温めてみますか? ふ化して鳥さんを仲間にするんですよね?」

「試してみる価値はあると思うぞ」


「うー。じゃあガマンするっス!」

「そしたら交代で温めることになるか……?」


 鳥の孵化ってどのくらい温めればいいんだ?


「交代で……。あ、いいかも……?」


 なぜそこで頬を赤く染めるんだリン……!?

 トウコは首をひねっている。


「んー。でも、鳥を仲間にしても微妙っスねー。どうせならドラゴンがいいっス!」

「その場合、ドラゴンと戦う羽目になるだろ!」


「ドラゴン……龍さんは強そうですねー」

「ドラゴンはロマンっス!」


「でも鳥さんも強かったよねー!」

「あたしたちにかかれば楽勝っス!」


「いやいや、トウコ。空に連れ去られて死にかけたことを忘れるな!」


 落ちたら死ぬか大ケガだった。


「あ、そーだったっス! てへぺろ!」


 トウコは目をそらして舌を出す。

 口でてへぺろ言うな!


「トウコを助けに行ったから、その間リンは一人で雌鳥(めんどり)と戦ってたし……」

「そうなんですよー。鳥さんには火魔法が効きにくくて……」


 戦いの合間にちらっと見たときは膠着(こうちゃく)状態だった。

 リンには【防火】や【消火】の魔法があるが、鳥にも似た能力があったのだろう。


「ケガはしなかったか?」

「ポーションを使ったので大丈夫です!」


「うぇぇ!? ケガしてたんスかリン姉!」

「もう治ったから大丈夫だよー」


 リンは力こぶのポーズをとる。

 よく見れば少し服が焦げているな。


「リンなら勝てると信じていたけど、手が回らなくてすまない」

「いえいえ! トウコちゃんがピンチだったので、しょうがないですよー」


「めんぼくないっス! よく考えたら、店長が来なかったらヤバかったっス!」

「かっこよかったですねー!」


「でも着地が地味っス! もっとこう、しゅたーっと! ヒーロー着地で!」

「俺だけならギリ着地できるけど、トウコを抱えてたら膝で背骨を折りかねないぞ!」


 【跳躍】は着地の衝撃を和らげてくれる。

 でも個人用のスキルだし、完全無効化ではない。


 それに、俺の腕力は普通の人間とそう変わらない。

 トウコを抱えたままヒーロー着地なんて離れ業はできない。


「バックブリーカーっスね! ははっ! たしかにっ!」

「重力には勝てないってこった」


 壁を滑って速度を殺すので精一杯だ。

 【壁走りの術】は地味に役に立ち続けている。


 卵の回収は銃や火魔法ではできない。

 忍者ならではの器用な立ち回りである!



「でも二人とも無事でよかったですー!」

「トウコはケガしてたけどな」

「ポーションがあればオッケーオッケーっス!」


 あんまりクスリに頼った戦いはしたくないが……。

 まあ、あるものは有効利用しよう。


「でも、それ以外は楽勝だったっス!」

「俺たちも強くなっているし、対策も練ってきたからな」

「そうですねー。鳥さんも一羽だけならなんとかなりましたー」


 これも反省点だな。

 いるとわかっていた二羽目への対応が遅れた。

 戦闘中に周囲――とりわけ上空に気を配るのは難しい。


「まあ、二匹目は不意打ちだったから、トウコが悪いわけじゃない」

「そうですねー」


 誰が狙われてもおかしくなかった。

 トウコはぐっと親指を立てる。


「ドンマイっス!」

「そういうの、自分で言うなよ!」


 反省せい!


 俺も反省しておこう。

 自律分身を準備段階で使ったせいで、ボス戦に参加させていない。

 周囲の監視役として役に立っただろう。

 リンとトウコのカバーを分担することもできた。


 【自律分身の術】が再使用できるまで待って、万全の態勢で臨むべきだったかな。


 とはいえ、鳥はいつ襲ってくるかわからなかった。

 相手次第で戦闘がはじまるから、再使用のタイミングが難しい。


 まあ、ドンマイである!

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― 新着の感想 ―
【鑑定】し忘れてる(笑)
[一言] 交代で卵を温めるのは鳥のつがいがすること! やはりオタクは鈍ちんだな…
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