卵の扱いは慎重に!?
「あー、捕食もアリっスね!」
「それなら、今回はトウコちゃんが食べてみる?」
トウコは卵に手を伸ばす。
「いいんスか!? いただき――」
「まあ待て!」
俺はトウコを手で制す。
「うえぇ!? なんスか?」
「この卵が手に入るのは初回だけの可能性がある!」
トウコはげんなりした顔だ。
「店長、可能性、可能性って細かいっス!」
「トウコがざっくりしてるだけだ! 謎の卵を前にいきなり食おうとするな!」
リンがとりなすように言う。
「では、温めてみますか? ふ化して鳥さんを仲間にするんですよね?」
「試してみる価値はあると思うぞ」
「うー。じゃあガマンするっス!」
「そしたら交代で温めることになるか……?」
鳥の孵化ってどのくらい温めればいいんだ?
「交代で……。あ、いいかも……?」
なぜそこで頬を赤く染めるんだリン……!?
トウコは首をひねっている。
「んー。でも、鳥を仲間にしても微妙っスねー。どうせならドラゴンがいいっス!」
「その場合、ドラゴンと戦う羽目になるだろ!」
「ドラゴン……龍さんは強そうですねー」
「ドラゴンはロマンっス!」
「でも鳥さんも強かったよねー!」
「あたしたちにかかれば楽勝っス!」
「いやいや、トウコ。空に連れ去られて死にかけたことを忘れるな!」
落ちたら死ぬか大ケガだった。
「あ、そーだったっス! てへぺろ!」
トウコは目をそらして舌を出す。
口でてへぺろ言うな!
「トウコを助けに行ったから、その間リンは一人で雌鳥と戦ってたし……」
「そうなんですよー。鳥さんには火魔法が効きにくくて……」
戦いの合間にちらっと見たときは膠着状態だった。
リンには【防火】や【消火】の魔法があるが、鳥にも似た能力があったのだろう。
「ケガはしなかったか?」
「ポーションを使ったので大丈夫です!」
「うぇぇ!? ケガしてたんスかリン姉!」
「もう治ったから大丈夫だよー」
リンは力こぶのポーズをとる。
よく見れば少し服が焦げているな。
「リンなら勝てると信じていたけど、手が回らなくてすまない」
「いえいえ! トウコちゃんがピンチだったので、しょうがないですよー」
「めんぼくないっス! よく考えたら、店長が来なかったらヤバかったっス!」
「かっこよかったですねー!」
「でも着地が地味っス! もっとこう、しゅたーっと! ヒーロー着地で!」
「俺だけならギリ着地できるけど、トウコを抱えてたら膝で背骨を折りかねないぞ!」
【跳躍】は着地の衝撃を和らげてくれる。
でも個人用のスキルだし、完全無効化ではない。
それに、俺の腕力は普通の人間とそう変わらない。
トウコを抱えたままヒーロー着地なんて離れ業はできない。
「バックブリーカーっスね! ははっ! たしかにっ!」
「重力には勝てないってこった」
壁を滑って速度を殺すので精一杯だ。
【壁走りの術】は地味に役に立ち続けている。
卵の回収は銃や火魔法ではできない。
忍者ならではの器用な立ち回りである!
「でも二人とも無事でよかったですー!」
「トウコはケガしてたけどな」
「ポーションがあればオッケーオッケーっス!」
あんまりクスリに頼った戦いはしたくないが……。
まあ、あるものは有効利用しよう。
「でも、それ以外は楽勝だったっス!」
「俺たちも強くなっているし、対策も練ってきたからな」
「そうですねー。鳥さんも一羽だけならなんとかなりましたー」
これも反省点だな。
いるとわかっていた二羽目への対応が遅れた。
戦闘中に周囲――とりわけ上空に気を配るのは難しい。
「まあ、二匹目は不意打ちだったから、トウコが悪いわけじゃない」
「そうですねー」
誰が狙われてもおかしくなかった。
トウコはぐっと親指を立てる。
「ドンマイっス!」
「そういうの、自分で言うなよ!」
反省せい!
俺も反省しておこう。
自律分身を準備段階で使ったせいで、ボス戦に参加させていない。
周囲の監視役として役に立っただろう。
リンとトウコのカバーを分担することもできた。
【自律分身の術】が再使用できるまで待って、万全の態勢で臨むべきだったかな。
とはいえ、鳥はいつ襲ってくるかわからなかった。
相手次第で戦闘がはじまるから、再使用のタイミングが難しい。
まあ、ドンマイである!
ご意見ご感想お気軽に! 「いいね」も励みになります!




