管理者権限を手に入れる条件とは?
第九エリア――
俺たちはバオバブの木の下で話し合っている。
天の声からボス討伐をアナウンスされたので、鳥は十エリアのボスで間違いない。
「うーむ。ボスを倒したら管理者権限がもらえると思っていたんだが……」
「そのはずですよねー? ゼンジさんのダンジョンでは、クモさんを倒して……宝箱を開けたらもらえましたよね?」
俺のダンジョンでは、報酬は宝箱を開けたときにもらえる。
倒したタイミングではない。
ふむ?
トウコが思いついたように言う。
「あっ! 鳥の宝箱を開ければいいんスよ!」
「ふむ。宝箱がキッカケかもしれないな」
ボスの宝箱はちゃんと残っている。
雄鳥と雌鳥で二つある。
「では、開けてみますねー」
リンが雌鳥の宝箱を開ける。
中身は――
「えーと。羽根ですね……」
「へえ。きれいな赤い羽根じゃないか。これは冠羽だな!」
トウコが言う。
「かんうと言えば、天下無双の武将っスね!」
「カンムリのハネな! 関羽でも張飛でもない!」
ボケてるのか天然なのかわからんわ!
まあ、冠羽なんて言葉、調べないと出てこない。
かんむりばね、と読んだりもするらしいけど、耳で聞いてもわからないだろう。
「鳥さんの頭に生えていた羽根ですねー」
赤い羽根は全部で五本。
どれもつややかで美しい。
俺は赤い羽根を手に取る。
「ヘビクイワシは英語だとセクレタリーバードって言うんだ。この羽がペンを刺している秘書に見えるからって説もあるぞ!」
でもこれ、言うほど秘書に見えるか?
とは思うが。
まあ、諸説あるので。
動物のヘビクイワシの場合、羽根は黒色だ。
似ているというだけで、別の生き物――モンスターだ。
「さすが店長! 動物ハカセっス!」
「うれしくないが、ありがとう」
「そんなことより、リン姉! 次っス!」
おいっ!
ホメといてザツに次に行きよる!
この素材を使って何か作ろうと思うが……後で考えよう。
リンは次の宝箱を開く。
「わあ! こっちはお肉ですよー!」
「やたーっ! ヤキトリ確定っス!」
素材と肉では露骨な温度差があるね!
まあ、わかる!
俺も焼き鳥は食べたい!
いや、食べ物の話はあと!
本筋はこっちじゃない!
「ふーむ。二つ目の箱を開けても管理者権限のアナウンスはなしか」
「あー。その話だったっスね」
リンが空中に浮かんでいる【サポートシステム】に問いかける。
「システムさん。どうしてかなー?」
<不明です。条件を満たしていない可能性があります>
「じょうけん……?」
「あっ! 場所っスよ! ここじゃダメなんじゃないっスか!?」
「おお! 場所か!」
「そうかぁ。第九エリアじゃダメってことですねー!?」
ありそうな話だ。
俺たちはボスを倒した。
だけどボスがいるべきエリアにはたどり着いていない。
俺のダンジョンの場合、ボスは五階や十階にいる。
しかし草原ダンジョンのボスは移動する。
ボスは本来、十エリアにいるべきだ。
だが、ここのモンスターは行動範囲が広い。
それにより俺たちはボスを第九エリアで倒すことになった。
ボスワニもボス鹿も、本来のエリアより手前で倒している。
その時も宝箱は手に入った。
つまりボスを倒すのは、本来のエリアでなくてもかまわない。
報酬もちゃんと貰える。
だけど管理者権限は違うのだろう。
決められたエリアに到達しないといけない。
「つまりこのまま十エリアまで行けばいいんだな!」
「はい! そうしましょう!」
「ダッシュで行くっス!」
俺たちは荷物をまとめ、バオバブの木を背に先へ進んだ。




