エリアボス討伐報酬! コレは良いのか、悪いのか!?
天の声が告げる。
<適性を確認……。討伐者には、クリア報酬として【嫉妬】が与えられます!>
「しっと……?」
リンはぽかんとした顔で俺を見ている。
トウコが大げさにリアクションする。
「おおーっ!? これは大罪スキルっス!」
「ええっ!? 悪いものなんですかー?」
リンは泣きそうな顔だ。
「いや、悪いとは限らないぞ。むしろ強いんじゃないか? トウコも持ってるし」
「あたしの【憤怒】とおそろいっス!」
トウコはいい笑顔で親指を立てている。
七つの大罪のスキルはこれまでにもあった。
あまり使わないがトウコも持っている。
今のところ悪い効果や影響は出ていない。
「嫉妬か……。リンっぽくないよな?」
「うーん。うらやましいなーと思うことはあって……。この頃は特に……」
そう言えば前からうらやましいとか言ってたか。
チートという用語を説明をしたとき、リンはズルいけどうらやましいこと、と理解していた。
「このごろって……ああ」
ああ、あれか。
言いかけて俺は口を閉ざす。
思い当たる節はある。
たしかに……嫉妬が起きるようなイベントはあったよな。
トウコがひらめいた! という感じで言う。
「あ! エロいおねーさんの件っスね!」
「トウコ……スルーしてくれよ!?」
リンは少し暗い顔で言う。
「良くないことばっかり考えていたので……やっぱり罪なんでしょうか」
リンはしゅんとしてしまった。
なんとか励まさねば!
「いやいや! ご褒美でもらうものだから! 罰とかじゃないから!」
「そうっス! ご褒美なら色欲がよかったっス!」
「いや、トウコへのご褒美じゃねーから!」
リンは俺とトウコのやり取りを見て小さく吹き出す。
「あはは。せっかくもらえるんだから、きっといいものですよね!」
「【憤怒】も悪くないっス! あんま使わないけどっ!」
【憤怒】は使う機会がなぁ……。
これはボス討伐報酬ではなく、悪性ダンジョンのボスの魔石を【捕食】して得たものだ。
ご褒美とは違う気もするけど……。
まあ、悪いものではないと思う。
俺はリンに聞く。
「で、【嫉妬】の効果はどうなんだ?」
「ええと……システムさん?」
【サポートシステム】が現れて答える。
<【嫉妬】は、使用者が認識しているスキル効果を疑似的に再現します。>
「おおっ!? まともな答えが返ってくるとは!」
「やるっスね! タコ助!」
だけど、説明を聞いてもわからないやつだ!
俺は腕を組み、考える。
「ふーむ。【検証者】に似た効果なのか?」
認識しているスキルってなんだ?
疑似的に再現……?
スキルリストにあるものを取得するのとは違うんだろうか。
わからん!
「疑似的に再現って……どういうことですかー?」
天の声が答える。
まだいたのかよ!?
<【嫉妬】は、使用者が心から渇望する能力を一時的に使用できます>
「一時的? つまり、スキルを取得して試せる【検証者】とは違うんだな?」
天の声が答える。
<スキルの取得は行われません>
おお!
天の声もシステムさんも今日はまともに会話が通じる!
「天の声さん。心から渇望する能力ってなんですか?」
「……あれぇ? 返事来ないっスね?」
「質問タイムは終了か……。システムさんに聞いてみたらどうだ?」
「どうですか。システムさん?」
<不明です。または、権限が不足しています>
「おいっ! いつも通りじゃねーか!」
「使えないっス!」
「ええと、システムさん? どうすれば使えますか?」
<不明です。説明によれば、リンの認識、強く望むことが条件と推測します>
「ありがとー。システムさん!」
おお。システムさんが定型文じゃないことを返した!
正解ではないにしろ、かなり確度が上がったな!
【嫉妬】は悪いものではなさそうだ。
使い方がはっきりしないが、それはおいおい検証していこう。
それはそうと……。
「なあ。ボスを倒したのに管理者権限もらえてないよな?」
「あっ! ホントっス!」
「あれー?」
俺たちはお互いの顔を見て、首を傾げた。
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