VSボス戦!? 赤い鳥!
巨大な鳥がやってくる。
まるで炎のように鮮やかな赤い羽根。
長い脚の先には鋭い爪。
その爪をこちらに向け、滑空してくる。
「クワァァッ!」
クチバシが大きく開く。
口中が赤く輝き、炎が大きくなっていく。
火球が来る!
「鳥さん! こっちですよーっ!」
リンが盾トンファーを大きく振りあげながら叫ぶ。
巨大鳥の意識がリンへと向かう。
膨れあがった火球がリンへと放たれる。
俺はそれを水忍法で迎撃したい気持ちをぐっとこらえる。
リンなら耐えられる!
俺がすべきは攻撃! もう少し引きつけるんだ!
リンは火球を盾で防ぐ。炎と煙がリンを包む。
その炎を吹き散らすように鳥がリンへと掴みかかろうと迫る。
掴もうとするそのタイミングだけは、飛行ルートが絞られる。
「――今だ! 水刃噴射の術!」
右手で【水噴射】を放ちながら、左手のペットボトルの水を刃に変える。
これでタイムラグなく【水噴射】と【水刃】を放てる!
水流は空中の鳥に命中して姿勢を崩させる。
刃は片翼を深々と切り裂き、赤い羽根を散らせる。
「チャージショットガンッ! どばーんっ!」
ポンプアクションショットガンから閃光がほとばしる。
命中!
ばらまかれた散弾が赤い鳥に突き刺さる。
「キョエェェェッ!」
鳥はバランスを崩し、そのまま地面に叩き付けられる。
もうもうと砂煙を上げ、乾燥した地面の上を滑っていく。
「リン! 無事か!?」
「けほっ。はぁい。大丈夫ですー!」
リンは無事。
盾がすすけているくらいで、大きなケガはしていないようだ。
トウコがポンピングして次弾を装填しながら言う。
「うまくいったっスね! 最初っから必殺技作戦!」
「ああ! だが、まだだ! 起き上がるぞ!」
土煙が晴れる。
赤い怪鳥はもう二本の足で立ち上がっている。
そして首を揺らしながらこちらを見下ろしている。
俺は次の術のために集中しながら、敵を観察する。
こうして近くで見ると、なかなかに美しい鳥だ。
すらりと伸びた脚のせいで、頭は俺たちよりやや高い位置にある。
顔に羽毛はなく、目の周りはオレンジ色に彩られている。
まるで化粧をしているかのようだ。
後頭部には美しい飾り羽。今は逆立って、頭部を大きく見せている。
冠羽と呼ばれる長い羽根だ。
ふむ。
やはりヘビクイワシに似ている。
ということは――
トウコが鳥へ銃口を向ける。
「もうハネはズタボロっス! 今度は逃げられないっスよ!」
翼は俺たちの攻撃で歯抜け状態。
トウコの言うように、もう自由に飛ぶことはできないだろう。
だが――
「油断するな! 言っただろ、この鳥は――」
「クワァァァァァッ!」
怪鳥は耳をつんざくような高音を発し、強く大地を蹴る。
まるでダチョウのように、力強く走り始めた。
この鳥は地上を歩くことを得意とする!
「――走るんだよっ!」
俺が言い終えるより速く、鳥がトウコへ突っ込んでいく。
「どわぁーっ!」
トウコは大きく体を投げ出して横っ飛びに回避。
転がりながら着地し、そのまま射撃。
鳥の羽が散る。
だが致命傷ではない!
まだヒットポイントがあるようだ。
「水噴射!」
【操水】で棒状に集中させた水流を向ける。
だが鳥はそれをかわす。
速い!
そのまま膝立ちで銃を構えているトウコへと突っ込み――
「ファイアボールっ!」
リンのファイアボールが鳥の近くに着弾する。
鳥の狙いがリンへと移る。
鳥はリンの頭上へ跳び上がり、足を振り下ろす。
「クワッ!」
「きゃっ!」
とっさにガードを上げるリン。
「させるかっ!」
俺は水圧の反動を抑え込みながら、水流の狙いをつける。
当て続けるのは難しい。
だが、水流を長い剣のように振り回せば当てられる!
水しぶきが上がり、片足を上げた鳥の体勢が崩れる。
振り下ろされた足の一撃は盾でそらされる。
しかしその勢いでリンはよろけ、尻もちをついてしまう。
鳥が再び足を振り上げ、蹴りの姿勢へ。
リンは立ち上がれず、動きを止めている。
その視線はまっすぐに俺へと向けられている。
そうだ。それでいい!
リンは立ち上がれないのでも、竦んで動けないのでもない。
「入れ替えの術!」
術が成立すると同時、風を切る気配――
すぐさまその場を飛び退き、爪の一撃をギリギリでかわす。
背中の刀を抜いて構える。
「んじゃあ、切り伏せてやるぜ!」
斬って、焼いて、食ってやる!




