バオバブの木は宝の山! 食べてヨシ! 薬にしてヨシ!
バオバブの木の下で食事の準備を始める俺たち。
「こんなとこでご飯食べてていいんスかねー?」
「いいんだよ。鳥が来たらここで戦えばいい。木があるから有利に戦える」
「へー! そーなんスね!」
周囲にモンスターの気配はない。
だが、鳥に見つかる恐れはある。
でも、見つかったならそれでいいのだ。
ここなら大木という遮蔽物のある状況で戦える。
平原で戦うのは不利だが、ここは戦うのにちょうどいい場所だ。
リンは包丁でバオバブの実を割ろうとしている。
歯が立たないみたいだ。
「この実、すごく硬いですねー。ゼンジさん、ちょっと割ってもらえますか?」
「おう!」
地面に置いて刀で斬りつける。
果実はぱかりと二つに割れる。
中には粉っぽい実が入っている。
「あれ? パサパサしてるっス!」
「ふーむ。こんな感じなのか……どうやって食うんだ?」
トウコが粉っぽい果実に指を突っ込み、それを口へ運ぶ。
「ペロッ! これは……酸っぱいっス!」
「とりあえずはよせ! 毒だったらどうする!」
「リン姉が食べられるって言ってたからオーケーっス!」
「まあそうだけど……なんか心配だ」
リンが果実をつまんで口へ運ぶ。
「食べられますよー。さわやかな味ですね。グレープフルーツみたいです!」
粉をふいたラムネめいた粉っぽい実。
パサパサしたそれを手に取って眺める。
食って平気なものなのかな、これ……。
いや、リンやトウコは食ってるけど。
トウコがむせ始める。
「うぐっ……げほっ!」
「ど、どうした。トウコ!?」
喉を押さえて苦しげな表情。
喉が動いて、なにかを飲み下す。
「タネがあるっ! 飲んじゃったっス!」
「勢いよく食いすぎだろ……」
「梅干しみたいですねー。硬くて噛めないので、食べ終わったら捨てちゃいましょう」
「あ、タネも鑑定してみてくれ」
「あ、そうですね! タネは食べられません。物品鑑定だと――」
<名称:バオバブの種。カテゴリ:素材>
「まあ素材か。ないよりまし程度の情報だが――【毒術】!」
作れる毒は――ない。
ふむ。毒性がないのか。
食べても安全だな。
ダブルチェックオーケー!
「どうでしたか?」
「うん。毒はない。続けて【薬術】!」
作れる薬は――
おお! 回復効果!
薬草のようなファンタジー回復効果がある!
「作れる薬は薬草と同じだ」
「おーっ! 回復アイテムゲットっスね!」
「でも種一個からは作れない。もっと数がいる」
「じゃあたくさん食べるっス! すっぱー!」
トウコは次々に果実を口に入れていく。
「いや……ありがたいが、そうじゃない」
「こうしてほぐせば、実と種を分けられそうですー」
リンは携帯用の鍋に殻から取り出した実を入れる。
そして、それを叩いて砕いていく。
粉状になった実と、硬い種が分離される。
同じようにして、実二つ分の加工があっというまに済んでしまった。
「おお! 【食材加工】だな」
「らくちん加工っス!」
本来なら叩いたりふるったり、手間のかかる作業があるはず。
しかしスキルでさっと解決!
【食材加工】便利!
「はいっ! 私はこの実でなにか作ってみますねー!」
「じゃあ俺は種を薬に加工する」
「あたしは昼寝するっス!」
「いや、周辺警戒な! 鳥が来たら教えてくれ!」
「りょ! 言ってみただけっス!」
いちいちツッコミを欲しがるね!
さて、魔石とバオバブの種を材料にして薬を作る。
作れる品は薬草と同等。
必要な量は実、二つ分だ。
ヘチマ状の殻の中身二つ分、という意味だな。
実の中に実がつまってるので、単位がわかりにくい。
これを使って作れるのが薬草丸ひとつ。
ちょっとコスパが悪く感じるが、木にはたくさんの実が成っている。
時間をかければたくさんの薬が作れる。
この木は宝の山だね!
タネを一つかじってみたが、かなり硬い。
歯が欠けそうなくらいだ。
梅干しの種をかじるのに似ている。
この分量の種を全部かじれば、薬草並みの回復効果があるのかな?
ちょっと試す気はしない。
戦闘中に種を数十個も噛み砕けるわけないし。
顎疲れるし。
そういうわけで、すぐに食べられる薬草丸に加工する。
今欲しいのは魔力回復丸だ。
完成!
草原ダンジョンでは貴重な魔力回復アイテムである!
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