全速前進! ウォータージェット推進!
俺たちはボートで川を渡り、第六エリアへ向かうことにした。
「よし、今回は【水噴射】で川を渡るぞ!」
「はーい」
「全速前進っス!」
前回は【操水】でを使った。今回は【水噴射】を推力にする。
【水噴射】を推力にする。
まるでモーターボートのようなウォータージェット推進である!
「おー! 速いっス!」
「すごいですねー! 前よりずっと速いです!」
後方へ水を噴射する。
その力で俺たちはぐんぐんと前に進む。
しかし、ちょっとスピードが出すぎる!
船にはブレーキなどない。船は急には止まれない。
【操水】でスピードを落として――
「ぜ、ゼンジさーん!」
リンがひしっとしがみついてくる。
む……術のコントロールが!
【操水】で勢いを落とそうと思っていたのだが……。
「店長! 前っ! ぶつかるっス!」
「いかんいかん! 減速! 減速だ!」
対岸が迫っている。
俺は【操水】で流れを操り、ボートを減速させる。
勢い余って陸に乗り上げるようにして止まる。
ふう……。無事に止まったな。
さいわい、船は壊れていない。
「うはーっ! おもしろーっ! もう一回! もう一回っス!」
「今度な、今度!」
俺ももう一往復くらいしたい気はするけど。
魔力と時間がもったいないのでやめておこう。
リンがそっと身を離す。
「ちょ、ちょっと怖かったですー」
「悪い悪い」
俺たちは船を降り、先へ進む。
道中の戦闘はトウコをアタッカーにする。
俺は槍でワニを近寄らせないよう立ち回る。
囲まれそうになったらリンが【ポージング】で敵を引き寄せる。
出会ったワニを蹴散らしつつ、第七エリアと第八エリアの境界線までやってきた。
「んー。鳥はいないっスね!」
「迷彩陣羽織をかぶって、見つからないように進もうか」
「はーい」
草に隠れつつ、姿勢を低くして進む。
リンの索敵でスライムなどを避ける。
避けられない場合は俺が【暗殺】していく。
トウコの銃は目立つのでなるべく使わない。
「あっ! 鳥っス! あっちに飛んでったっス!」
「ワニさんを狙っているみたいです!」
「よし、観察しよう!」
双眼鏡で確認する。
飛来した赤い鳥がワニを蹂躙していく。
まず中距離から火球を放ち、ワニを弱らせる。
たまらずにワニは水場に逃げ込む。
だが、一匹のワニが逃げ遅れる。
「逃げるっス! ワニ助ーっ!」
「トウコちゃん……声っ! 大きいよ!」
赤い鳥は逃げ遅れたワニに鋭い爪を突き立てる。
ばさばさと羽ばたくと、そのまま空中へ。
「おお、ワニの皮をやすやすと貫いたぞ!」
「そのまま飛んだっス!」
ザコワニとはいえ、鳥が抱えて飛ぶなど……。
やはりなにかのスキルだろうか。
「あっ! 落とされましたー! あんな高いところから!」
「ワニ助ーっ!」
リンが目を覆い、トウコが手を空中に差し伸べる。
「なに感情移入してんだよ……」
地面に叩き付けられたワニに鳥が追撃を加える。
ワニは絶命して塵になって消える。
鳥は満足したように飛び去っていく。
「行っちゃいましたねー」
「逝っちゃったっスねー」
「ふーむ。てっきり肉を食うのかと思ったが……倒しただけか」
「あ! 【捕食】ですね?」
「そーいえばそうっス! 食べなくていいんスね!」
【捕食】があると同士討ちをするものと思っていたけど……。
「鳥は経験値が欲しいのかな?」
「そうかもしれませんねー」
「まあ、勝手につぶし合えばいいっス!」
「ワニ助はいいのか……」
「今日は一羽だけなんですねー」
「ああ、前は二羽いたな」
「さっきのは小さいほうっス!」
「今日は見当たらないな。まあ、ここは広いし別の場所に居るんだろ」
「ボスエリアまで行けばいるはずっス!」
「そうですねー」
「んじゃ、進むぞ! 飛び去った今がチャンス!」
俺たちは先を急いだ。




