組み合わせ技を試そう!
【水噴射】は大量の水を手から放つ。
この水は消えてしまうとはいえ、水である!
つまり【操水】で操れる!
出てくる水を細く絞ればウォーターカッターになるんじゃないか?
【操水】でやったようにホースの先端をつまむようなイメージ。
出口を狭くすることで勢いをつけるのだ。
「細く出ろ! ウォーターカッターだ!」
手から水がほとばしり出る。
イメージと違う。思ったようになっていない。
うーん?
【操水】を使った効果はちゃんとある。
拡散していた水流がまとまった棒状に出るようになった。
飛距離も伸びたし、きれいに遠くまで飛ぶ。
でもゴブリンを切断したり貫通したりはしない。
もっとこう、高圧で細く噴射するイメージだ。
伝われ! この思い!
しかしどうも反応が鈍い。
もしかして【水噴射】さんは不器用なタイプなのか!?
それとも俺の想像力の問題か?
ホースの先端をつまんで水圧を上げるイメージだったんだけど、これはしっくりきていない。
蛇口やホースから出る水とは違う感じだな.....。
うむ。水道管から直接ほとばしり出るような感じかな?
いや、アクション映画で消火栓に車が突っ込んで、派手に噴水のように吹き上がる感じだ!
消火栓……!?
そうそう! まさに消防車の放水みたいな感じなんだよな!
消防士が構えるホースの先端、放水ノズルみたいに絞る感じをイメージしてもう一度トライだ!
「しぼれ! 圧力をかけろぉぉ!」
構えた腕に力を込めて、声を張る。
どうせ誰も聞いていない。
マヌケに見えるが効果はあるはず!
気合や勢いでスキルの威力は変わるのだ!
いいぞ。魔力の高まりを感じる!
もっと圧力を高めろ! 水圧をかけろ!
みなぎってきた!
ためてためて……もっとだ!
【操水】と【水噴射】を混ぜ合わせる感じ!
腕に力を溜めて一気に解き放つ!
「飛び出ろっ! 高圧噴射ーっ!」
腕から水がほとばしり出る。
細く鋭く引き絞られた水が高圧で噴き出し――
うっ!?
手のひらに違和感を感じる。
熱いような痛いような……慣れない感覚。
水は細く鋭く吹き出している。
湖面を一直線に切り裂き、天井へと向かってはね上がる。
だめだ! 制御できない!
圧力が高まりすぎている!?
ヤバい! スキルを切れ!
だが、集中させた魔力は簡単には止められない。
俺の手の先で、派手に水が暴発する!
「ッッあっ!?」
鋭い痛み!
手のひらに裂傷ができて、血が滴っている。
腕のあたりにもダメージがある。
やりすぎたか!
魔力をかけすぎて暴発したんだ!
「ポーションッ!」
俺はポーションの小瓶をポーチから取り出して振りかける。
ポーションは効果てきめん!
みるみる間に傷をふさいでくれた。
ふう……。
これなら跡も残らないだろう。
俺は胸をなでおろす。
まだ心臓がどきどきと脈打っているわ!
「リンが自分の腕を燃えあがらせているのも、こんな感じか……!?」
極限の集中。
過剰な魔力消費。
そうした条件を満たして、本来以上の力が出せる。
だが、制御なんてできない。
できなくて当たり前だ。
だって限界を超えた力なんだからな!
リン……この状態で魔法を放ち続けるとか……!
どうしてそんなことができるんだ!?
鋼の精神力かよ!?
「なしなし! 水圧カッターは【水噴射】の本来の用途じゃないらしい!」
この術は太いパイプからドバドバと流れ出るような感じだ。
テクニックよりパワー! 物量で押し流す!
繊細に操る術ではないのだ。
不器用さんめ!
だが、いずれ使いこなしてやるぜ!
今の【水噴射】には切断力や貫通力は持たせられない。
できるとしてもかなり難しいし、危険も伴う。
もっと練習するか、スキルレベルを上げるかだ。
【水圧】があればもっと制御が効くのかな?
とはいえ、このためだけにスキルを取るかというと……いらない。
次!
頭を切り替えていく!
【水噴射】で出た水はしばらくすると消える。
一時的な水、魔法的なファンタジー水である。
しかし水には違いない!
【操水】でも操れた!
それなら【水刃】も有効!
水だから刃に変えられるはず!
これはシンプルな事実だ。
不器用な【水噴射】さんにもわかるだろ?
【水刃】は水を刃に変える。
それを噴射すればいいのである。
不器用でも問題ないね!?
さあやるぞ!
【水噴射】でドバっと水を出す!
噴き出した水に【水刃】をかける!
「いざ――水刃噴射の術っ!」
まず【水噴射】が先!
元になる水がないと【水刃】を出せないからだ。
【水噴射】を維持しながら【水刃】の発動のために集中する。
手の先に意識を集中。
刃の形は水に乗りやすい形状がいい。
槍や刀よりも曲刀やブーメランのような形状がいいだろう。
水流の中に刃を生み出す――
できた!
【水刃】はちゃんと発動する!
そして刃はそのまま後続の水に押し流されていく!
水流に乗って湖面に命中した刃が、水面を切り裂く。
派手な水しぶきがあがる!
「おお、これは使えそうだ! ウォーターでブレード! これで、変則的だがウォーターカッター成功だな!」
――そのあとも休憩をはさみながら新必殺技の練習に明け暮れた。
さて、次は空を飛ぶ敵で実戦訓練だ!
相手はザコ敵ではない。
侮ってはいけない五階層ボス――
大コウモリさんと再戦するぞ!
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