巨大モンスターの正体とは!?
「やれやれ……。戻ってこないみたいだな」
「ビビって逃げたんスよ! 飛ぶ奴はだいたいそうっス!」
「でも危なかったですね!」
「ああ。いきなり襲ってくるから焦ったな。にしてもヤバかった」
「大きかったですねー」
「向こうでワニもやられてたっス! たぶん、あっちのほうがデカいっス!」
トウコがワニのいる水場を指さしている。
巨大鳥は二匹いたんだ。
今はもう姿が見えない。
どこかへ飛び去ったか。
「戻ってきたら面倒だ。いったん第七エリアに移動しよう!」
「はい!」
「リョーカイっス!」
ここは平地で身を隠す場所がない。
空を飛ぶ敵と戦うには不利である。
俺たちは第七エリアに移動した。
「で、あの鳥を見てどう思った?」
「赤くてデカくて速かったっス!」
「ザックリした感想だなあ」
「赤い奴はだいたい強いっス! 当社比三倍っス!」
なにと比べて三倍だよ!
「たしかにデカかった。たぶんボスコウモリに近いんじゃないか?」
「そうですねー。鳥さんの方が少し小さいかもしれませんが、同じくらい大きく感じましたー!」
だよね?
じっくり見る余裕はなかったが、普通の鳥ではありえない大きさだ。
「デカいだけじゃなくて、分身を持ち上げて飛ぶくらいに力も強いぞ。くらわなくてよかったな、トウコ」
「店長が引っ張って――いや、押し倒してくれたおかげっス!」
お?
テンパってたわりには気づいてたか。
不意打ちに固まっていたトウコを分身で地面に引き倒したのだ。
敵は当然、立っている分身を狙う。
「爪の攻撃もヤバいが、口から火も吐いてたよな?」
「飛び道具とかズルいっス!」
「いや、トウコが言うかそれ!」
「飛んでるくせに飛び道具が強すぎるっス!」
ああ、そういう意味ね。
高所から遠距離攻撃を続けられたら勝ち目がない。
「私の魔法もあんなに速いと当てられないし……」
「うむ、動きが速い。そしてこの地形……」
俺は空を指さす。
「広々っス!」
ボスコウモリも空を飛ぶが、場所が洞窟だ。
天井という限界があるから、コースが制限される。
ここは平原。
ボスコウモリの部屋と違って障害物になる巨石や壁がない。
「リン。飛ばしてきた火球の威力はどうだった?」
「熱かったです! でも、私なら何回か当てられても我慢できると思います!」
参考になるようなならないような話だな。
少なくとも即死はないようだが……。
「我慢て……。まあ、俺やトウコが食らったらヤバいんだろうな」
「我慢して撃ち返すっス!」
「いや、避けろよ!?」
捨て身戦法はやめてくれ!
【復活】で死なないとか、そういう問題じゃないから!
「でもゼンジさんなら水忍法で防げますよね?」
リンが信頼しきった顔で言う。
うーん。どうだろう?
大量の水があれば【操水】でなんとかなりそうだ。
「ペットボトルの水じゃ厳しいな。水場が近ければ壁を作って防げそうだが……」
「水場にはワニがうようよいるっス!」
そうなんだよなあ……。
観光地の温泉みたいにワニが水場を埋め尽くしている。
「あ、もしかして、ワニが水場に集まっているのはあの鳥のせいか?」
「そうかもしれません! 鳥さんから隠れてるんですねー!」
「あー! 鳥が来たらワニは水に潜ってたっス!」
「このエリアの王者はワニじゃなくてあの鳥か……しかも二匹いるって……」
「ザコがこの強さだとしたらハードモードっス!」
「もっといっぱいいるんでしょうか?」
「どうだろうな。あれはボス個体なんじゃないか? 俺のダンジョンのボスと比べてみると、そうとしか思えん」
むしろ、あのクラスがザコ敵として出てくるなら難易度がおかしい。
トウコのいうようにハードモードだろ。
「まだエリア八っスよね? ボスはエリア十で出るんじゃないっスか?」
「移動してきたんでしょうか?」
「わからんが……このダンジョンはモンスターがエリアを越えることもあるからな……」
「オープンワールド風ダンジョン恐るべしっス!」
第九エリアならわかるが、二エリア分はみだしてくるとか!
自重してくれ!
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